硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

確かに君だった。

2015-07-22 17:31:59 | 日記
仕事帰りにレンタルしたCDを返却するためレンタル店に寄り、駐車した車を降りて店舗に向かおうとした時、一つ向かいの駐車場から一人の女性が携帯電話で会話しながら僕の前を横切った。見覚えのある姿に目を凝らすと、ずいぶん前に恋をした女性であることが分かった。右手にはレンタル袋を持っていたから向かう場所は同じであることが分かり、少しばかりドキドキしながらレンタルコーナーに向かうわずかな行程を自然な距離を保って歩いた。

彼女の後姿を見ながら歩いていると、どうしてあの後姿を抱きしめる事が出来たんだろうと不思議に思った。少し感情も高ぶっていたから声をかけようかと迷ったが、今は関係のないただの男と女でしかないし、ノスタルジーに浸ったところでどうなるわけでもない。すぐに我に戻り「いかん。野暮なことはするまい」と言葉を飲み込み、時間の経過と選択の結果をかみしめた。

相変わらず電話に夢中の彼女は無造作に返却口へレンタル袋を入れ込むと、次のレンタル作品を決めているのか、まっすぐ奥へと歩いて行った。彼女の後ろを歩いていた僕もレンタル袋を返却口に入れたが、店には入らずくるりと向きをかえ店舗を出て、夏の風に吹かれながら「これでいいのだ! 」と胸を張った。