知的障害教育における教科別の指導とは?
知的障害の障害特性を踏まえると,決して有効な指導方法ではない教科別の指導が,今回の学習指導要領の改訂では強調されており,各教科と関連付けて指導すること,というように各教科の見方・考え方を踏まえて「深い学び」の実現を目指すように示されています。
近年,知的障害の特別支援学校において,個別の課題学習を教育課程に位置付けて授業を行っている学校が増えてきています。主に自立活動の内容として目と手の協応や弁別,分類,手指の操作性の向上など,教科学習の土台となる基礎学習に取り組んでいる指導内容もあれば,児童生徒の実態に応じて,国語や算数・数学の教科内容を取り扱っている授業もあります。教育課程上では,時間における自立活動の指導でもあり,まさに教科別の指導として位置付けている学校もあります。
しかし残念なことに,この教科別の指導において実際に行われているのが,漢字や足し算,引き算などのプリント学習です。持論として,プリント学習ができても生活に活用されるような生きて働く力となっていないことが散見され,知的障害児教育におけるプリント学習に意味があるのか?と問題視しています。
教科別の指導ではその教育効果があまり望めないとして,知的障害の特性を踏まえた各教科等を合わせた指導の形態で国語や算数・数学の教科を扱ってきたというのに・・・。生活に必要な題材を用い,体験を通して具体的に言葉や数を扱い,必然性に基づいて体得・習得するということ。だから,これまでの知的障害教育では,教科別の指導ではなく,合わせた指導の形態で教育実践が展開してきたということ。これらの歴史的な背景やその本質を知らずに,ただただ毎時間,プリント学習をして教員だけが満足して1年を過ごしていてはいけないと思うのです・・・。
知的障害教育において教科別の指導を行う際には,プリント学習ではなく,必然性に基づいた学習場面を設定し,具体物を操作することを通して,児童生徒が言葉や数を学ぶ意義を実感しながら体得・習得できるように指導計画を立案し,指導方法を工夫して授業づくりをしていってもらえればと思います。
そうすることが,これからの特別支援教育に求められている教師の専門性かもしれません。(畠山)