(2021年2月10日)Havelock Ellisらは人はそれを毛嫌いする心理があるとした。次の世代の心理学、精神分析学者らはその正反にして、それへの願望、希求が人の心理の深層に潜む。それが思わしい状態でないから近親婚への禁忌が生まれたと考えた。<la psychanalyse découvre un phénomène universel, non point dans la répulsion vi-à-vis des relations incesteuses , mais au contraire dans leur pursuite.>精神分析学が発見した汎人類的現象とは近親姦淫に対峙するとき身構える反発ではなく、その真逆、希求なのである。
「深層心理」そして汎人類性universaliteなどの言葉は示すけれどレヴィストロースはそれが何かの説明を加えていない。フロイトらが主張した母親願望説エディプスコンプレックスであることは明確である。
エディプス(オイデプス)はギシリャ神話の人物。皆様にはこの顛末をご存じと思いますが、かいつまんで筋をのべると。「王の子として生まれたが「父親を殺し母を犯す」と不吉な予言が宣じられたから山に捨てられ、羊飼いに育てられる。成人し旅に出てどちらが道を譲るかで諍いを起こし、男を殺す。スフィンクスの謎を解いて未亡人の王妃を娶る。道で殺した男が父親の王、妻王妃とは実の母だった。自ら眼を潰し諸国をさまよう」
フロイトらは母への願望が「深層心理」とし、あらゆる男はそれを抱くとした。
Wikipedia で調べると「フロイトが提示した概念である。幼年期に生じ始める無意識な葛藤として提示された….子供は母親を手に入れ、父親のような位置に付こうとする。男児においては母親が異性であり、ゆえに愛情対象である。子供は父親のような男性になろうとして強くなろうとする。子供はじきに父親を排除したいと思う」
しかし、
続く文では人類学的視点からレヴィストロースは心理学説へ反論する。
<Il ne’est pas certain non plus que l’habitude soit toujours considéré comme devant être fatale au mariage. この慣習(近親婚)は、かつて考えられていたようにこうした婚姻の結末が破滅(エディプス神話の例=前述)につながるなどとは(族民は)判断していない。
<Beaucoup de societes en jugent autrement>多くの部族社会は(近親婚をおおらかに)その逆として捉えている。
例証として取り上げるのはイトコ婚の実践例である。これに対してフロイトらの母親願望コンプレックスをイトコ婚で否定するのは近親姦淫の次元が異なる、こんな反論が出そうだ。その回答としては「エディプスコンプレックスにしても近親婚願望の一形態であり、それをことさらフロイトらが喧伝しただけである。総体として近親婚を捉え、説明付けする事が(人類学)としては重要だ」と答えそうだ(ここは部族民蕃神の解釈)。
エディプスコンプレックスなどを素材にすると気が滅入る。ピカソの「母と息子」のスケッチを見て心を和らげてください。
画像は絵はがき(当方が何かの機会で購入した)
族民の風習をまじえて心理学手法との違いを明らかにする狙いである。アフリカ中央部に居住するAzende族<L’envie de femme commence à sa soeur>女性への関心ごとは姉妹から始まる(以上の引用は本書20頁)
Hethe族(居住地不明)婚姻習俗を引用する。
<Les Hethe justifient leur pratique du mariage entre cousins croisés par la longue initimité qui règne les futures conjoints, vraie cause - selon eux – de l’attraction sentimentales et sexuelle>(同)
Hethe族は彼らが実践している交差イトコ婚について、「情緒と性的関心を増長するため幼少からの同居させるなど準備期間を設け、この制度を正統化している」。
人目を避けるために揃って外出するなども多めに見られ、時が来れば二人だけのバンド生活に入って独立する。なにやらアダムとイブを思い起こさせる流れです。
ここでのHavelock Ellisらの「隔離されていたから異性として認識する」説の否定するとあわせて、フロイトらの「深層心理」も否定しています。なぜならば近親婚を認める、否定するとは社会制度であるとしているから。この実例を挙げているから。
<Mais il y a une confusion infinitivement plus grave. Si l’horreur de l’inceste résultait de tendances physiologiques ou psychologiques congenitales, pourquoi s’exprimerait-elle sous la forme d’une interdiction à la fois si solennele et si essetielle qu’on la retrouve dans toutes les sociétés humaines>
訳:よりとてつもなく深刻な混乱がここに見られる。もし近親婚への怖れが生来からの(自然からの)肉体的、そして心理的事由から発生しているとすれば、これほどにも厳格かつ根源的な禁止が、どの人間社会でも認められる理由に説明が付かない。
この理由をレヴィストロースは仮定として自ら用意している。それには2の言い訳があって、
1 近親婚とは自然の規定をはみ出す「例外」であるから罰せられる。(des exceptions où la nature faut à sa mission)
2 このはみ出し行為が社会に悪影響を与えるから。
1については例外なる数量を起因として「罰」という性質を決定するには無理があるとしている。例外が少ないから罰が重いのか、それとも反対に多いから罰を重くしているのか。こうした数を質に替える作業は無い。よって2の社会への影響を重視しなければならない。
<Que ce danger exsiste pour le groupe, les individus intéresses ou leur descendance , c’est en lui qu’il faut chercher l’origine de la prohibition.(21頁)訳:この危険性が集団に、関与した個人とそれらの子孫に存在するとして、禁止の起源はこの危険だとして、これを解明しなければならない。
親族の基本構造9心理からの説明の中の了(2021年2月10日)
「深層心理」そして汎人類性universaliteなどの言葉は示すけれどレヴィストロースはそれが何かの説明を加えていない。フロイトらが主張した母親願望説エディプスコンプレックスであることは明確である。
エディプス(オイデプス)はギシリャ神話の人物。皆様にはこの顛末をご存じと思いますが、かいつまんで筋をのべると。「王の子として生まれたが「父親を殺し母を犯す」と不吉な予言が宣じられたから山に捨てられ、羊飼いに育てられる。成人し旅に出てどちらが道を譲るかで諍いを起こし、男を殺す。スフィンクスの謎を解いて未亡人の王妃を娶る。道で殺した男が父親の王、妻王妃とは実の母だった。自ら眼を潰し諸国をさまよう」
フロイトらは母への願望が「深層心理」とし、あらゆる男はそれを抱くとした。
Wikipedia で調べると「フロイトが提示した概念である。幼年期に生じ始める無意識な葛藤として提示された….子供は母親を手に入れ、父親のような位置に付こうとする。男児においては母親が異性であり、ゆえに愛情対象である。子供は父親のような男性になろうとして強くなろうとする。子供はじきに父親を排除したいと思う」
しかし、
続く文では人類学的視点からレヴィストロースは心理学説へ反論する。
<Il ne’est pas certain non plus que l’habitude soit toujours considéré comme devant être fatale au mariage. この慣習(近親婚)は、かつて考えられていたようにこうした婚姻の結末が破滅(エディプス神話の例=前述)につながるなどとは(族民は)判断していない。
<Beaucoup de societes en jugent autrement>多くの部族社会は(近親婚をおおらかに)その逆として捉えている。
例証として取り上げるのはイトコ婚の実践例である。これに対してフロイトらの母親願望コンプレックスをイトコ婚で否定するのは近親姦淫の次元が異なる、こんな反論が出そうだ。その回答としては「エディプスコンプレックスにしても近親婚願望の一形態であり、それをことさらフロイトらが喧伝しただけである。総体として近親婚を捉え、説明付けする事が(人類学)としては重要だ」と答えそうだ(ここは部族民蕃神の解釈)。
エディプスコンプレックスなどを素材にすると気が滅入る。ピカソの「母と息子」のスケッチを見て心を和らげてください。
画像は絵はがき(当方が何かの機会で購入した)
族民の風習をまじえて心理学手法との違いを明らかにする狙いである。アフリカ中央部に居住するAzende族<L’envie de femme commence à sa soeur>女性への関心ごとは姉妹から始まる(以上の引用は本書20頁)
Hethe族(居住地不明)婚姻習俗を引用する。
<Les Hethe justifient leur pratique du mariage entre cousins croisés par la longue initimité qui règne les futures conjoints, vraie cause - selon eux – de l’attraction sentimentales et sexuelle>(同)
Hethe族は彼らが実践している交差イトコ婚について、「情緒と性的関心を増長するため幼少からの同居させるなど準備期間を設け、この制度を正統化している」。
人目を避けるために揃って外出するなども多めに見られ、時が来れば二人だけのバンド生活に入って独立する。なにやらアダムとイブを思い起こさせる流れです。
ここでのHavelock Ellisらの「隔離されていたから異性として認識する」説の否定するとあわせて、フロイトらの「深層心理」も否定しています。なぜならば近親婚を認める、否定するとは社会制度であるとしているから。この実例を挙げているから。
<Mais il y a une confusion infinitivement plus grave. Si l’horreur de l’inceste résultait de tendances physiologiques ou psychologiques congenitales, pourquoi s’exprimerait-elle sous la forme d’une interdiction à la fois si solennele et si essetielle qu’on la retrouve dans toutes les sociétés humaines>
訳:よりとてつもなく深刻な混乱がここに見られる。もし近親婚への怖れが生来からの(自然からの)肉体的、そして心理的事由から発生しているとすれば、これほどにも厳格かつ根源的な禁止が、どの人間社会でも認められる理由に説明が付かない。
この理由をレヴィストロースは仮定として自ら用意している。それには2の言い訳があって、
1 近親婚とは自然の規定をはみ出す「例外」であるから罰せられる。(des exceptions où la nature faut à sa mission)
2 このはみ出し行為が社会に悪影響を与えるから。
1については例外なる数量を起因として「罰」という性質を決定するには無理があるとしている。例外が少ないから罰が重いのか、それとも反対に多いから罰を重くしているのか。こうした数を質に替える作業は無い。よって2の社会への影響を重視しなければならない。
<Que ce danger exsiste pour le groupe, les individus intéresses ou leur descendance , c’est en lui qu’il faut chercher l’origine de la prohibition.(21頁)訳:この危険性が集団に、関与した個人とそれらの子孫に存在するとして、禁止の起源はこの危険だとして、これを解明しなければならない。
親族の基本構造9心理からの説明の中の了(2021年2月10日)