すずめ休憩室

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「星の時計のLiddell」

2006年10月09日 | 漫画・本
「星の時計のLiddell」 知る人ぞ知る、あの内田善美さんの作品で全3巻、集英社から出ています。

ウラジミールは2年もの間、旅を続け、再びこの街へ戻ってきた。懐かしい友との再会。その友の1人・ヒューは眠るたびにある同じ家の夢をみるという奇妙な生活をおくっていた。夢と現実、2つの世界を行き来するヒューと彼に何が起こったのか模索するウラジミールの結論とは・・・

最初表紙を見たとは似はSFファンタジーかと思ってましたが、現代版「胡蝶の夢」とでもいうんでしょうか?一応精神世界ファンタジー?(笑)
夢に囚われ、それを現実としてその家と少女を追い求める男とそれを見守り追う男と女・・・人間という種にも焦点を当てながら、もっと奥の精神世界すら描かれていて、内田さん独特のセリフ回しとその世界観が相まってかなり理解度を必要とする仕上がりになってます。私のおバカな脳では難しかったです、あはは(苦笑)

内田さん自身、この作品の少し後に断筆をされているようなのですが、私が感じた印象はもしかしたら内田さんって完璧主義者ではないのかな?と思えたこと。
他の作品を読んでいても、特にカラー絵など西洋画を彷彿とさせるような写実的で細かい書き込み、そして詩のような韻を踏むセリフ回し・・・この「星の時計~」でもポォの詩が引用されてましたが、なにかこう内に秘めたものをゆっくりゆっくり自分が納得行くまで捏ね上げ作品に昇華させていく人の様な気がしたんですね。
それがこの「星の時計~」に関しては完全に昇華し切れなかったという感じがぬぐえなかったのです。もともと数をこなす人ではなかったようなので連載という時間に追われての執筆活動は向いてなかったのかなとも思えるし・・・

きっと内田ファンの間でもこの作品の評価は分かれているんじゃないでしょうか?

ただ初期の頃の内田作品から続けて読むと、この人の世界観というか思想観の集大成がこの「星の時計~」のようにも感じるんですね。
何故、断筆したのか・・・それは未だにファンの間でも謎のようですけど、やはり力量はかなりのモノ。続けて読みたいと思う人も数多くいるんではないでしょうか。

でも作品が全て絶版で再販の予定もないのも内田さんご本人の強い要望なのだとか。そういうことなので一部の人しか読めないってのもとても残念ですね

なので古本屋で見かけたら即買い!ですよ~漫画好きの皆さん