(1月28日)
前回(1月25日)発表した図は投稿子オリジナルです。その趣旨は3の基準となる神話の特性を分析し、それらが神話精神を一の方向に導いている創造性を明らかにした(つもり)。そのパラダイム図を再掲載します。黄ばみが取れて見やすくなっていれば投稿子もありがたい。
今回は中央列、モンマネキ神話(M354 Tukana族)の解説です。
原文はmereのみで「老」はありません。直系の上流神話M1(M7)で父と複数の妻、村人全員は濁流に流されたが、魔女(sorciere)である祖母とヒーロー(名はBaitogogo)が生き残った。Tukana族への伝播経路で祖母が母に入れ替わったのだが、母を犯した近親姦の印象が残ってしまうから、投稿子は(勝手ながら)老母とした。(2018年10月26日~投稿の「神話学第3巻食事作法の起源」にあらすじ等、紹介が詳しい)。

図の説明:Tukuna族の居住域はアマゾン上流、コロンビアペルーと国境を接するあたり。図の左端にあたります。
ここでのテーマは同盟の再結成、模索です。大洪水の生き残りはモンマネキと老母、しかし村にも周辺にも人は絶えた。猟の道すがらであったカエルと婚姻、同盟話が進んだが老母の介入で破局。カエルは子を抱きかかえて池に戻った。このあと3の異種同盟を模索するが、いずれも同盟維持には至らない。破局の原因は礼儀作法の違反。
カエルの食事作法とは取り置きの毛虫芋虫を壷からだしてムシャと食する。そのような嫁を迎えられない、唐辛子を食わせて老母は追い出す。広い意味での食事作法の違反、姿形の異形さ、鳴き声などを嫌った訳ではない。鳥との結婚は異形で破局した。見目麗しい嫁を前にして老母は、今度こそはと期待したが、上から下の格好をつぶさにしたらびっくり。剥き出し脚に3本爪の鳥脚だった。これは服飾作法の違反「人間社会との同盟は無理だ」老母は追い出した。
写真:文化創造パラダイム。投稿子の完全オリジナルです。25日に投稿したのは黄ばみが強かったので再投稿。
これらの作法違反の中には「周期性の不徹底」が内包されます。
婚姻第3も例、伴侶は剥き出し脚のインコ。<<Elle(老母) demanda a sa bru de preparer de la bierre pendant qu’elle meme irait aux champs. Un seul epi suffit a la jeune femme pour remplir cinq grandes jarres> 訳;姑は野良に出る前に、嫁にビール作りを命じる。求めに応じインコ嫁はモロコシ穂先一本でたらふく飲める量(5の大瓶分)を、姑が野良から帰る前に醸成させてしまう。帰った老母はそれなりの分の束を屋根裏からおろしたのに、たった1本の穂が抜き取られただけだから、使い残されたモロコシの束を見て、何も準備していないと嫁を叱責する。次にはすっかりできあがった大瓶ビールに驚いて(水浴び中の嫁を)さらに叱責する。老母には大量かつ速成の芸当が気に入らなかったのだ。それは「周期性への反逆」と老母は反発した。
モロコシの収穫は年に一回(南米でも、きっと、そうでしょう)。半年を汗水たらして100の束にして屋根裏に仕舞う。もっぱら食とするが、文明でも未開でも男は酒を飲みたい。喰うか飲むかの塩梅で残りの半年を何とか持たせる。労働、収穫、消費と時に飢え、モロコシの周期性です。この枠の中にしがみつく生身の人間に対し、茎穂一本で夫一人が飲む1年分を作れたら、それが正しいか間違いかの問題に、人が突き当たる。正しいとするなら飛んで歌って遊んでいる鳥族の不定期性の受け入れることになる。すると人間界は鳥族の不定期性に支配される。
しかし老母は、毛虫喰いのカエルを否定した同じ判断でそんな生き様も拒否した。鳥との同盟とは周期性を忘れる、人の世界ではしかし、この部分の忘却はあってはならない。言外に神話M354は人社会の基本は周期性だと定義している。
最後の人間妻と周期性については;
ようやく巡り会った女は経血垂れ流しで、月経の周期を獲得していない。漁にでて、血をコマセにして大漁で毎夕、籠を一杯にして帰る。この漁は毒流し漁のアナロジ(類似)です。こちらの取り決めは特定の場所、乾期、年に一回、流す毒(木肌)の採取は男が月日をかける、当日は村人総出、男が毒を流し女が浮き上がった魚をすくう、収穫は皆で分配する。漁の技法に社会の行動規範と周期性が結びついています。モンマネキ嫁のやり方との差異は一人(社会性がない)、経血とは魚に餌で人に毒、毎日できる(経血は垂れ流しの時代だった)。ここに周期性違反が強く語られます。
周期性追求は本巻後半の北米神話に引き継がれるのですから、モンマネキ神話はM1ボロロ族とM428のArapaho族などの神話群との
レヴィストロース「食事作法の起源」を読む(続き) 8の了
(次回投稿予定は30日)
前回(1月25日)発表した図は投稿子オリジナルです。その趣旨は3の基準となる神話の特性を分析し、それらが神話精神を一の方向に導いている創造性を明らかにした(つもり)。そのパラダイム図を再掲載します。黄ばみが取れて見やすくなっていれば投稿子もありがたい。
今回は中央列、モンマネキ神話(M354 Tukana族)の解説です。
原文はmereのみで「老」はありません。直系の上流神話M1(M7)で父と複数の妻、村人全員は濁流に流されたが、魔女(sorciere)である祖母とヒーロー(名はBaitogogo)が生き残った。Tukana族への伝播経路で祖母が母に入れ替わったのだが、母を犯した近親姦の印象が残ってしまうから、投稿子は(勝手ながら)老母とした。(2018年10月26日~投稿の「神話学第3巻食事作法の起源」にあらすじ等、紹介が詳しい)。

図の説明:Tukuna族の居住域はアマゾン上流、コロンビアペルーと国境を接するあたり。図の左端にあたります。
ここでのテーマは同盟の再結成、模索です。大洪水の生き残りはモンマネキと老母、しかし村にも周辺にも人は絶えた。猟の道すがらであったカエルと婚姻、同盟話が進んだが老母の介入で破局。カエルは子を抱きかかえて池に戻った。このあと3の異種同盟を模索するが、いずれも同盟維持には至らない。破局の原因は礼儀作法の違反。
カエルの食事作法とは取り置きの毛虫芋虫を壷からだしてムシャと食する。そのような嫁を迎えられない、唐辛子を食わせて老母は追い出す。広い意味での食事作法の違反、姿形の異形さ、鳴き声などを嫌った訳ではない。鳥との結婚は異形で破局した。見目麗しい嫁を前にして老母は、今度こそはと期待したが、上から下の格好をつぶさにしたらびっくり。剥き出し脚に3本爪の鳥脚だった。これは服飾作法の違反「人間社会との同盟は無理だ」老母は追い出した。

写真:文化創造パラダイム。投稿子の完全オリジナルです。25日に投稿したのは黄ばみが強かったので再投稿。
これらの作法違反の中には「周期性の不徹底」が内包されます。
婚姻第3も例、伴侶は剥き出し脚のインコ。<<Elle(老母) demanda a sa bru de preparer de la bierre pendant qu’elle meme irait aux champs. Un seul epi suffit a la jeune femme pour remplir cinq grandes jarres> 訳;姑は野良に出る前に、嫁にビール作りを命じる。求めに応じインコ嫁はモロコシ穂先一本でたらふく飲める量(5の大瓶分)を、姑が野良から帰る前に醸成させてしまう。帰った老母はそれなりの分の束を屋根裏からおろしたのに、たった1本の穂が抜き取られただけだから、使い残されたモロコシの束を見て、何も準備していないと嫁を叱責する。次にはすっかりできあがった大瓶ビールに驚いて(水浴び中の嫁を)さらに叱責する。老母には大量かつ速成の芸当が気に入らなかったのだ。それは「周期性への反逆」と老母は反発した。
モロコシの収穫は年に一回(南米でも、きっと、そうでしょう)。半年を汗水たらして100の束にして屋根裏に仕舞う。もっぱら食とするが、文明でも未開でも男は酒を飲みたい。喰うか飲むかの塩梅で残りの半年を何とか持たせる。労働、収穫、消費と時に飢え、モロコシの周期性です。この枠の中にしがみつく生身の人間に対し、茎穂一本で夫一人が飲む1年分を作れたら、それが正しいか間違いかの問題に、人が突き当たる。正しいとするなら飛んで歌って遊んでいる鳥族の不定期性の受け入れることになる。すると人間界は鳥族の不定期性に支配される。
しかし老母は、毛虫喰いのカエルを否定した同じ判断でそんな生き様も拒否した。鳥との同盟とは周期性を忘れる、人の世界ではしかし、この部分の忘却はあってはならない。言外に神話M354は人社会の基本は周期性だと定義している。
最後の人間妻と周期性については;
ようやく巡り会った女は経血垂れ流しで、月経の周期を獲得していない。漁にでて、血をコマセにして大漁で毎夕、籠を一杯にして帰る。この漁は毒流し漁のアナロジ(類似)です。こちらの取り決めは特定の場所、乾期、年に一回、流す毒(木肌)の採取は男が月日をかける、当日は村人総出、男が毒を流し女が浮き上がった魚をすくう、収穫は皆で分配する。漁の技法に社会の行動規範と周期性が結びついています。モンマネキ嫁のやり方との差異は一人(社会性がない)、経血とは魚に餌で人に毒、毎日できる(経血は垂れ流しの時代だった)。ここに周期性違反が強く語られます。
周期性追求は本巻後半の北米神話に引き継がれるのですから、モンマネキ神話はM1ボロロ族とM428のArapaho族などの神話群との
レヴィストロース「食事作法の起源」を読む(続き) 8の了
(次回投稿予定は30日)