桜宮市に新型コロナウイルスが襲来。その時、田口医師は、厚労省技官・白鳥は―― そして“北の将軍"が帰ってくる! ダイヤモンド・ダスト号で起きたパンデミックと忖度政治。今、病院で起きていること。 これは虚構か真実か。作家・医学博士の海堂尊が描き出す、現代ニッポンの“今" 世界初の新型コロナウイルス小説、刊行! 2020年、東京オリンピックを前にした世界に、新型コロナウイルスが襲来した。 豪華クルーズ船ダイヤモンド・ダスト号で感染者が発生、この対応で厚労省を始めとする安保政府は後手に回る。 一方、北海道の雪見市救命救急センターでもクラスターが発生。速水晃一センター長を始め、対応に追われる。 クルーズ船感染者を、東城大学医学部付属病院ホスピス病棟、黎明棟で引き受けることになり新型コロナウイルス対策本部に任命された田口公平がその任にあたる。 一方、東京ではかつて「日本三分の計」を打ち出し、挫折した元浪速府知事・村雨を筆頭に政策集団・梁山泊が安保内閣の打倒をめざしていた……。
この本は、いつもの朝日新聞の書評を見て興味を持ったのではない。下のTVの再放送を数週間前に見て海堂尊という作家に興味を持ったからだ。医師でもある人のコロナに関する小説ということで、ぜひ読んでみたいと思った。
感想としては、医者とにしてのコロナ診療というか、コロナに対応する医療従事者の活躍は、興味を持って読めたけど、安倍政権を揶揄したような内容はあまり面白く読めなかった。登場人物の名前が似たような名前というのがかえって、誰のことかなど、余計な興味を生じさせて、ストーリー展開とは関係ないところで、頭を使ってしまって、話に打ち込めなかった。
『タイプライターズ~物書きの世界~』 12月18日(土)10時25分~11時50分 かたや芸人、かたやアイドルながら、ともに小説を創作し続ける作家としての顔を持つ又吉直樹(ピース)と加藤シゲアキ(NEWS)の二人が、ゲストに作家を招き、その知られざる素顔や執筆の裏側を探求していく、物書きの物書きによる物書きのためのバラエティー番組『タイプライターズ~物書きの世界~』。今回は『チーム・バチスタの栄光』でデビューして以来、数々の著書が映像化され、視聴者の人気が高いベストセラー作家、海堂尊(かいどう・たける)氏をゲストに招き、医師でありながらベストセラーを出し続ける異色の作家の素顔を紹介する。 また、海堂のデビューとなった「このミステリーがすごい!」大賞も特集する。
しかし、さすが医師であるということで。実際コロナってどのようなウイルス感染症なのか、その治療はどのようにするのか、何が怖いのかなど、TVのワイドショーはあれだけ毎日のようの放送しているにも関わらず、なにも詳しく正しく、皆に情報が提供できていないかを改めて感じた。いつも私は「ドキュメンタリーは事実の中に嘘がところどころある」、対して「小説は嘘の中に事実がちりばめられている」と書いたり、感じているのだが、まさにそれを実感する小説だった。
驚いたのは、私がいつも思っている言葉がそのまま載っていたこと。医師か看護師のセリフで、
「でも、『安心』を追い求めたら破滅します。『安心』は感情的で、そこに盲従がつきものだからです。私たちが追求すべきなのは『安全』です。これは論理的に希求できますから」という言葉。
メディアや政治家が決まり文句のように安全安心と言うけど、安全と言ってもいいけど、安心は安易に使ってはいけない曖昧な言葉。どうして、今の世の中は安全安心と言う言葉を無防備に使うようになってしまったのだろう。
もうひとつ。
「シンコロ(この本では新型コロナはシンコロと書かれている)は未知の病原体だから適度にルールを決めて、間違えたらコロコロ変えればいい。でも厚労省の連中は現実に合わせてルールを作るんじゃなくって、ルールに現実を合わせようとするから、こんがらがるんだ。
このセリフ。全くその通りだと思う。20世紀の効率第一の世の中で、ルールを決めて、それをきっちり守る、管理することが正義みたいな世の中だった、あえて過去形にしたけど、実は、いまだに管理することが正義という考えは続いている。ルールを作るのに異論はないけど、それはどんどん変えるのが大事。さっさと物事を決めてやってみて、それがうまくいかない場合は現実に合わせてどんどん変えていけばいいのだ。日本人は一度決めると、それをなかなか変えたがらない、議論に議論を重ねて決めるべきことも決まらず、そのうちうやむやにすることが蔓延しているように思う。中国では、あまり先のことは考えずに、どんどん色々やって、ダメならすぐ中止という感じだった。中国は極端かもしれないけど、日本はあまりに一度決めたら変えないが多すぎる。憲法改正も、変えることに臆病になってしまっているのでは?
その他、医療用語は難しい。理解せず読み飛ばした言葉が多かった。しかし、それらの医療の記述の中で、ワイドショーなどで、難しい言葉での説明がなく、なぜ、日本で臨床結果がないのか(いや、現場ではいっぱいデータがあるに決まっているけど、ワイドショーでは割愛している)や手洗いしか手が無い、手洗いはレッドゾーンとグリーゾーンを分ける基本、ECMOの機能のわかりやすい説明などの理解がかなりできた。その辺りに不満を持っ医療用語を勉強把握したい人は、読むと役に立つ本だと思う。私はこの海堂尊の『コロナ狂騒録』も読みたいと思っていたけど、先に書いた政治絡みの描写が邪魔だったので、読むのはどうしようかと迷っている。デビュー作『チーム・バチスタの栄光』は読んでもいいかな?