ある日エレベーターホールで待っていると、私の後ろで、若い娘さんと老婦人が話しているのが耳に入った。気になったのは、会話の内容である。
老婦人曰く、「それで、あなたの御母さんが、私の娘になるのね」娘さん曰く、澄ました顔で「そう」。という。
普通こういう言い方をするだろうか。考えられるのは娘さんが海外留学へでも行って、長い間に様子が変わりあまりにも成長が速く記憶が付いて行かない場合。あるいは、孫の数が多くて名前がとっさに出てこない場合。最後の一つは、考えたくはないが、認知症が始まった場合。
認知症と云えば、私の母も70代後半から、認知症が出始めた。脳梗塞も発病し急速に物忘れが進んだ。子どもは女の子ばかり3人。このことは、随分遅くまで、しっかりと覚えていた。名前が云えるのは日によって違いまちまちであった。ある日主人と妹と3人で母を訪ねた時のことである。主人の義理の父、妹と私には父に当たる人の名前が出た。母にとっては忘れようのないダンナの名前である。その時の母の反応は「私そんな人知らないわ」であった。居合わせた3人は最初唖然としたが、その後皆で大笑いした。
明るい性格でお喋りが好きな母はときどき、このようなトンチンカンなことも口走り、皆を笑わせていた。
私も70代後半になりどんな認知症が出るか不安であるが、できれば、軽症で意地悪でない方がよい。(E)
土手の花
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