(2023年10月9日)愛しき弟のつもりで抱いた木の幹が真っ赤な偽り、憤怒に染まる身を村に走らせた。村中の屋に火を放ち、兄弟達と妻のすべてが死んだ。ただ独り生き残った母は、嫁の一人のSturnelle(ヒガシマキバドリ)の死骸を探り、腹を割って胎児を取り出した。双子、男と女の子であった。祖母は女の子を男子の背に埋め込み、成長した男子に「自身の影を見てはならない、矢を空に向けてはならない」ときつく戒めた。
己身の背の重さに薄々気づいた男子に鳥(pluvier kildirムナグロ)が「空に矢を放て」とそそのかした。矢は真っ逆さまに落ちて背に当たり、二人は分かれた。兄は己の背に嵌められた妹を、妹も身を分けた兄を、初めて見た。
狩り出る旅にも妹は兄から離れず質問を続けて兄を悩ます。 « Qui sommes-nous ? Pourquoi n’avons-nous pas ni père ni mère ? Qu’a donc notre grand-mère a pleuré sans cesse ? » (42頁) 私たちって誰なの ? 何故、父も母もいないの、おばあちゃんは毎日泣いている、いったい何故?
妹「何でも知っている太陽に質そう」しかし問いを太陽は無視する。妹は矢を取って太陽の頬を射た。やっと太陽が真実を語った。お前達を孤児に貶めた者は今、水中に潜むと。
兄妹は教えられた沼に夜の漁を仕掛ける。 « Nuit après nuit ils rapportèrent du poisson et des oiseaux d’eau en quantité. Enfin, ils entendirent le cri de la meurtrière « gocho gocho gochdjip » La grand-mère l’entendit et présenterait qu’un jour, en déchargeant le poisson elle trouverait la tête coupée de sa fille dans le panier » (43頁)
毎夜、魚と水鳥を篭に一杯に満たし二人は戻る。ある夜、殺人者の鳴き声ゴッコゴッコ…を聞いた。祖母も鳴き声を耳にした。「篭の魚を取り込みで娘の首を見つけてしまう、そんな日がいずれ来るに違いない」不吉な予兆に苛まれた。
コレージュ・ド・フランスの階段教室で「裸の男」を講義するレヴィストロース。
1971年11月、写真の原画では「Aishisiイシス」が読み取れる。階段教室での講義は教授(Chaire)に課せられた公開講座で、レヴィストロースは日曜日11時から12時半までと決まっていた。
水鳥に化けた叔母が父母の敵と知り、捕らえて殺害した。二人は祖母から逃げる。(竈間の灰に穴を穿って逃げ道としたが、什器の諸々に「誰にも教えてはならぬ」と命じた。しかし錐(alène)には伝え漏れてしまった。案の定祖母の問いつめに錐は逃げ道を教えた。(錐への申し付け漏れと秘密露呈は新大陸神話に広く登場する)
兄は矢を林に見失う。妹に探し出すよう乞う。妹は「私はあなたの誰なの」問いに答えてと切り返す。 « Elle refusa à moins qu’il ne précisât à sa satisfaction quel était leur lien de parenté. « Tu es ma sœur ? ―Non » 始めの問いかけは「妹だろう」の返事は「違うわ」。兄の答に自身が納得する言葉が出るまで妹は問い続ける。叔母、姪、いとこ…返答が続くけれど妹からすぐさまNonが返される。それを口に出すまいと残しておいた間柄、それしかもはや残されない。 « Épouse » 伴侶の答えをだしてしまった兄に妹の答えは « Oui » そうよ。妹が待ち望んだこの答え、以来、 « bien que frère et sœur, ils vécurent comme des époux » 兄妹なれど夫婦として過ごした。
祖母は追う。彼らが遺棄した小屋の竈灰が丸く凹んでいる。身ごもった腹が灰を窪ませた、祖母は孫二人が成るべくして成った証拠を目の辺りにした。
妹は臨月を迎える。断食と潔斎で精霊を呼び母子の加護を祈るため、兄は森に入った。熊に変身した祖母に喰われた。祖母は孫娘に会いに来た。祖母は子も己も食らうとの狙いを察知した孫娘が真っ赤に焼いた石棒を祖母の肛門に突き刺した。遺骸を焼く火を熾した。
ここからM529(女Letkakawashは子を背に負い、燃えさかる薪火の前に立った。因縁浅からぬ魔女の死骸を焼かむと熾した業火であった…)と続く。既のところで助け出されたイシス、そして再生、成長。M530 (イシスは複数の妻を持つ。妻の一人にKmu…が懸想しイシスを村から放逐しようと画策した)につながる。
イシスから復讐を受け全ての心臓を燃やされた(Curtis版ではパイプ)俗神Kmukamchは地上に樹脂の熱雨を降らせる。イシスと家族は助かるものの村人の全滅でM538神話は終わる。M538が本巻「裸の男」の基準神話としてこの後も取り上げられる。投稿子は2の視点を取るとした。
1)文化創造、起因は近親姦
M1(神話学全4巻の基準神話)からイシス神話への伝播の証左。両神話schèmeスキームの比較。M1神話(神話学全4巻の基準)は「生と料理」投稿で取り上げた。
M1(バイト午後の冒険、火と水の創造)のあらすじを;少年バイトゴゴは森に入った母を追って姦する。息子の印(腰紐に飾る羽)を取って「みよがし」に己の紐に母は飾る。その羽模様を夫は訝しみ、…、彼と祖母はジャガーからくすねた火を守って生き残る。
「何故、罪を犯したバイトゴゴは復活しさしたる罰を受けず、罪をとがめた父が報われないのか」の問いかけをレヴィストロースは行中に挟んだ。その答え(部族民)を用意するに近親姦、上下婚(たわけ)を罪と罰に分解する;
バイトゴゴの罪は近親姦を犯した行為ではなく、それを(母を通して)公知させたからと見る。罰はそのような風習を黙認した父母を含めた村民に及ぶ。族民の全員に罰を科した背景がこの罪と罰への意識である。文化創造への一歩の踏み出しである。バイトゴゴもその蛮習に耽溺した一人ではあるが、一旦死んで、ジャガーの住むあの世に滞在し罪が浄化された。
罪祓い(洪水生き残り)明けにバイトゴゴと祖母は新たな「文化」社会を創り始める。
Mythologique神話学「裸の男Homme Nu」神話学4巻を読む 3 イシスの冒険 了 (10月9日)
己身の背の重さに薄々気づいた男子に鳥(pluvier kildirムナグロ)が「空に矢を放て」とそそのかした。矢は真っ逆さまに落ちて背に当たり、二人は分かれた。兄は己の背に嵌められた妹を、妹も身を分けた兄を、初めて見た。
狩り出る旅にも妹は兄から離れず質問を続けて兄を悩ます。 « Qui sommes-nous ? Pourquoi n’avons-nous pas ni père ni mère ? Qu’a donc notre grand-mère a pleuré sans cesse ? » (42頁) 私たちって誰なの ? 何故、父も母もいないの、おばあちゃんは毎日泣いている、いったい何故?
妹「何でも知っている太陽に質そう」しかし問いを太陽は無視する。妹は矢を取って太陽の頬を射た。やっと太陽が真実を語った。お前達を孤児に貶めた者は今、水中に潜むと。
兄妹は教えられた沼に夜の漁を仕掛ける。 « Nuit après nuit ils rapportèrent du poisson et des oiseaux d’eau en quantité. Enfin, ils entendirent le cri de la meurtrière « gocho gocho gochdjip » La grand-mère l’entendit et présenterait qu’un jour, en déchargeant le poisson elle trouverait la tête coupée de sa fille dans le panier » (43頁)
毎夜、魚と水鳥を篭に一杯に満たし二人は戻る。ある夜、殺人者の鳴き声ゴッコゴッコ…を聞いた。祖母も鳴き声を耳にした。「篭の魚を取り込みで娘の首を見つけてしまう、そんな日がいずれ来るに違いない」不吉な予兆に苛まれた。
コレージュ・ド・フランスの階段教室で「裸の男」を講義するレヴィストロース。
1971年11月、写真の原画では「Aishisiイシス」が読み取れる。階段教室での講義は教授(Chaire)に課せられた公開講座で、レヴィストロースは日曜日11時から12時半までと決まっていた。
水鳥に化けた叔母が父母の敵と知り、捕らえて殺害した。二人は祖母から逃げる。(竈間の灰に穴を穿って逃げ道としたが、什器の諸々に「誰にも教えてはならぬ」と命じた。しかし錐(alène)には伝え漏れてしまった。案の定祖母の問いつめに錐は逃げ道を教えた。(錐への申し付け漏れと秘密露呈は新大陸神話に広く登場する)
兄は矢を林に見失う。妹に探し出すよう乞う。妹は「私はあなたの誰なの」問いに答えてと切り返す。 « Elle refusa à moins qu’il ne précisât à sa satisfaction quel était leur lien de parenté. « Tu es ma sœur ? ―Non » 始めの問いかけは「妹だろう」の返事は「違うわ」。兄の答に自身が納得する言葉が出るまで妹は問い続ける。叔母、姪、いとこ…返答が続くけれど妹からすぐさまNonが返される。それを口に出すまいと残しておいた間柄、それしかもはや残されない。 « Épouse » 伴侶の答えをだしてしまった兄に妹の答えは « Oui » そうよ。妹が待ち望んだこの答え、以来、 « bien que frère et sœur, ils vécurent comme des époux » 兄妹なれど夫婦として過ごした。
祖母は追う。彼らが遺棄した小屋の竈灰が丸く凹んでいる。身ごもった腹が灰を窪ませた、祖母は孫二人が成るべくして成った証拠を目の辺りにした。
妹は臨月を迎える。断食と潔斎で精霊を呼び母子の加護を祈るため、兄は森に入った。熊に変身した祖母に喰われた。祖母は孫娘に会いに来た。祖母は子も己も食らうとの狙いを察知した孫娘が真っ赤に焼いた石棒を祖母の肛門に突き刺した。遺骸を焼く火を熾した。
ここからM529(女Letkakawashは子を背に負い、燃えさかる薪火の前に立った。因縁浅からぬ魔女の死骸を焼かむと熾した業火であった…)と続く。既のところで助け出されたイシス、そして再生、成長。M530 (イシスは複数の妻を持つ。妻の一人にKmu…が懸想しイシスを村から放逐しようと画策した)につながる。
イシスから復讐を受け全ての心臓を燃やされた(Curtis版ではパイプ)俗神Kmukamchは地上に樹脂の熱雨を降らせる。イシスと家族は助かるものの村人の全滅でM538神話は終わる。M538が本巻「裸の男」の基準神話としてこの後も取り上げられる。投稿子は2の視点を取るとした。
1)文化創造、起因は近親姦
M1(神話学全4巻の基準神話)からイシス神話への伝播の証左。両神話schèmeスキームの比較。M1神話(神話学全4巻の基準)は「生と料理」投稿で取り上げた。
M1(バイト午後の冒険、火と水の創造)のあらすじを;少年バイトゴゴは森に入った母を追って姦する。息子の印(腰紐に飾る羽)を取って「みよがし」に己の紐に母は飾る。その羽模様を夫は訝しみ、…、彼と祖母はジャガーからくすねた火を守って生き残る。
「何故、罪を犯したバイトゴゴは復活しさしたる罰を受けず、罪をとがめた父が報われないのか」の問いかけをレヴィストロースは行中に挟んだ。その答え(部族民)を用意するに近親姦、上下婚(たわけ)を罪と罰に分解する;
バイトゴゴの罪は近親姦を犯した行為ではなく、それを(母を通して)公知させたからと見る。罰はそのような風習を黙認した父母を含めた村民に及ぶ。族民の全員に罰を科した背景がこの罪と罰への意識である。文化創造への一歩の踏み出しである。バイトゴゴもその蛮習に耽溺した一人ではあるが、一旦死んで、ジャガーの住むあの世に滞在し罪が浄化された。
罪祓い(洪水生き残り)明けにバイトゴゴと祖母は新たな「文化」社会を創り始める。
Mythologique神話学「裸の男Homme Nu」神話学4巻を読む 3 イシスの冒険 了 (10月9日)