(2024年4月18日)前回4月15日投稿のレヴィストロースの述懐の続き : « Au contraire, le corpus nord-américains apparaît si copieux, complexe, fouillé qu’il eût pu, si j'avais commencé par-là, égaré l'analyse d'un des chemins de traverse. Plus ingrate peut-être, l'enquête sud-américaine a permis de gagner du temps. Mais il m'est souvent arrivé de me demander si, commençant par l'autre côté, le résultat, eût été pareil. Il est probable que Je n'aurais pas choisi le même mythe de référence : les matériaux mis en œuvre par les versions nord-américaines sont si riches si divers que le mythe le ne sort pas du corpus de façon aussi nette. » 北アメリカの神話大系は、反対に、盛りだくさん複雑でありえる限り練り上げている。もし北米から進めていたとしたら、私は南北かけ渡る道に迷っていたことだろう。おそらくより不確かな視界の中、南アメリカの分析には時間を稼げたのだ。いつも思うことなのだが、もし北から始めたとしても結果は同じだろう。基準神話(M1ボロロ族伝承)とは別の神話になっていただろう。一つ言えることは北米神話の素材、仕組みは豊かで多岐にわたる。それ故、神話大系を引き出すに、南米神話で実践したほどには行かなかったろう。
« En revanche, est-il certain que l'Amérique du Sud ayant été peuplée depuis l'Amérique du Nord, les versions du mythe de référence y représentent des formes plus récentes et dégradées. Ce pourrait être le contraire si le même mythe, longuement élaboré et transformé en Amérique du Nord, avait, en Amérique du Sud, mieux préservé sa fraîcheur et sa simplicité première. Dans ce cas, l’ordre choisi correspondrait à l'ordre réel » 一方で南アメリカの民族は北大陸から移住してきたから、そこの神話は最新で原型が崩れているものとなりうるか。実際は反対で、北アメリカ側では永くの伝播から、練られ変形し、南アメリカでは原初の新鮮さ単純さが保たれている。この順列とは実体に向かうということです(裸の男564頁)。
レヴィストロースの南北新大陸伝播への力点を要約する;
1 (距離的に)長く伝播するとは、配役や筋立ての自由選択により内容が換骨奪胎され、笑劇も入り込むなど別物に変わる。似通い事例の繰り返し(feuilleton連載小説)化になりはてる。
2 (距離的に)離れていてもsyntagme/paradigme(=言語学の用語)。そこに位置を置く複数の神話が認められれば、それは群となる。
共時因果・経時因果なる思考が分析、弁証法へと繋がりカントの教える先験となるから人類共通の習いである。南北の部族民が共時因果・経時因果において共通の思考形態を見せることは事実であり、同じ人類なのだから不思議はない。
最後に、南北の伝播を証明するに2の神話を紹介している。
M660 Klikitat族(北米太平洋岸、今のワシントン州に居住);隠された妻
鷲とスカンクは兄弟。鷲が狩りに出ているあいだスカンクは妻を娶った。鷲が戻り獲物を床において寝入った。スカンクは(小屋の)暗がりのなかで妻と喋り込んだ。翌朝、鷲はスカンクに、夜中に誰と喋り、笑っていたのかと問うと « Je ris parce qu’une souris vient me voir, me court sur le visage » ネズミがやってきて顔の上を走ったから笑ったのさ>(裸の男37頁)

スカンク
M95 Tukuna族(南米アマゾニア):Umari木の娘
兄弟Epi(穂)に知らせずにDyaiがびっくりするほど美しい娘を嫁にとった。彼は娘を手に挟んで転がし、小さくして横笛(umari木で出来ている)の中に隠した。4日目の夜、Dyaiは嫁を笛から引き出し己のハンモックに導き、声も立てずに嫁を楽しんだ。5日目の夜、小さな貝を重ねた腕飾りが揺れ音を立てた。クッスと嫁が笑ってしまった。翌朝、誰かが笑ったな、誰と一緒だったのかとEpiが尋ねると « c’est le balai qui rit parce que je l’ai chatouillé » 箒さ、くすぐったら笑ったと答えた。(同)
DyaiはSarigueフクロネズミの擬人化。スカンク(上)と合わせて同氏の著作(生と調理)の挿絵デジカメを貼っておきます。

新大陸神話の北上説 続 了 (4月X日)
« En revanche, est-il certain que l'Amérique du Sud ayant été peuplée depuis l'Amérique du Nord, les versions du mythe de référence y représentent des formes plus récentes et dégradées. Ce pourrait être le contraire si le même mythe, longuement élaboré et transformé en Amérique du Nord, avait, en Amérique du Sud, mieux préservé sa fraîcheur et sa simplicité première. Dans ce cas, l’ordre choisi correspondrait à l'ordre réel » 一方で南アメリカの民族は北大陸から移住してきたから、そこの神話は最新で原型が崩れているものとなりうるか。実際は反対で、北アメリカ側では永くの伝播から、練られ変形し、南アメリカでは原初の新鮮さ単純さが保たれている。この順列とは実体に向かうということです(裸の男564頁)。
レヴィストロースの南北新大陸伝播への力点を要約する;
1 (距離的に)長く伝播するとは、配役や筋立ての自由選択により内容が換骨奪胎され、笑劇も入り込むなど別物に変わる。似通い事例の繰り返し(feuilleton連載小説)化になりはてる。
2 (距離的に)離れていてもsyntagme/paradigme(=言語学の用語)。そこに位置を置く複数の神話が認められれば、それは群となる。
共時因果・経時因果なる思考が分析、弁証法へと繋がりカントの教える先験となるから人類共通の習いである。南北の部族民が共時因果・経時因果において共通の思考形態を見せることは事実であり、同じ人類なのだから不思議はない。
最後に、南北の伝播を証明するに2の神話を紹介している。
M660 Klikitat族(北米太平洋岸、今のワシントン州に居住);隠された妻
鷲とスカンクは兄弟。鷲が狩りに出ているあいだスカンクは妻を娶った。鷲が戻り獲物を床において寝入った。スカンクは(小屋の)暗がりのなかで妻と喋り込んだ。翌朝、鷲はスカンクに、夜中に誰と喋り、笑っていたのかと問うと « Je ris parce qu’une souris vient me voir, me court sur le visage » ネズミがやってきて顔の上を走ったから笑ったのさ>(裸の男37頁)

スカンク
M95 Tukuna族(南米アマゾニア):Umari木の娘
兄弟Epi(穂)に知らせずにDyaiがびっくりするほど美しい娘を嫁にとった。彼は娘を手に挟んで転がし、小さくして横笛(umari木で出来ている)の中に隠した。4日目の夜、Dyaiは嫁を笛から引き出し己のハンモックに導き、声も立てずに嫁を楽しんだ。5日目の夜、小さな貝を重ねた腕飾りが揺れ音を立てた。クッスと嫁が笑ってしまった。翌朝、誰かが笑ったな、誰と一緒だったのかとEpiが尋ねると « c’est le balai qui rit parce que je l’ai chatouillé » 箒さ、くすぐったら笑ったと答えた。(同)
DyaiはSarigueフクロネズミの擬人化。スカンク(上)と合わせて同氏の著作(生と調理)の挿絵デジカメを貼っておきます。

新大陸神話の北上説 続 了 (4月X日)
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