星の写真を撮るのに月明かりは邪魔だ。だから望遠鏡にカメラが載せられるのはひと月のうち半分ちょっと。しかもその間に雨が降ったり強い風が吹いたり、条件が揃っていても仕事が忙しかったりすると、撮影はお預けとなる。
中天に掛かる十四夜を眺めながら、ため息をついて会社を出た。今夜は風が無い。透明度もいい。それなのに眩しく輝く丸い月。
こんな夜は撮り貯めた写真の画像処理をする。パソコンのフォルダーにあるオリオン星雲。半月前に撮ったものだ。そのひと月前に撮った物と合わせると露出の違う写真が5枚揃う。これを使ってこの大星雲の姿を浮かび上がらせよう。そう決めた。
悪戦苦闘の7時間。その結果がこれ。先に紹介したNGC1981と大星雲M42、それにその下に輝く2等星ハチサは、肉眼で見ると小さな三つの星の並びに見える。堂々たる大三ツ星に対して小三ツ星の名が付けられている。星座絵ではこの小三ツ星は狩人オリオンの腰にぶら下がる剣だ。その剣の正体は、生まれたての星に照らされて光を放つ星間ガスなのだ。