オリオンの大星雲と言われるのはM42。その鳥が羽を広げたような見事な姿に目を奪われて、つい見過ごしてしまいそうな天体がいる。NGC1973、大星雲のすぐ北側にひっそりとたたずむ散光星雲だ。シャッターを少し長く開いていると、そこに不思議な模様が浮かび上がってくる。
卵形に青い光を放つガスの真ん中で真横に伸びる暗黒帯。僕にはこれが宇宙空間がほころびて魔法の国の入り口が開いているように見える。その上に重なる散開星団NGC1981は、まるでその口から飛び出してくる妖精たちだ。
オリオン座周辺のガス雲では、新しい星が次々に生まれている。生まれて間もない星たちは高い温度で青白く輝く。その光とほとばしる粒子はガスのベールを払い,さらにお互いを押しのけあう。そうして星たちは広がって行くのだ。
ガス雲は星を作る工場。本当に魔法の国なのかもしれない。人類がその国を旅する時が来るのだろうか。
口径200ミリF4反射、Canon5DMarkⅡ感度3200、LPS-P2フィルター、露出610秒2枚コンポジット