秋草図鐔 加賀後藤


① 秋草図鐔 無銘加賀後藤

② 枝菊図鐔 無銘美濃

③ 秋草花車図鐔 無銘美濃
Photo①は、背景に潜む重厚美から江戸時代の美濃後藤の作とみたが、華やかさが決め手とされたものであろう加賀後藤と極められた江戸時代後期の鐔。耳側から秋草が生えているかのような構成は、先に紹介した作例にもあるように、江戸時代の美濃彫様式の鐔には間々見られる。この鐔は恰も野にあるように感じられるも、下端に束ねた様子を描き添えて花束を印象付けているところが印象深く、新趣が感じられる。そして見どころは耳の表現である。
鐔の耳は、拵を腰に差した状態では最も目につく部分であるが、装飾性が求められていない場合が多い。機能的な面や美観から金覆輪が掛けられた例もあるが、本来の覆輪は次第に装飾となり、色絵式の覆輪、耳への高彫金色絵、鐔面の図と連続させた装飾、表裏への図の連続の一部、文様として表裏を分けるための装飾などが多くなる。
Photo②とPhoto③はいずれも江戸時代中期から後期にかけての美濃様式の意匠とした鐔。②は耳際を二重に構成し、耳の周囲には桐紋を散らして装飾としている。図柄は枝菊を全面に散らし配しており、清楚に花作様子が表現されている。古典的な菊の花の表現に加え、花弁が八重に組み合わされている新趣の菊花も配されており、ここに時代観がある。③は秋草を花車の生け花とした図柄。土手耳構造(幅を設けた肉厚の耳)とした耳には這龍文が構成されている。美濃様式の金工作品には古くから龍の図も多く、美濃龍と汎称されている。秋草とは無関係ながら、美濃様式を伝えていることの証しとして用いたのであろうか、豪華でもある。花束のような構成と共に、生け花の構成も比較的多い。
①を再度鑑賞しよう。図柄構成に洗練味がある。琳派の美観が流行した江戸時代中頃以降、多くの金工もこの影響を受けたが、ここでは自然を美しく表現するのではなく、明らかに鐔という空間を構成するために秋草を用いているのである。耳を這う菊と萩の葉、鐔面になだれ込むように花が構成され、露を光らせる薄の葉は野の景観。鐔の中心に流れ込むような葉の円弧の美観が要点と言えよう。色違いの金、銀、金と銀を混ぜ込んだ金など、多彩な色金の組み合わせになる美観も新しい。
鐔の表面が綺麗に揃った微細な点の連続であるため、モアレが生じて見難くなる場合があります。ご容赦下さい。



① 秋草図鐔 無銘加賀後藤

② 枝菊図鐔 無銘美濃

③ 秋草花車図鐔 無銘美濃
Photo①は、背景に潜む重厚美から江戸時代の美濃後藤の作とみたが、華やかさが決め手とされたものであろう加賀後藤と極められた江戸時代後期の鐔。耳側から秋草が生えているかのような構成は、先に紹介した作例にもあるように、江戸時代の美濃彫様式の鐔には間々見られる。この鐔は恰も野にあるように感じられるも、下端に束ねた様子を描き添えて花束を印象付けているところが印象深く、新趣が感じられる。そして見どころは耳の表現である。
鐔の耳は、拵を腰に差した状態では最も目につく部分であるが、装飾性が求められていない場合が多い。機能的な面や美観から金覆輪が掛けられた例もあるが、本来の覆輪は次第に装飾となり、色絵式の覆輪、耳への高彫金色絵、鐔面の図と連続させた装飾、表裏への図の連続の一部、文様として表裏を分けるための装飾などが多くなる。
Photo②とPhoto③はいずれも江戸時代中期から後期にかけての美濃様式の意匠とした鐔。②は耳際を二重に構成し、耳の周囲には桐紋を散らして装飾としている。図柄は枝菊を全面に散らし配しており、清楚に花作様子が表現されている。古典的な菊の花の表現に加え、花弁が八重に組み合わされている新趣の菊花も配されており、ここに時代観がある。③は秋草を花車の生け花とした図柄。土手耳構造(幅を設けた肉厚の耳)とした耳には這龍文が構成されている。美濃様式の金工作品には古くから龍の図も多く、美濃龍と汎称されている。秋草とは無関係ながら、美濃様式を伝えていることの証しとして用いたのであろうか、豪華でもある。花束のような構成と共に、生け花の構成も比較的多い。
①を再度鑑賞しよう。図柄構成に洗練味がある。琳派の美観が流行した江戸時代中頃以降、多くの金工もこの影響を受けたが、ここでは自然を美しく表現するのではなく、明らかに鐔という空間を構成するために秋草を用いているのである。耳を這う菊と萩の葉、鐔面になだれ込むように花が構成され、露を光らせる薄の葉は野の景観。鐔の中心に流れ込むような葉の円弧の美観が要点と言えよう。色違いの金、銀、金と銀を混ぜ込んだ金など、多彩な色金の組み合わせになる美観も新しい。
鐔の表面が綺麗に揃った微細な点の連続であるため、モアレが生じて見難くなる場合があります。ご容赦下さい。