煙突も暖炉もないのにサンタはどこから入ってくるのだろう?寝る前に鍵のネジをゆるめ布団かぶったら瞬く間に朝が来て枕元に手を伸ばしプレゼントを探したものだ。半世紀以上前のクリスマスだからやむを得ないが、日本中貧しく我が家も裕福には程遠かった。殆ど毎年、包み直した新品の洋服や下着類が置かれていた。
急かされ布団に入るも寝付かれなかったあるクリスマスの夜、初めてサンタを目撃した。赤い帽子と白い髭、我が家にもやってきた!と興奮のあまり震えが止まらなかった。プレゼントは当時人気の玩具「鉄人28号」、翌日近所の仲間を集めて自慢したものだ。その内に飽きて、隣の年下の子が欲しと言うことで気前よく上げることにした。
小学生になって兄からサンタはお父さんだと聞かされが、あの日見たサンタは絶対に本物だと反論した。街角でサンタを見掛けると「鉄人28号」と重なって懐かしさが込み上げてくる。親となりプレゼントは貰うより上げる方が何倍も嬉しいと知った。それからはクリスマスのイルミネーションや曲を聴くだけ心躍るようになっていた。