以前から、企業の高収益に対して労働分配が進まない、それどころか財界は総力を挙げてさらなる人件費の抑制を図っていることを問題にしています。
ところで、人件費抑制の論拠として挙げられるのが、「国際競争力の維持」です。これは、要約すると以下のようになります。
1)企業の人件費は、アジア諸国等のまだ賃金が安い地域との競争になっている。
2)増収増益だからといって、労働分配を増やしてしまえば、収益性の点でより安価な労働力を確保出来る地域に負けてしまう。
3)そうなれば、企業としてはより安価な労働力が確保出来る地域に生産拠点を移さざるをえなくなる。
4)この場合、日本国内の雇用環境は一層厳しくなってしまう。
5)だから、労働分配率は上げられず、むしろ下げなければならない。
6)労働分配率の問題は、総額の問題ではない。「不当に高い賃金を得ている」既得権者ー正社員や公務員などーの分を、非正規雇用者等に回せばよい。(と言いつつ、上を切り下げるだけで差額は企業利益に化ける)
上記6)は蛇足ですが、1)~5)は様々な所で主張されていて、経営者の私利私欲と一蹴してよい問題ではないような気がしてきました。そこで、このモデルの問題点と、このモデルに基づく日本経済の将来像を考えてみたいと思います。
まず、問題点ですが、
・このモデルでは、長期的には、日本の雇用労賃は他のアジア諸国並み(の低水準)にならなければいけない。
・なぜなら、そうでなければ、企業はいずれ海外に拠点を移すこととなるから。
ということが最初に考えられます。他方、内需について考えると、
・企業が日本国内で収益を上げるには、物価が他のアジア諸国より高い状態を維持する必要がある。
と思われます(でないと収益が維持できない)。この場合、
・労働分配率が下がれば、国内購買力が著しく低下し、内需が大きく冷え込むことは必至
な訳で、やはり企業経営にはマイナスです。では、
・そうなったときの売り先は?欧米?中印の富裕層?
ということになるのでしょうか。
また、別の変動要因として、
・アジア諸国の経済成長は、当該国の人件費を上げる効果があるだろうから、日本の人件費も下がりっぱなしではないだろう
という点も挙げられるでしょう。
ところで、現在、既に労働賃金は他のアジア諸国等、日本より安い地域が多く、実際、多くの企業が中国等に生産拠点を整備しています。ということは、
・現時点で企業が海外への生産拠点の移転を行わないのはなぜか?
という疑問が挙げられます。すなわち、国内の情勢がどうであれ、企業としてはどんどん海外移転してしまえば、労働単価だけで見れば収益性は改善するはずです。すなわち、
・「いま人件費を上げると企業が海外へ逃げる」というが、別に有利ならいま逃げても構わないはず
ではないでしょうか。もっとも、もちろん初期投資やら教育が必要だから、すぐにとはいかないのかもしれません。
ところが、
・「長期的にはいずれ日本から逃げる」のであれば、結局は「日本国内の労働者の可処分所得が増える」ことは期待できないのではないか
としか思えない訳です。
企業が海外移転しない理由としては、労働コストの低下に比した初期投資の必要性とのバランスの他、
・言葉の問題、日本的な慣習の問題、教育水準の問題が日本企業の海外移転を足止めしている
と私は思っているのですが、
・企業活動上、これらはどう評価されるのか?又、日本のこれらの質が下がれば企業はどう動くのか?
というのが、よく分かりません。
また、この図式を論ずる人が、日本経済の将来像について聞かれると、「企業が成長を維持できれば、いずれ労働者にも富が回り、全体が好況になる」と、具体的な労働者への富の再分配方法を明示せずに、曖昧に述べることが多いように思います。
さらに、団塊世代の大量退職により、労働市場の需要が増すため、賃金の上昇も見込めるかのように言われたりもします。
ところが、
・上記モデルによれば、労働市場で人件費が高止まりになれば、企業は海外移転を進めることになるから、人件費が市場原理で上昇する余地はない
ように思えます。つまり、いずれにせよ雇用単価は下げはあっても上げはない形です。
つまるところ、私はいまのところ、これらの疑問に答えるような日本経済の将来像を目にしていない。(ちゃんと探している訳でもありませんが)
ということで、仕方がないので、次回以降、この「将来像」を、自分で考えてみることにします。
ところで、人件費抑制の論拠として挙げられるのが、「国際競争力の維持」です。これは、要約すると以下のようになります。
1)企業の人件費は、アジア諸国等のまだ賃金が安い地域との競争になっている。
2)増収増益だからといって、労働分配を増やしてしまえば、収益性の点でより安価な労働力を確保出来る地域に負けてしまう。
3)そうなれば、企業としてはより安価な労働力が確保出来る地域に生産拠点を移さざるをえなくなる。
4)この場合、日本国内の雇用環境は一層厳しくなってしまう。
5)だから、労働分配率は上げられず、むしろ下げなければならない。
6)労働分配率の問題は、総額の問題ではない。「不当に高い賃金を得ている」既得権者ー正社員や公務員などーの分を、非正規雇用者等に回せばよい。(と言いつつ、上を切り下げるだけで差額は企業利益に化ける)
上記6)は蛇足ですが、1)~5)は様々な所で主張されていて、経営者の私利私欲と一蹴してよい問題ではないような気がしてきました。そこで、このモデルの問題点と、このモデルに基づく日本経済の将来像を考えてみたいと思います。
まず、問題点ですが、
・このモデルでは、長期的には、日本の雇用労賃は他のアジア諸国並み(の低水準)にならなければいけない。
・なぜなら、そうでなければ、企業はいずれ海外に拠点を移すこととなるから。
ということが最初に考えられます。他方、内需について考えると、
・企業が日本国内で収益を上げるには、物価が他のアジア諸国より高い状態を維持する必要がある。
と思われます(でないと収益が維持できない)。この場合、
・労働分配率が下がれば、国内購買力が著しく低下し、内需が大きく冷え込むことは必至
な訳で、やはり企業経営にはマイナスです。では、
・そうなったときの売り先は?欧米?中印の富裕層?
ということになるのでしょうか。
また、別の変動要因として、
・アジア諸国の経済成長は、当該国の人件費を上げる効果があるだろうから、日本の人件費も下がりっぱなしではないだろう
という点も挙げられるでしょう。
ところで、現在、既に労働賃金は他のアジア諸国等、日本より安い地域が多く、実際、多くの企業が中国等に生産拠点を整備しています。ということは、
・現時点で企業が海外への生産拠点の移転を行わないのはなぜか?
という疑問が挙げられます。すなわち、国内の情勢がどうであれ、企業としてはどんどん海外移転してしまえば、労働単価だけで見れば収益性は改善するはずです。すなわち、
・「いま人件費を上げると企業が海外へ逃げる」というが、別に有利ならいま逃げても構わないはず
ではないでしょうか。もっとも、もちろん初期投資やら教育が必要だから、すぐにとはいかないのかもしれません。
ところが、
・「長期的にはいずれ日本から逃げる」のであれば、結局は「日本国内の労働者の可処分所得が増える」ことは期待できないのではないか
としか思えない訳です。
企業が海外移転しない理由としては、労働コストの低下に比した初期投資の必要性とのバランスの他、
・言葉の問題、日本的な慣習の問題、教育水準の問題が日本企業の海外移転を足止めしている
と私は思っているのですが、
・企業活動上、これらはどう評価されるのか?又、日本のこれらの質が下がれば企業はどう動くのか?
というのが、よく分かりません。
また、この図式を論ずる人が、日本経済の将来像について聞かれると、「企業が成長を維持できれば、いずれ労働者にも富が回り、全体が好況になる」と、具体的な労働者への富の再分配方法を明示せずに、曖昧に述べることが多いように思います。
さらに、団塊世代の大量退職により、労働市場の需要が増すため、賃金の上昇も見込めるかのように言われたりもします。
ところが、
・上記モデルによれば、労働市場で人件費が高止まりになれば、企業は海外移転を進めることになるから、人件費が市場原理で上昇する余地はない
ように思えます。つまり、いずれにせよ雇用単価は下げはあっても上げはない形です。
つまるところ、私はいまのところ、これらの疑問に答えるような日本経済の将来像を目にしていない。(ちゃんと探している訳でもありませんが)
ということで、仕方がないので、次回以降、この「将来像」を、自分で考えてみることにします。
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