訳せない日本語 大來尚順 著 アルファポリス
作者は、僧侶である傍ら、日本語と英語を使い、主に仏教関係の通訳や翻訳の仕事に携われている方だそうで、普段、何気ない日本語を英訳するに当たって、英訳してもしっくりこない、日本語のニュアンスを伝えきれない言葉があるということ、その訳せない日本語の中にこそ、他の国や文化にはない日本独特の奥深さが宿っているということに気が付かれたそうです。この本では、24の日本語の言葉を取り上げて、その言葉に宿る、日本人特有の文化と日本人の心を紹介しています。その24の言葉は、いただきます、ごちそうさまでした、いってきます、おかえり、よろしくお願いします、お疲れさま、失礼します、すみません、しょうがない、せっかく、大丈夫、どっこいしょ、ご縁、つまらないものですけど、もったいない、こつこつ、おかげさまで、微妙、合掌、さりげない、風情がある、敷居が高い、おもてなし、気が利くの言葉がそれぞれ説明されていました。どの言葉もいろいろな場面でよく使う言葉で、仏教用語と関係づけて日本人の文化について説明されている本でもありました。「いってきます」「おかえり」のことが書かれていたのが一番印象に残りました。「いってきます」と「いってらっしゃい」も「ただいま」と「おかえり」も、無事であるようにと願う、再会を願う温かい気持ちが込められていると説かれてました。これは仏教の根本思想である、縁起と諸行無常の思想が反映されているということで、西洋にはない日本独自の精神文化ですと記載されていました。なにげなくいつも話している言葉の中に、こういう深い意味が含まれているのを読むと日本語が持つ奥深さを再認識できました。