蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

野生の思考、具体科学と魔術のまとめ

2020年07月21日 | 小説
(2020年7月21日)
これまでレヴィストロース著「野生の思考LaPenseeSauvage」の第一章「具体科学、魔術」につき3回の投稿をGooに入れている。明日からLa logique des classifications totemiquesトーテム分類の論理を予定する。この合間を活用して、これまでのまとめをパワーポイントで作成した。パワーポイントはJPEG(写真保存の形式)に保存できると最近知った。JPEGであればGooBlogも受け付けるので、PCスクリーンをデジカメ化するなどの作業は不要となる。もっと前から知っておけば良かった、無知は複雑系に走るとの、一つのbricolage教訓です。


野生の思考と近代思考を較べた。
左コラムには起源、思考、世界観、哲学、科学技術を5列にしている。


野生思考の起源を新石器革命とした。
本書冒頭に農業、工芸、建造などの始まりを新石器の出現と合わせ述べていることを「知」の起源とした判断による。レヴィストロースは歴史家ではないから、当時(1950年代)の風潮を受けたと見る。現在ではスチーブン・ミズン(英国歴史家、著作に心の先史学など)もこの説を唱えている。

paradoxe neolithique (新石器逆説)なる語をレヴィストロースは用いる。
>que l’origine des scineces modernes remonte seulement a quelques siecles pose un probleme ; le nom de paradoxe neolithique lui conviendrait parfaitement(26 頁).
近代科学の成立は僅か数世紀前にしかたどれない。このことは新石器逆説なる語は(それに=lui)完璧に合致している。

この一文から以下を理解する;
luiは前文のl’origine(=近代科学の起源)を受ける。
les sciences modernesは2~300年前にしか起源を求められない(quelqueの語感は2~3なので)。
新石器革命は1万2千年前とされる。いったんは革命的知識、技術を獲得した人類は、その後かくも長くscience du concretを信仰していたのだ。その間に知的進展は認められなかった。これが新石器逆説である。この逆説をうち破いたのが近代思考(科学)である。故に新~逆説は(origineは女性だから“彼女に”)似つかわしいとされるのだ。似つかわしいとは表現で、その出現が待ち望まれていたと言いたいのでしょう。

近代思考の起源をコペルニクスとした。
これは小筆の独断です。2~300年前としているからレヴィストロースはニュートンを念頭に置いたかも知れない。見えている天体の動き(モノ)はとある法則(本質)に支配されているとする考えである。ここに本質(万有引力)で属性(太陽系の運動)が説明できた。

具体思考とは「宇宙をモノで説明する」に他ならない。モノとは外貌(見た目)である。本質と外貌の融合とは本質と属性の未分化である。認識は概念と知覚のふらつきがあり、不鮮明である。

一方で近代思考の哲学ではデカルト、カントに代表される「知恵」の優先、これが確立され科学技術の支えとなった。

魔術の説明に「本質の異形転移」とある。
本質と属性が未分化、ということは本質が憑りうつって別の属性を持つことが可能。

azenda族の不運な男は呪われていた。呪いは誰かさんの怨みそのものだが、それが野牛や屋根に憑りうつり男を苦しめた。道真伝説もこの「本質憑依」で説明できる。

それ以外、世界観、哲学、科学技術の列説明についても、前投稿をご高覧なさったかたには理解に至ると思います。

追;日本人は、小筆部族民蕃神もその一人だが、デカルト・カントらの哲学を通しての知的訓練など受けていない。言霊の魔力を信ずる一人である。ならば、知覚と概念の対峙(ソシュールの言語学)なんてクソ喰らえかもしれない。この観点から哲学の先達を読むのも面白そうだ。

コメント
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