実は、クリスマスの前にぜひ撮影したい場所があった。
オリオンと二匹の猟犬が形作る冬の大三角。そこに頭を突っ込んでいるのが空想上の生き物一角獣だ。その角の周りには、背景の天の川を隠して黒く広がる暗黒ガスの帯がある。フィルターを掛けて長い時間露出するとぼんやりと赤く写るその水素ガスの領域に、一箇所青いガスをまとったきらめく星達がいる。それがNGC2264、クリスマスツリー星団だ。
厳しい季節風が一段落した先週の土曜日、雲だらけの夕空にどうしようかと悩んだ挙句、夜になって重い腰を上げた。しかし丘に上がってみると一面の星空。ああ、来て良かった。
カメラを20センチの望遠鏡に取り付けて屋根を開ける。頭の上を冬の天の川が流れていた。風は無い。望遠鏡を星団に向け、中心の輝星を頼りに自動追尾に入る。
10分の露出で3枚、5分の露出で1枚。それを重ね合わせたのがこの写真だ。
青いガス雲をツリーに、一番大きい星をトップスターに見立てると、そこにはキャンドルに赤く染まった雪原に立つ一本のクリスマスツリーが見えてくる。画像下のほうに黒く入り込んでいるのはコーン星雲だ。
天の川に流した絵の具。ここは冬の夜空の不思議領域だ。
2010.02.15 より大きな画像に差し替えしました。
ビクセンD:200mmF:800mm反射 LPS-P2フィルター Canon5DMarkⅡ感度3200 露出各600S、300S