「もうお米がないからついてきて」と母が言った。お米がなくなった場合、元来から農家である僕の家ではまず玄米を精米所に持って行って「ついてくる」工程が必要となる。それは身体に染みついた工程であるから歩くのと同じ感覚なので玄米の入った袋を担いで車に乗せて精米所までゆく。大人になってからは車を使うけれど、小学生のころは精米所が近くにあったので米袋を一輪車に乗せて父とともに出かけた思い出もかすかに残っている。
そのころの精米機は米をつくのに一時間ほど掛ったため、ノートに日付と時刻と名前を書いてその場を離れる事がふつうであったが、今の精米機は5分もかからずにつけてしまうので、この機械を初めて使ったとき「文明の力というものは、なんとすばらしいことか! 」と思ったほどであった。しかし一方では悲しい思いもあり、使いにゆくといつも床に白米が散乱している光景を目にした。僕は父からコメは大切にしなければいけないと何度も叱られたから、ご飯を残すことはもちろん、袋から入れ替える時もこぼれたらきちんと拾う癖がついた。周りが農家ばかりであるから当然どこの家庭もそういう価値観なのだろうと思っていたので、この光景にずっと違和感を感じていて、母に精米所の床には白米が散乱してることを話すと、「昔はな、(ごみの分別がまだなかったころ。過剰米が出始めたころ)古米や古古米を普通にゴミ捨て場に掘る人がおったよ。」という衝撃的な証言を聞き、父がコメを大切にすることを厳しく説いていたことと矛盾していると話すと、「おじいさんがそう教えていたんじゃないかなぁ」と言った。
それは食べ物が不足していて餓死する人もいたとういう時代から30年くらいしか経っていない頃の話である。そしてそこから、人は豊かになると本当に大切なことすら忘れてしまう生き物でもあるのだということを知った。
しかし良い点もあり、精米所の床に散乱してるお米は外に掃きだして集めておくと、雀などの鳥達が食べてくれるので一応循環機能を果たしてると言えなくもないのです。
そのころの精米機は米をつくのに一時間ほど掛ったため、ノートに日付と時刻と名前を書いてその場を離れる事がふつうであったが、今の精米機は5分もかからずにつけてしまうので、この機械を初めて使ったとき「文明の力というものは、なんとすばらしいことか! 」と思ったほどであった。しかし一方では悲しい思いもあり、使いにゆくといつも床に白米が散乱している光景を目にした。僕は父からコメは大切にしなければいけないと何度も叱られたから、ご飯を残すことはもちろん、袋から入れ替える時もこぼれたらきちんと拾う癖がついた。周りが農家ばかりであるから当然どこの家庭もそういう価値観なのだろうと思っていたので、この光景にずっと違和感を感じていて、母に精米所の床には白米が散乱してることを話すと、「昔はな、(ごみの分別がまだなかったころ。過剰米が出始めたころ)古米や古古米を普通にゴミ捨て場に掘る人がおったよ。」という衝撃的な証言を聞き、父がコメを大切にすることを厳しく説いていたことと矛盾していると話すと、「おじいさんがそう教えていたんじゃないかなぁ」と言った。
それは食べ物が不足していて餓死する人もいたとういう時代から30年くらいしか経っていない頃の話である。そしてそこから、人は豊かになると本当に大切なことすら忘れてしまう生き物でもあるのだということを知った。
しかし良い点もあり、精米所の床に散乱してるお米は外に掃きだして集めておくと、雀などの鳥達が食べてくれるので一応循環機能を果たしてると言えなくもないのです。