秋草図鐔 光中・夏雄

① 秋草図鐔 銘 大泉詰然居光中(花押)

② 田舎家春秋図鐔 銘 甲子仲夏於東都造夏雄(花押)
加賀象嵌の表現手法は、各地の金工が倣っている。Photo①は、以前にも紹介したことがあるのだが、出羽国大泉の金工で鷲田派の光中(みつなか:1830~1889)。朧銀地を平滑な撫角形に造り込んで微細な石目地に仕上げ、耳を金の色絵覆輪として一幅の墨絵を想わせる構成。地金の色も古紙をイメージしたものか、その沈んだ色調の中に金、銀、朧銀などの平象嵌による秋草が、しっとりと浮かび上がる表現。この鐔での草花は、萩、薄、桔梗、女郎花の古典的な植物に加え、花独活(はなうど)であろうか芹科の植物、紫露草(むらさきつゆくさ)。この花独活と紫露草が新しいことと、銀と朧銀の合金の配合を微妙に違え、多彩な金と同様に色彩の変化を追求している点に注目したい。
Photo②も、かつて紹介したことのある加納夏雄(なつお1828~1898)の田舎家春秋図鐔。早春の田舎家は鉄地高彫表現だが、生い茂る秋草の場面は明るい朧銀地を微細な石目地に仕上げ、金銀、その微妙にグラデーションのついた金銀を平象嵌し、繊細な片切彫と切り込みを加えてむせかえるような初秋の野の様子を表現している。田舎家は鄙びた風景、秋草には琳派の美意識を下地に鮮烈な美観を投影し、その対比の妙を見せている。夏雄も光中と同時代を生きた金工で、元治元年の作品である。


① 秋草図鐔 銘 大泉詰然居光中(花押)


② 田舎家春秋図鐔 銘 甲子仲夏於東都造夏雄(花押)
加賀象嵌の表現手法は、各地の金工が倣っている。Photo①は、以前にも紹介したことがあるのだが、出羽国大泉の金工で鷲田派の光中(みつなか:1830~1889)。朧銀地を平滑な撫角形に造り込んで微細な石目地に仕上げ、耳を金の色絵覆輪として一幅の墨絵を想わせる構成。地金の色も古紙をイメージしたものか、その沈んだ色調の中に金、銀、朧銀などの平象嵌による秋草が、しっとりと浮かび上がる表現。この鐔での草花は、萩、薄、桔梗、女郎花の古典的な植物に加え、花独活(はなうど)であろうか芹科の植物、紫露草(むらさきつゆくさ)。この花独活と紫露草が新しいことと、銀と朧銀の合金の配合を微妙に違え、多彩な金と同様に色彩の変化を追求している点に注目したい。
Photo②も、かつて紹介したことのある加納夏雄(なつお1828~1898)の田舎家春秋図鐔。早春の田舎家は鉄地高彫表現だが、生い茂る秋草の場面は明るい朧銀地を微細な石目地に仕上げ、金銀、その微妙にグラデーションのついた金銀を平象嵌し、繊細な片切彫と切り込みを加えてむせかえるような初秋の野の様子を表現している。田舎家は鄙びた風景、秋草には琳派の美意識を下地に鮮烈な美観を投影し、その対比の妙を見せている。夏雄も光中と同時代を生きた金工で、元治元年の作品である。