四季草花図小柄 後藤光房


① 四季草花図小柄 銘 後藤光房(花押)



② 秋草に虫図三所物 無銘美濃後藤
草花の選択に新趣を示した作。桔梗や女郎花は桃山時代以前から題として良く採られているが、江戸時代も中頃になると、様々な植物が古典的な秋草と組み合わされるようになる。Photo①の作者は、後藤勘兵衛家三代光房(みつふさ)。宝永六年に四十四歳で没していることから、活躍は元禄頃。この小柄では、桔梗と女郎花に水仙(冬)、わすれなぐさ(春)、百合(夏)といったそれぞれの季節の花が採られており、美濃彫様式の意匠とは異なり、生け花の素材のように一枝切り置いた構成。高彫の量感が少ない割りに彫り際の描写が優れ、立体感に富んだ写実的表現。大輪の百合は華やかで、水仙は清楚、愛らしいわすれなぐさと、いずれも特徴を良く捉えている。桃山時代以前の作品に見られる桔梗と比較すると、その違いが歴然。妖艶な風合いが魅力である。
Photo②は江戸時代中頃の美濃後藤と極められる秋草図三所物。美濃後藤とは、後藤の流れを汲み、しかも美濃彫様式を専らとする工のこと。光曉、光政などに「後藤光曉」などと後藤姓を刻した作があることから、これらの工を美濃後藤と呼び慣わしている。多くは無銘で、赤銅魚子地に秋草などの図を高彫し、金銀素銅の色絵を施した作が多く、美濃に極められたものの中で後藤風の貫禄がある作品がこれに当ると理解すれば良い。この三所物も美濃様式の構成で、秋草の下に虫を描く図は美濃鐔極めの作例に良く似ている。秋草の配置に抑揚があり、画面全体に濃密に施している古風な文様とは様子が異なり、新趣の風景観が顕著である。高彫表現になる図柄の際の立ち上がりなどは時代の上がる美濃に比して穏やか。目貫も画面から溢れんばかりに構成しており、抜け穴はない。表の鑑賞では量感があるも、裏行の観察では地造りが肉厚く、際端の返しもさほどなく、古美濃とは風合いが明らかに異なる。
作品の表面が綺麗に揃った点の連続であるため、モニターによってはモアレが生じて見難くなる場合があります。ご容赦下さい。


① 四季草花図小柄 銘 後藤光房(花押)



② 秋草に虫図三所物 無銘美濃後藤
草花の選択に新趣を示した作。桔梗や女郎花は桃山時代以前から題として良く採られているが、江戸時代も中頃になると、様々な植物が古典的な秋草と組み合わされるようになる。Photo①の作者は、後藤勘兵衛家三代光房(みつふさ)。宝永六年に四十四歳で没していることから、活躍は元禄頃。この小柄では、桔梗と女郎花に水仙(冬)、わすれなぐさ(春)、百合(夏)といったそれぞれの季節の花が採られており、美濃彫様式の意匠とは異なり、生け花の素材のように一枝切り置いた構成。高彫の量感が少ない割りに彫り際の描写が優れ、立体感に富んだ写実的表現。大輪の百合は華やかで、水仙は清楚、愛らしいわすれなぐさと、いずれも特徴を良く捉えている。桃山時代以前の作品に見られる桔梗と比較すると、その違いが歴然。妖艶な風合いが魅力である。
Photo②は江戸時代中頃の美濃後藤と極められる秋草図三所物。美濃後藤とは、後藤の流れを汲み、しかも美濃彫様式を専らとする工のこと。光曉、光政などに「後藤光曉」などと後藤姓を刻した作があることから、これらの工を美濃後藤と呼び慣わしている。多くは無銘で、赤銅魚子地に秋草などの図を高彫し、金銀素銅の色絵を施した作が多く、美濃に極められたものの中で後藤風の貫禄がある作品がこれに当ると理解すれば良い。この三所物も美濃様式の構成で、秋草の下に虫を描く図は美濃鐔極めの作例に良く似ている。秋草の配置に抑揚があり、画面全体に濃密に施している古風な文様とは様子が異なり、新趣の風景観が顕著である。高彫表現になる図柄の際の立ち上がりなどは時代の上がる美濃に比して穏やか。目貫も画面から溢れんばかりに構成しており、抜け穴はない。表の鑑賞では量感があるも、裏行の観察では地造りが肉厚く、際端の返しもさほどなく、古美濃とは風合いが明らかに異なる。
作品の表面が綺麗に揃った点の連続であるため、モニターによってはモアレが生じて見難くなる場合があります。ご容赦下さい。