この作品は、20世紀になってから描かれた。この頃の彼の作品は、もはや完全に印象主義の様式から離れたものであり、彼は巨匠としての独自な道を大きく歩み始めている。
モデルとなっている子供は画家の次男ジャンである。
ジャンは後に有名な映画監督となって、「大いなる幻影」や「ゲームの規則」など、特に1930年代に優れた作品を発表している。
「白衣のピエロ」は父ルノワールが晩年に描いた特殊な肖像作品だ。すなわち彼は、モデルたちに仮装用の衣装を身につけさせて、自分が描きたいようにポーズさせた。それは、もはやモデルたちが自分の社会的地位等を誇示するために思いのままに画家に注文した肖像画ではない。そういう時代はもはや終わろうとしていた。
モデルと画家の関係は、ルノワールの晩年の芸術にあたっては完全に逆転している。画家は何らモデルに媚びることなく、芸術家として自分の描きたい肖像画を追究しているのである。
子供の肖像画ながら実に堂々とした趣は、モニュメンタルな芸術を目指した晩年のルノワール芸術を完全に具現化したものとなっている。