離島を除けば全国で最も人口が少ない高知県大川村(約400人)が、地方自治法に基づき村議会を廃止し、約350人の有権者が直接、予算などの議案を審議する「町村総会」を設置する検討を始めた。四国山地にある村を訪ねると、過疎化と高齢化で議員の担い手が足りなくなる現実が浮かんだ。人口減少の最先端で迫られた「直接民主主義」の動きを追った。【和田浩幸】
「議員が集まらない危機感を感じちょる。議会や村民の反応を見て判断したい」。大川村の和田知士(かずひと)村長(57)は4月25日夜、隣町での会合後の帰りの車内で朝倉慧(あきら)議長(77)に総会設置に向けた揺れる思いを打ち明けた。村は1960年に約4100人が暮らしていたが、現在の人口は10分の1に減り、65歳以上の高齢者が45%弱を占める。
村議選は99年以降の5回で3回無投票だった。2003年に定数を10から8に減らしたが立候補者が7人しか現れず、欠員1で選挙が確定する「欠員無投票」に。その後に定数は6となり、直近の15年はその前の11年と同じ顔ぶれの6人が無投票で当選した。周囲の説得で03年に初当選した伊東喜代澄(きよずみ)村議(77)は最近、知人に「高齢者ばかりなので頼む」と2年後の村議選への立候補を打診したが「ようやらん」と断られた。新人発掘は難航している。
公職選挙法は議員選の欠員が6分の1を超えた場合、補充の再選挙を義務づけている。大川村では2年後の村議選で立候補者が5人そろわなければ直ちに再選挙となり、村政が暗礁に乗り上げかねない。地方自治法は町村が議会の代わりに有権者の総会を設けることを認めており、和田村長は4月上旬、最悪の事態に備え、総会設置の検討に入るよう役場幹部に指示した。
実現すれば離島以外では初となる。和田村長は「議会は重要だが、『もしもの時』に備えて消極的な選択肢を用意せざるを得ない」と語った。6月の定例議会で正式表明し、年明けに課題を住民に周知する。その後に村議選の立候補の動きが広がらなければ、条例作りに着手する方針だ。
■ことば
町村総会
地方自治法は「普通地方公共団体に議会を置く」と定める一方、町村については議会の代わりに「選挙権を有する者の総会」を置けると規定している。運営は議会規定を準用するとされ、具体的には町村が条例で定める。過去には戦後の短期間、東京・八丈小島の旧宇津木村(現八丈町)で実施された1例のみで、記録はほとんど残っていない。戦前の町村制度では1890年ごろから1945年ごろまで神奈川県の旧芦之湯村(現箱根町)が公民総会を置いた例がある。
議会に代わり、有権者が「直接民主主義」を担うことは可能なのか--。そんな議論が浮上した高知県大川村は高知市から車で約2時間。標高1000メートル以上の山々の斜面に16の集落が点在している。1971年に「四国の水がめ」と言われる早明浦(さめうら)ダムの建設に伴い、中心集落が水没。翌年には160年あまりの歴史がある主要産業の白滝鉱山が閉山したため、人口が急減した。
村は2003年、合併特例法に基づく周辺2町との法定合併協議会設置の是非を問う住民投票を実施し、賛成が多数を占めた。しかし同時に住民投票を実施した土佐町で反対が上回り、合併構想は頓挫した。
現在の6人の村議の平均年齢は70・8歳。半数の3人は75歳以上の後期高齢者だ。毎日新聞が6人全員に2年後の選挙への対応を聞いたところ、複数の村議が体力の問題などから今期限りで引退したい意向を示した。村議らは人脈をたどって若手の起用を模索しているが、「今のところ新人が出る気配がない」(村議の一人)という。
有権者は約350人。選挙に立候補できない公務員らを除く25歳以上65歳未満は100人程度で、議員の担い手は限られる。村づくりに積極的な若者も多いものの、人口減のため青年団や消防団、祭りの実行委員などの掛け持ちが増えたことに加え、月額報酬約15万円で引退後の保障もない議員活動に手を挙げる人はほとんどいない。
村の青年団長で社会福祉協議会職員の筒井渉さん(25)は「村をなんとか盛り上げたいが、仕事や生活を考えると議員は難しい」と町村総会の設置に理解を示す。
実は村議会では13年と14年にも町村総会への移行が検討された。しかし村議からは「入院や介護施設に入所する高齢者が多く、総会に出席するための交通手段の確保が難しい」「有権者が一堂に会すること自体できない」などの疑問が出て立ち消えとなった。
通算8期の村議時代に全国町村議会議長会会長を務め、元村長でもある合田司郎さん(85)は「国は地方創生を掲げるが、大川村は全国の地方の縮図だ。若者が離れ、政治への無関心が広がる悪循環は何も変わっていない」と町村総会への移行に疑問を示す。
村関係者によると、村外で入院や入所している高齢者は50人前後に上るとみられる。村内を東西に貫く県道を走る路線バスは1日3往復しかなく、県道沿いの停留所まで徒歩で30分以上かかる世帯もある。70代の農業男性は「車を運転できるうちはいいが、できなくなったらどうにもならん」と語り、自らも村政を担う事態を不安視する。
村議会を通じた代議制から直接民主制への移行に向け、村民レベルの議論はこれからだ。13年、町村総会を検討する必要性を村で最初に提案した朝倉慧(あきら)議長は「村民が村の危機を共有できるよう、周知することが課題だ」と指摘。議会の見解を取りまとめるよう、近く議会運営委員会に諮問する考えだ。
直接民主制 前例少なく課題山積
町村総会を設置するには、自治体が具体的な運営方法を定めた条例を制定しなければならない。過去には、現在は無人島となった東京・八丈小島の旧宇津木村(当時の人口約60人)で1951年から4年間実施された例しかなく、大川村が条例作りを決断した場合、難航も予想される。
旧宇津木村を研究した名古屋学院大の榎澤(えのさわ)幸広准教授(憲法学)によると、当時の条例や会議規則は現存しない。総会の会長を務めた男性(故人)に2010年に実施した聞き取り調査では、総会は村長を含む有権者で構成し、年2回ほど、村の小学校を会場に約1時間開いていたという。議会の規定に準じれば定足数は半数以上だが、参加者がそれに満たなくても開催され、報酬が支払われることもあった。
榎澤准教授は「人口が極端に少なく若い世代が中心の旧宇津木村と、高齢化が進む大川村では根本的に事情が異なる。大川村では総会の参加者の確保が課題になるだろう」と語る。
国民が政策決定に直接関与する直接民主制はスイスの一部で実施。同国のアッペンツェル・インナーローデン準州では年1回広場に数千人の有権者が集まり、知事の選出や州法改正などについて自由に発言し、挙手で表決している。
今の日本で町村総会は実現できるのか。00年に論文「町村総会に関する法制度設計試論」を発表した九州大法学研究院の田中孝男教授(行政法)は、議会が処理する議案全てを町村総会で処理するのは困難と指摘。条例や予算など重要案件以外は一部の住民で作る「総会運営委員会」の審査を条件に、首長の専決処分に委ねることを提案している。
全国町村議会議長会によると16年7月現在、全国最少の議員定数は沖縄県北大東村の5。定数6は大川村など11町村ある。15年4月の参院総務委員会では高市早苗総務相が「人口が著しく減少した地方自治体の選択肢として、町村総会の意義が見直されることもあり得る」と発言した。
長野県王滝村では05年、田中教授の論文をベースにした条例案が議員提案され、否決された。田中教授は「大川村の検討が本格化した場合、県や総務省、学者が知恵袋となって支える必要がある」と指摘。人口減少社会に詳しい増田寛也元総務相も「全員参加で地域課題を考えたほうが当事者意識も出てくる。こうした動きが全国に広がる可能性がある」と語った。【和田浩幸】
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