蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

親族の基本構造ヴェイユの証明第3 部 Commentaire 2

2021年12月19日 | 小説
(2021年12月19日)本書に論文寄稿の後、ヴェイユはプリンストン大学から数学教授として招聘され、また世界数学会議(1955年日光にて)に参加している。そこで志村谷山の予想に接しそれがフェルマーの最終定理を解く鍵となる重要提題と見抜き、世界数学界に広く喧伝した。この機会に日本に住む「個人と称する数学者の謎」、その意は個人名であれ程の業績を上げているとは「信じ難い」、ブルバキ(フランス数学者集団)と同じく複数人の業績でないかとの疑いを解くため、奈良山中に「多変数函数」解明に数学仙人の浮世離れ生活をエンジョイ(おっとタイプミスった、苦吟)していた岡潔を訪ねている。(カギ括弧内は難しい概念なのでWikiに解説はでていない。無知部族民はこれら情報をネット採取した)

始めよう;
L’étude mathématique du système Murngin qu’on vient de le lire rappelle plusieurs remarques. D’abord, la découverte qu’un système de type Murngin, s’il fonctionne dans les conditions rigoureuses qui, seules, permettent d’en donner une interprétation systématique, provoque la fission du groupe en deux sociétés irréductibles, montre qu’un système d’échange généralisé ne peut pas évoluer au-delà de sa propre formule : sans doute, le système est également concevable avec un nombre quelconque, mais que ce nombre soit trois, n ou n+1, la structure reste inchangée.
訳:Murngin族体系の数学的考察を開示したばかりなるも、皆様には幾つかの留意点に気を止めたかと存ず。始めにMurngin類型とはそれが厳格な規則遵守の下で遂行されている状況でのみ覚知が可能となり、体系として人々の解釈に至るのだが、それはまたそうした社会はそれ以上に分割できない2の集団を形成する事となる。かつこの一般化交換は本来として有り得る形体を越えての進展は望むべくもない限界を示した。もちろんこの体系はいくつもの成員数での成立は可能であろう。(Murnginの2集団に対し)3の集団、n, n+1の可能性もあるが、構造に変化はない。

[部族民の理解] : [les conditions rigoureuses] conditionsは条件なので実体を持つモノとして普通は考える。人口動態、生業あるいは社会基盤などと、こうした「環境条件下でのみ体系が生きる」と理解できるが、意味が通じない。そこで訳をひねって「一般化交換の規則」を厳格遂行してのみ体系が生きると理解した。モノを条件とするのではなく「行為」と解釈した。
これに導かれる [une interprétation systématique] 体系としての解釈とはヴェイユの展開した数値化(サブセクション座標a,b,cと婚姻数値M(a,b,c,d)、子の移譲先の計算式a+1,b+1…)がsystématique。そして(ヴェイユモデル)行き着くと考える。そこに至る洞察の道のりを自ら表す文である。
自身モデルを「uneとある一つの」としているが「謙譲表現」ではなく、あくまでも可能性としての一つである。実際、同じ材料、情報源を使いながらもレヴィストロースモデルとは異なる。

ちなみにヴェイユモデルの発展形、[modèle en trois groupes irréductibles]3の非分割集団の社会における一般化交換の周回社会を再現した。部族民式に展開図で広げたが4サブセクションの3の直列組み合わせ(12のサブセクション)は可能なるも、3段目がどうしても限定交換になってしまう。3段目を付け足したら形体でも付け足し感が否めず、この部分がréductible(分割できる)となってしまう。こした部族形体は考えにくい。
8のサブセク、4集団を直列結合すれば全周回で一般化交換は実現できるが、サブセクション数は16と膨れ、周回数は32と膨れる。それほどにも迂遠な周回交換はあり得ない(と感じるがいかがなものか)。


3の階層を直列に置いた親族構造の試み。付け足した3番目では嫁を限定交換するしか解決策がでてこない。3番目は分割され得る(réductible)集団となる。


Si l’on essaye de transformer la structure ; deux possibilités sont ouvertes : ou bien la transformation est opérante, et la formule d’échange généralisé s’abolit (c’est le cas du système Dieri), ou bien la formule d’échange généralisé est préservée, et c’est alors la transformation de structure qui s’avère illusoire : en acquérant huit sous-sections, le système Murngin parvient seulement à fonctionner dans les conditions théoriques de deux systèmes d’échange généralisé, chacun à quatre classes, juxtaposés.
Nous étions parvenus à cette conclusion au chapitre précédent ; par une analyse purement structurale ; et l’analyse mathématique la confirme.
訳:構造を換えようと人々が動くとして2の可能性が考えられる。1は変換が実際に動き出す場合である。一般化交換の制度はその過程で消える。Dieri族の場合がこれにあたる。
もう一方は一般化交換を残しながら新たな体系に移る。変換は実は見せかけだけになる。Murngin体系をとると、それは4サブセクションを8に加増するため、新たに4サブセクション集合を縦列に組み合わせた。それぞれが一般化交換をもっぱらとする。前章にて我々はこの結論にたどり着いた。その手法はといえば構造を明らかにせむとする省察であり、数学的分析がそれを裏打ちした。
[部族民から]:一般化交換を残しながら8のサブセクションの体系。ヴェイユとレヴィストロースが構築する思索の力方向は、ここ原点に置いては同一を目指した。

注:Dieri族情報はネットで取得。
The Diyari alternatively transcribed as Dieri is an Indigenous Australian group of the South Australian desert originating in and around the delta of Cooper Creek to the east of Lake Eyre. (Wikipedia)
Dieri族(写真はネットから)


親族の基本構造ヴェイユの証明第3 部 Commentaire 2の了
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