通常学級に在籍している子どもたちの中で、黒板をノートに書き写すことが苦手な子どもたちがいます。この子たちに共通することとして、ワーキングメモリーの弱さが挙げられます。目で見たこと、耳で聞いたことなどを、一時的に記憶にとどめておくことができず、この場合、目をノートに移した瞬間に忘れてしまっていて、また黒板を見る、この繰り返しを頻繁に行うことで、他の子どもたちに比べ、ノートテイキングが遅くなり、授業についていけなくなっていきます。これらの子どもたちに対しては、今後、合理的配慮として、黒板の板書をカメラで撮影したり、授業を録音したりしても良いことになっていくことと思います。障害による困難なので、本人の努力によるものではなく、支援の対象になっていくものと思われます。
自分が経験した児童の中にも、このワーキングメモリーが著しく弱い児童がいました。例えば、ブロック構成の見本(赤、白、青の順で上から構成する見本)を見て、見本と同じ順番でブロックを構成する課題に取り組む時に、手元に目線を移した瞬間に、見本の記憶が消えてしまっていて、手元で作りたいようにブロックを組み立てています。組み立てたブロックを見本と並べて確認して違うことがわかると、また崩してやり直します。それを3度も4度も繰り返し、たまたま偶然、同じになったときに正解して、とても喜んでいます。これが4つのブロック、5つのブロックになると、確率的にさらに偶然にできあがる可能性は低くなります・・・。課題で問われていること(見本と同じものを作るということ)は、頭ではわかっていても、見本を覚えておくことができないのです。もちろん、この児童に対しては、偶然にできたとことを共に喜び合い、できた喜びの中から、さらにワーキングメモリーの力が伸びていかないかと期待しつつ、3つのブロック条件で指導を続けていきました。
こういった障害による困難を抱えた子どもたちに対して、ワーキングメモリーを活用しなければ達成できない課題を出し続けることは、子どもたちに失敗経験をたくさん強いることになり、自己肯定感の低下につながっていくかもしれないし、これらの状況を回避するための誤学習(例えば、離席やわざとふざける、無気力になり固まる等)を身につけてしまう恐れがあります。
そうしないためにも、実態把握をして、適切な課題設定をすることが求められるのだと思います。自分の担当児童の場合、見本を見て手元のノートに字を書くこと(参照模倣課題)は行わず、(ワーキングメモリーを活用しないとできない課題内容であるため)、蛍光マーカーの線をなぞる課題(ワーキングメモリーを用いない課題)で字を書く内容を設定したり、手元を見て達成できる「プットイン課題」や手元で見比べてできる「ひらがな文字や数字などのマッチング課題」、「なぞり等のトレース課題」「パズル」などを設定したりしてました。子どもたちにとって「あ、これわかる!できるぞ!」「個別学習の時間が好き!」となるように得意な力を伸ばしていきつつ、自己肯定感を高めることを優先していくことがとても大事なことだと考えています。
自閉症とワーキングメモリーについて、(株)スペクトラムライフの桑野先生も、海外の文献を例に挙げて、ブログでご自身のお考えを述べられております。
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科学的な理論に裏付けられており、とても勉強になります!!
(畠山)