(ボロロ族の歌1は10月13日投稿)
レヴィストロースが神話と音楽を結びつけたきっかけが「悲しき熱帯」TristesTropiques に生々しく記載されています。ジャングル、河の氾濫、悪路の立ち往生での数週間をへて、ボロロ族のケジャラ邑落にたどり着いた。程なく日が暮れてレヴィストロース一行は男屋に間借りします。夢うつつで聞こえてくるのは女の泣き、夫5人に次々を先立たれ近隣に食を乞う辛さを「あの頃はマニオック、肉も魚も不足していなかった」落ちぶれた今の様を幾時間も語りに嘆いている。寡婦の夜泣きが終わって、夜も更けて、すると歌が聞こえ始めた。
<Des chants se modulaient au-dehors dans une langue base, sonore et gutturale aux articulations frappes. Les melodies simples et cent fois repetees, oposition entre des solos et des emsenble, le style male et tragique, evoquent les choeurs guerriers de quelque Mannerbund germanique>
訳:外から歌が聞こえた、しわがれの男声は低く調子でよく響く、抑揚をつけ跳ねる言い切り。単純な旋律は幾度も繰り返される。ソロの歌声を合唱が追いかける。男の悲劇を語っているのか、古代ゲルマンの男組Mannerbund戦士の心理が彷彿とする。
伴奏は木管とマラカスのみ、歌が止まる間にはマラカスの切りの良い拍子、音声の沈黙の合間に悪魔の声が聞こえてくるほどとサレジオ会神父の報告もある。毎晩、歌は夜明けまで続く。男達が眠るのは明け方だけだ。歌の内容とは祈りと物語、かく神話は語られ伝播してゆくとレヴィストロースは知った。(悲しき熱帯252頁)
生と調理に戻ります。
神話1(M1)の紹介に続くレシタティーボは11頁、民族誌的にボロロ族を説明している。村落、社会構造、ペニスケースに続いて金剛インコの地位に入ります。尾羽が美しく儀礼では特定の男の頭飾りに供されます。尾羽飾りの大きさと模様が男の地位を表している。金剛インコを狩るとは自身の社会地位を確保するためです。巣あらし(幼鳥を盗む)がM1では失敗するし続く神話でも必ず失敗します。ハシゴを掛けて子(=M1)あるいは義理の弟を巣に上らせます。子(弟)は「幼鳥は見えない」と偽ったり幼鳥かわりに石を投げつける展開になります。インコを渡さないとは親(義理の兄)の社会地位を否定する、貶める行動です。偽りの報告と幼鳥を掠めるとは自身の地位への挑戦、怒った親はハシゴを外す。ヒーローの苦難の始まりです。これら解説は人物や動物、それらの行動=これが神話素(elements)の属性(proprietes)を特定するに役に立ちます。投稿子はM1で20のelementsを数えました。母(女)、子、近親姦、夫、羽、通過儀礼、鳥の巣あらし…等となります。当然ながらレヴィストロースはelementsとproprietesの対立を念頭にした解説を拡げています。その意味では読みやすい。
レシタティーボに続く第一変奏曲(premiere variation)では神話2(M2)ボロロ族の「水、服装、葬式の起源」が取り上げられます。
金剛インコを狙う猟師。帰巣するインコ、休むインコ、大木の陰で弓を引き絞るボロロの男。(レビストロースの著書から)
神話2要約:昔々、ボロロは二人の酋長(ツガレ部)に統治されていた。その一人バイトゴゴの話。妻が森に入って同じ部(妻の部はセラ)の男(兄弟に遇される)に犯された。母を追っていた子に目撃され、子は父バイトゴゴに伝えた。復讐に弓をとり男に肩、腕、胴…と矢を放し殺害した。その晩、妻を扼殺して死骸を小屋の床下に埋めて出奔した。子は殺されたと知らず母を求め、さまようなか鳥になる。バイトゴゴは放浪するが、森に変身して川と湖を創り(水の起源)村に戻ると決めた。村の統治はもう一人の酋長、彼の兄弟格に託されていた。バイトゴゴの帰還にともない、同じ部から二人の酋長体制に戻った。二人が別の部(セラ部)に向かう時は必ず飾りや楽器などの贈り物を持ち運んだ。最初の訪問では、彼らの父親(=ボロロの婚姻規定では父と子は別の部に属する)は着飾り(飾りの起源)、歌で祝して迎え、飾り物を送った。神話は謎めいた言葉「たくさんの贈り物を持ち込む物は殺されない、少ない贈り物を持ち込む物は殺される」で終わる。
M1と同じく妻、森、子が隠れながら追う、近親姦、夫の復讐殺人で始まります。M1では明確でなかった二の部(ツガレとセラ)の並立が出てきます。贈り物が豪華でなければ殺されるとは不吉な終わり方です。
(ボロロ族の歌2の了10月16日 ボロロ族の歌3は10月20日投稿予定)
レヴィストロースが神話と音楽を結びつけたきっかけが「悲しき熱帯」TristesTropiques に生々しく記載されています。ジャングル、河の氾濫、悪路の立ち往生での数週間をへて、ボロロ族のケジャラ邑落にたどり着いた。程なく日が暮れてレヴィストロース一行は男屋に間借りします。夢うつつで聞こえてくるのは女の泣き、夫5人に次々を先立たれ近隣に食を乞う辛さを「あの頃はマニオック、肉も魚も不足していなかった」落ちぶれた今の様を幾時間も語りに嘆いている。寡婦の夜泣きが終わって、夜も更けて、すると歌が聞こえ始めた。
<Des chants se modulaient au-dehors dans une langue base, sonore et gutturale aux articulations frappes. Les melodies simples et cent fois repetees, oposition entre des solos et des emsenble, le style male et tragique, evoquent les choeurs guerriers de quelque Mannerbund germanique>
訳:外から歌が聞こえた、しわがれの男声は低く調子でよく響く、抑揚をつけ跳ねる言い切り。単純な旋律は幾度も繰り返される。ソロの歌声を合唱が追いかける。男の悲劇を語っているのか、古代ゲルマンの男組Mannerbund戦士の心理が彷彿とする。
伴奏は木管とマラカスのみ、歌が止まる間にはマラカスの切りの良い拍子、音声の沈黙の合間に悪魔の声が聞こえてくるほどとサレジオ会神父の報告もある。毎晩、歌は夜明けまで続く。男達が眠るのは明け方だけだ。歌の内容とは祈りと物語、かく神話は語られ伝播してゆくとレヴィストロースは知った。(悲しき熱帯252頁)
生と調理に戻ります。
神話1(M1)の紹介に続くレシタティーボは11頁、民族誌的にボロロ族を説明している。村落、社会構造、ペニスケースに続いて金剛インコの地位に入ります。尾羽が美しく儀礼では特定の男の頭飾りに供されます。尾羽飾りの大きさと模様が男の地位を表している。金剛インコを狩るとは自身の社会地位を確保するためです。巣あらし(幼鳥を盗む)がM1では失敗するし続く神話でも必ず失敗します。ハシゴを掛けて子(=M1)あるいは義理の弟を巣に上らせます。子(弟)は「幼鳥は見えない」と偽ったり幼鳥かわりに石を投げつける展開になります。インコを渡さないとは親(義理の兄)の社会地位を否定する、貶める行動です。偽りの報告と幼鳥を掠めるとは自身の地位への挑戦、怒った親はハシゴを外す。ヒーローの苦難の始まりです。これら解説は人物や動物、それらの行動=これが神話素(elements)の属性(proprietes)を特定するに役に立ちます。投稿子はM1で20のelementsを数えました。母(女)、子、近親姦、夫、羽、通過儀礼、鳥の巣あらし…等となります。当然ながらレヴィストロースはelementsとproprietesの対立を念頭にした解説を拡げています。その意味では読みやすい。
レシタティーボに続く第一変奏曲(premiere variation)では神話2(M2)ボロロ族の「水、服装、葬式の起源」が取り上げられます。
金剛インコを狙う猟師。帰巣するインコ、休むインコ、大木の陰で弓を引き絞るボロロの男。(レビストロースの著書から)
神話2要約:昔々、ボロロは二人の酋長(ツガレ部)に統治されていた。その一人バイトゴゴの話。妻が森に入って同じ部(妻の部はセラ)の男(兄弟に遇される)に犯された。母を追っていた子に目撃され、子は父バイトゴゴに伝えた。復讐に弓をとり男に肩、腕、胴…と矢を放し殺害した。その晩、妻を扼殺して死骸を小屋の床下に埋めて出奔した。子は殺されたと知らず母を求め、さまようなか鳥になる。バイトゴゴは放浪するが、森に変身して川と湖を創り(水の起源)村に戻ると決めた。村の統治はもう一人の酋長、彼の兄弟格に託されていた。バイトゴゴの帰還にともない、同じ部から二人の酋長体制に戻った。二人が別の部(セラ部)に向かう時は必ず飾りや楽器などの贈り物を持ち運んだ。最初の訪問では、彼らの父親(=ボロロの婚姻規定では父と子は別の部に属する)は着飾り(飾りの起源)、歌で祝して迎え、飾り物を送った。神話は謎めいた言葉「たくさんの贈り物を持ち込む物は殺されない、少ない贈り物を持ち込む物は殺される」で終わる。
M1と同じく妻、森、子が隠れながら追う、近親姦、夫の復讐殺人で始まります。M1では明確でなかった二の部(ツガレとセラ)の並立が出てきます。贈り物が豪華でなければ殺されるとは不吉な終わり方です。
(ボロロ族の歌2の了10月16日 ボロロ族の歌3は10月20日投稿予定)
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