蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

分子進化の中立が説くアシュケナージの試練、生き残りの女戦略 1

2023年10月26日 | 小説
(2023年10月26日)アシュケナージは古くからヨーロッパに居住域を確保していたユダヤ人を指す。揺籃の地はアルザス地方とされる。9世紀にはすでにシャルルマーニュの王庭に出仕していた記録もある(ネット)。部族民がことさら採り上げるレヴィストロース、彼の家系はアルザス出身。20世紀数学界の大御所にしてレヴィストロースの盟友「交叉いとこ婚を数式」で証明したアンドレ・ヴェイユもこの地の生まれである。
彼らはアルザスを拠点にドイツ、東欧、さらにはロシアに進出していった(20世紀の大ピアニスト「アシュケナージ」はロシア出身、シンガーはワルシャワのアシュケナージ世界をイーディッシュ語で描いた詩人(1978年ノーベル文学賞)。ハンガリーに定住したアシュケナージは、例えばゲーム理論フォン・ノイマンなど頭の良さから宇宙人かと疑われている。
アシュケナージの平均知能指数は112、一般ヨーロッパ人に比べ12ポイント高い。個人と個人を比べるとこのポイント差はそれなりの数字だが、凌駕卓越の線を超すかには微妙かもしれない。しかし統計的にこれが意味する処とは「正規分布曲線が鐘の形を採るので平均値から離れた人の数=この場合は知能が高い側¬=に強い影響を与える」両の集団を知能指数140を境に比べると、後者が数倍(それ以上か)の人口を有する結果になる(出典は1万年の進化爆発、コクランら著、日経BP刊、写真は236頁をデジカメ化しました、版権に抵触するかを問い合わせ中)。140超の知能指数とはアカデミーではそれなりの地位に辿り着けよう、実社会では管理職役員にはなれそうだ。
こうした数字が招く結果は「人口が世界で600分の1(0.17%)の集団が科学関係のノーベル賞の4分の1(25%)、米国人口の3%未満でチューリング賞(計算機学会)の25%を受賞する快挙を成し遂げている」(同書)。第4次イスラエルアラブ戦争(1973年)ではイスラエル側が追い込まれる事態が発生した。海外のユダヤ人が義勇兵志願でイスラエルに渡った。アメリカのプリンストン、ハーバードなど最高学府で教師陣が居なくなった、学生も優秀な側の大半が休学を届けたそうです。
ユダヤ人全体が優秀ではない。イスラエルには各地域からのユダヤ人が参集しているが、彼らの平均知能指数は世界標準の100、アシュケナージ系のみがイスラエルでも突出している。ここまでが「ユダヤ人優秀説」の序段。女の生き残り戦略に入るのだが、集団遺伝学への寄り道を許してくれ。


本図は「1万年の進化爆発、コクランら著」の236頁挿図をデジカメ化した。上の分布曲線が世界平均、下がアシュケナージとする。上図の頂点は知能指数100、下のそれは112。140で区切ると、下の黒面積が上を圧倒する。アシュケナージの優秀さを示すにあまりに見事なので借用した。赤線楕円は部族民の加工。なお日経BP社には本ブログで引用許可をいただけるかは問い合わせ中です。

木村資生博士(国立遺伝学研究所、1924~94岡崎)が発表した分子進化の中立説はダーウィン進化論を修正する説として、当座は各方面から反発を受け、後に受け入れられ、今では集団遺伝の教科書として学会で多くの賛同を得ている(ネットから)。部族民(渡来部)は1970年代後半に木村先生の著作に接したものの、「中立」なる語が意味するところを概念として理解が及ばなかった。こんな説明を見つけた、「1950年代、アメリカで研究を進めていた日本人科学者木村資生が、「ガス拡散」を分析するため開発された手法を応用して遺伝上の計算を行い...」。ガス拡散の言葉から「黒い雲塊が四方八方にモクモクと湧き出る」イメージを思いついた。分子進化もこのように不断に、方向性を持たず、中立的に進化していくか(部族民なりの)理解に落ち着いた。


木村資生博士、研究成果はノーベル賞級ですが早くしてお亡くなりなった、「説」なので証明されていないためかと勘ぐります。ダーウィンの進化は「論」、中立は今もって「説」。立証しにくいと聞いた。写真はネット採取。

こちらの引用は「アダムの旅、ウエルズ著、バジリコ社刊」から。著者は1990年代にスタンフォード大学ルイージ・カッヴァリ・スフォルッア(集団遺伝学者、1922~2018年ベルーノ)研究室で主任を努めた英才、ハーバード大学局員教授)。引用文は次の文に引き継がれる。「カッヴァリ・スフォルッアらの集団遺伝の研究を明確に後援した。木村研究のおかげでこの学問もようやく「突然変異」の泥沼から脱出できることになる」。
この学問とはダーウィンの進化論、自然淘汰説。自然環境に適合した遺伝子変化を取得した個体が生き残る、これを適者生存という。木村説ではそもそも分子レベルでの遺伝子変化(遺伝子のガス拡散の動き)は頻繁に発生しているし、個体に及ぼす影響は、生存への有利不利など選ばずに、ゆらぎ拡散している。突然変異の画期が劇的に適者生存を選ぶダーウィン的運動様態とは大きく異る。
カッヴァリ・スフォルッツァは「遺伝子の分子進化のガス拡散」に注目して、民族、集団間の遺伝子相違を研究した。北欧に多く頻発する金髪碧眼はガス拡散の結果、これにしても黒目、茶目、赤毛などと斑になって中立的に生まれたのだが、太陽光の乏しい地域では色白が太陽を受けられるーなど適者生存に叶うため、その地の人口に広まったとしている。また他に熱帯地方に多い鎌状赤血球の遺伝子の解明などの説明にも及んでいる。
分子進化の中立が説くアシュケナージの試練、生き残りの女戦略 1 了
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