かわずの呟き

ヒキガエルになるかアマガエルなるか、それは定かでないが、日々思いついたことを、書きつけてみようと思う

映画を観てきました。

2012-03-22 | 気ままなる日々の記録

昨日(3月21日)、彼岸の中日も過ぎたというのに秒速7mの寒風。午前中庭木の手入れをしていましたが、あまりの寒さに作業を中止して、午後映画を観にゆくことにしました。お目当ての映画は“The IRON LADY”、つまりは主人公が、「鉄の女」こと、かの有名な英国首相マーガレット・サッチャーの映画です。

(以下の空白部分に写真がありましたが、3月26日に削除しました。お許しください。
理由は3月26日のブログに書きました)
  

 脚本も演出も女性のイギリス映画ですが、サッチャーを演じたのが米国のアカデミー賞女優メリル・ストリープで、サッチャーの演説テープを連日聞いて役作りをし、30歳から82歳までの「鉄の女」を見事に演じているという解説をラジオで聞いたことが、観てみたいなと思った動機です。実は私、サッチャーさんは若いころからどこか好きでした。その上、2008年に娘のキャロルが回顧録を発表し、その中でサッチャーが認知症を患っていることを書いていて、それを読んだ脚本家が思想性や政治性を乗り越えて、一人の女性の生涯という視点で脚本を書き下ろした、という話も魅力的でした。

 

 サッチャーの父親は食料品の他にも日用雑貨なども売る小規模な食料品店を経営している典型的なロウワー・ミドル・クラスと呼ばれる階層の人で、働き者で堅実な英国市民、町民議会で演説などする人でした。英国は今なお階級社会といわれていて、アッパー・クラスとアッパー・ミドル・クラスが保守党で、ロウワー・ミドル・クラスとワーキング・クラスが労働党という見えない階層があり、それぞれの階層では、使われる言葉もちょとした仕草や作法も異なると聞いています。そん社会で下の階層のサッチャーが保守党に入ったのは、彼女が名門オックスフォード大学を卒業しているからです。
 上の写真は彼女が保守党党首に当選した時のもの。ブルーは保守党のシンボル・カラーで、左の男性は偏見に満ちた保守党の中で、彼女の政治信念に共感して彼女を支援したエアリー・ニーブ。

 

 この映画ではサッチャーの演説風景がよく描かれますが(メリル・ストリープが利用した)、その演説が実に巧みで、韻を踏み、階段を上るように強調し、全てを巻き込むようにして最後の結論へと導きます。公聴会でも、議会の党首討論でも、大群衆を前にしたときでも、その場その場の雰囲気に合わせた論法による彼女の演説は、いつも大拍手を呼び込みます。映画での演出だとしても、演説の録音は残っていますし、プロの政治家の予想を覆す大人気を彼女は博するわけで、かなりの部分は本当だと思われます。少なくともどこかの国の政治家のように官僚が用意して原稿をたどたどしく読むだけの政治家ではありません。その点がうらやましい限りです。

 

 この映画の“現在”は中程度に症状が進んだ認知症のサッチャーが、混濁の中で8年前に亡くなった夫と話し込んだり、正常な状態で、栄光の過去を振り返ってそれでも自分は至らなかったと後悔したりと、一人の女性の人生譚が描かれます。終わりになって彼女は、常に自分を陰で支えてくれた亡き夫に「あなた、あなたの人生は幸せだった?」と問い、ポロリと涙を流します。ここがまたこの映画のよいところでしょう。

 

 上の写真は、11年に及ぶ首相の座を降りようと決めたころのサッチャーだと思います。名演技です。

 (私は「字幕映画」を観た時、面白いと思うと決まってカタログ・パンフレットを買います。恥ずかしながら、見落としや読み間違いがあるからです。昨日もカタログ・パンフレットを買いました。このパンフもお薦めです。本稿の写真はこのパンフからのスキャンです。)