薬害肝炎訴訟 和解の展望見えず
与党からも手法に批判
薬害C型肝炎訴訟の和解協議は20日、政府の修正案の受け入れを原告団が拒否し、物別れの方向となった。
政府は譲歩して修正案をまとめたものの、原告団は一歩も引かなかった。政府・与党内には、調整役としての舛添厚生労働相を批判する声も出ている。
舛添氏は20日夕、政府の修正案について、記者団に「これが政治決断の案だ。ベストを尽くした」と強調した。この修正案は、舛添氏が19日夕、福田首相との直談判でほぼ固まっていた。
「閣僚の職を賭(と)す覚悟で調整をやってきた。修正案を了承してほしい」
首相官邸で舛添氏は首相にこう迫り、修正案の取りまとめの了承を取り付けた。
周辺によると、首相側は、舛添氏に対し、「官邸の裏口から出入りしてほしい」と求めた。舛添氏が報道陣に「職を賭す」と明言すれば、辞任論が独り 歩きしかねないと警戒していたとみられる。今回の修正案のポイントは〈1〉原告側が求めていた約150億円の和解金総額を上回る約170億円を提示〈2〉 全員に和解金が支払われる事実上の全員救済――だ。
原告団が主張する一律救済については、厚労省の事務方や法務省などが「大阪高裁の和解骨子案を超えている」と主張し、舛添氏も断念せざるをえなかった。ただ、和解金の大幅な積み増しについては、舛添氏が省庁の抵抗を押し切った。
舛添氏は翌20日午前、修正案を発表した。だが、わずか数分後、原告団が記者会見で受け入れ拒否を表明した。受け入れに自信を見せていた舛添氏は 周辺に「(原告団は)私がまとめた案を理解していないのではないか。裁判で勝ってもこれほどの内容にはならない」と不満を漏らした。
政府・与党内では、今回まとまらなかった理由として、原告団の姿勢に加え、舛添氏の調整手腕を指摘する声がある。
舛添氏は早い段階から「(原告団の)みんなを救う」と明言し、原告団内に「政府は譲歩する」との期待感を持たせたとみられる。さらに、与党にも 「肝炎問題は私に任せてほしい」と伝えるなど、「スタンドプレーを選んだ」(自民党議員)と受け止められている。舛添氏は20日、「もっと努力を続けて、 問題解決に全力を尽くしたい」と語ったが、展望は見えていない。
首相「心からおわび」
福田首相は20日夜、薬害C型肝炎集団訴訟に関し、「薬害が発生してしまったことについて、被害者の方々に本当に申し訳ないと思っている。心から おわびしたい。長い間、大変ご苦労された方々に対し、本当におわびの言葉もない思いだ」と述べ、謝罪した。原告側による国の修正案拒否については「大阪高 裁でどう受け止め、原告の方々と話し合いをしてくれるかだ」と語った。高裁の判断次第で、国としても一層の譲歩を行うことを示唆したものだ。
「命返して」57歳女性、告発のビデオ残す 薬害肝炎
2007年12月21日07時13分
「命を返してください」――。肝炎ウイルスに汚染された血液製剤を投与され、肝臓がんのため57歳で逝った女性が、国や製薬会社を病床から告発する「遺 言」をビデオ映像に残していた。薬害C型肝炎訴訟の東京原告13番。国が和解修正案を大阪高裁に提出した20日、闘いを引き継ぐ妹が、姉の思いを訴えた。
「この薬のために、いったい何人が亡くなったのか。線引きなど許されるわけがありません」
泉祐子さん(59)=東京都大田区=は、同日の記者会見で、原告患者らとともに訴えた。
03年6月1日、静岡の県立病院。病室のベッドに腰かけた玲子さんは息も絶え絶えに、やせ細った体で声を振り絞った。「体がついていきません。裁判を早 く終わらせてください。国は人の命の重さを見つめてください」「こんなふうになりたくなかった。平凡でいいから、これからも生活したかった」
温厚な姉が怒りを吐き出す姿に、祐子さんは驚いた。血液製剤「フィブリノゲン」の投与で感染、集団訴訟に加わった。東京地裁の出張尋問を病室で受けるのを前に、ビデオを回した。
7分7秒。玲子さんの一礼で映像は終わる。この11日後、息をひきとった。
今秋、厚労省が5年間放置していた薬害肝炎患者「418人リスト」に含まれていることがわかった。20日発表された国の修正案では、84年に投与された玲子さんは、「直接救済」の対象にならない。
祐子さんは、実家にある玲子さんの遺骨を、和解を機に墓に納めるつもりでいた。だが、その日は遠のいた。「救済」の日が来ると信じ、闘い続けるつもりだ。
薬害肝炎 一律救済へ
首相「議員立法で」…今国会で成立図る
福田首相は23日午前、薬害C型肝炎集団訴訟で原告の求める一律救済に応じるため、血液製剤の投与時期にかかわらず補償金を支払うための救済法案を議員立法で今国会に提出し、成立を目指す方針を表明した。
原告「大きな一歩」
首相官邸で記者団に語った。20日に国が示した和解修正案では、投与時期によって国の責任の有無を判断し、補償内容を区別していたが、方針を転換した。原告・弁護団は「大きな一歩だと評価する」としており、2002年から続く同訴訟は全面解決に向けて大きく前進した。
◆投与時期問わず
首相の指示を受け、与党は25日に、政調会長らが協議する。年内に法案骨子をまとめ、野党に提示し共同提出を呼び掛けることにしている。野党も基本的に応じる方針だ。
首相は「一昨日(21日)、自民党に『議員立法で対応できないか』と相談を始め、全員一律救済する議員立法をすると決めた」と述べた。1月15日までの臨時国会に提出する考えを示したうえで、「法案作成に参加していただくことがあってもいい」と野党の協力を求めた。
国の責任については、「(薬の)許認可権を持つ行政の責任は免れない」との立場を改めて示した。方針転換の理由は、「司法・行政の枠内で、(解決)できないとなり、新しい局面を考えなければ打開できないと考えた」と説明した。
原告・弁護団は一律救済の新方針について、「いよいよ政治が大きく動き始めた。大きな一歩だと評価する」などとする声明を発表し、首相が早急に面 談に応じることを求めた。原告代表の山口美智子さん(51)は福岡市で記者会見し、「政治の力で正義が実現されることを期待している。だが、何度も政治に ほんろうされてきたので、不安の方が大きい」と述べた。
法案は、血液製剤「フィブリノゲン」などで肝炎になったすべての被害者に対し、投与時期に関係なく、症状に応じた補償金を支払う内容だ。対象となる被害者は、「カルテなどの客観的資料」に基づき、専門家による第三者機関などで認定する案が出ている。
補償金の額はこれまでの和解交渉を踏まえ、平均2000万円程度になる見通しだ。対象となる被害者は、原告側は1000人程度と主張している。この場合、補償総額は約200億円になるが、国側は「被害者がさらに増える可能性もある」と見ている。
原告側には「全面解決のためには、国が投与時期にかかわらず、薬害を防げなかった責任を認めることが必要だ」という声がある。国側は、東京地裁判 決が認めた投与時期(1985年8月~88年6月)以外は法的な責任は認めない方針だが、原告側に配慮するため、法律前文で「解決が遅れた責任」などに触 れる案も出ている。
舛添厚生労働相は23日、都内で記者団に対し、議員立法の最大の焦点となる、国の責任の認定について、「どういう形の責任にするのか、法的、政治的、道義的な問題があるので、与党にしっかり議論していただく」と述べ、与党の検討に委ねたいとの考えを示した。
同訴訟では、大阪高裁が13日、投与時期によって救済内容を区別する和解骨子案を提示。国は20日、東京地裁判決の期間外の患者への「訴訟活動・ 支援に基づく和解金」を大幅増額することで全員を救済する修正案を示した。しかし、原告側が拒否し、大阪高裁は近く第2次和解骨子案を示すことになってい る。
政府・与党の救済策の基本方針
▽行政・司法の枠を超え、血液製剤の投与時期を問わず、症状に応じて一律の金額を補償
▽投与を証明し、薬害被害者として認定するための第三者機関の設置を検討
▽薬害の解決が遅れたことへの国の責任に言及し、被害者の苦痛へのおわびを表明
▽薬害の再発防止に最善の努力をし、医薬品の副作用に関する情報公開などを推進
薬害肝炎、「国の責任」調整難航か…政府・与党
原告との協議期待
自民、公明両党は25日から、福田首相の指示を受け、薬害C型肝炎訴訟の被害者らの一律救済法案の策定を本格化させる。焦点は、法案でどのように「国の責任」に言及するかに絞られてきた。
政府・与党は「薬害解決を遅らせた責任」など、薬害の「結果責任」を明記する方針だが、原告・弁護団側は「薬害被害を発生させた責任」の明記を求めており、調整は難航も予想される。政府・与党は今後、原告側と直接協議を進めることで、理解を得たい考えだ。
自民党の谷垣政調会長と与謝野馨前官房長官らは24日、都内ホテルで会談し、救済法案について協議した。国の責任の表記の方法などを議論したものと見られるが、結論は持ち越した。
与謝野氏は、今回の議員立法による一律救済の方法について首相に助言し、解決案を発案した一人だ。今後も法案策定にかかわっていくものと見られる。
自民党は25日以降、公明党と協議を進めるほか、原告・弁護団とも面会する方向で、年内の法案骨子とりまとめに向け、国の責任の記述をめぐる「着地点」を探る。骨子がまとまり次第、民主党など野党との協議も行う考えだ。
原告・弁護団が24日に都内で開いた会議では、出席した弁護士から「(結果責任の明記だけでは)被害者の一律救済の法的根拠になりえないのではな いか」との意見が出た。また、原告・弁護団は「薬害を発生させた責任を認めない限り、薬害は根絶されず、再び繰り返される」と主張している。
背景には、政府に対する根強い不信感がある。この点について、政府・与党は福田首相がすでに「一律救済」を明言している点を原告側に説明し、「結果責任」を明記すれば、被害者約1000人の一律救済は可能だ、と理解を求める方針だ。
責任を認める方法について、舛添厚生労働相は24日の記者会見で「基本的合意とか、政府声明とか手法はいろいろある」と述べた。
政府・与党側が「結果責任」にこだわるのは、「国民病」とも言われるB、C型肝炎の感染者が国内に約350万人もいるためだ。薬害の「発生」段階から国が責任を認めると、「補償の対象が際限なく広がり、巨額の補償となる恐れがある」(厚生労働省幹部)との警戒感がある。
ただ、公明党幹部の一人は同日、「原告側が求めるなら、発生責任に言及すればいい」と述べ、変更による問題はなく、受け入れの余地はあるとの認識を示した。
救済法案に関連し、福田首相は24日、厚労相に「議員立法は立法府の仕事だが、政府・与党がきちんと協力してやらないといけない」として、政府側も与党の法案の取りまとめに協力するよう指示した。
◇名張在住の女性訴え「国はこの思い受け止めて」
原告団が国に対して被害者の一律救済を求めている薬害C型肝炎訴訟。名張市在住 の女性(71)は、輸血が原因でC型肝炎に感染した。病気への恐怖とともに、感染に対する「誤解」などで約40年間も苦しんできた。女性は「患者を代表し て頑張る原告の方々にありがとうと言いたい。国は原告の思いを受け止めてほしい」と訴えた。【金森崇之】
女性がC型肝炎に感染したのは 67年、長男の出産時に800CCの輸血を受けたとき。当時、女性は大阪市内の病院で看護師をしていたが、「痛みに耐えるのに必死で、血液製剤を投与され たかどうか分からない」と言う。だが「薬害ではなくても、自分も経験を話すことは出来る」。実名を公表し訴える原告らの姿を見て、そう決意した。
感染当時、女性は恥ずかしいことだと思い、周囲にも約10年間隠し続けた。長男に母乳を与えることも出来ず、出産後に約5カ月間入院した時には、夫に毎日手紙を書き、「離婚してほしい」と伝えたこともあった。
当時、C型肝炎はエイズウイルス(HIV)と同様に感染ルートに対する誤解があった、という。看護師であるこの女性でさえ「誤解」に悩み、自分の食器を家 族とは別に洗い、風呂も自分の後には誰も入らせなかった。夫婦生活のことも医師に相談した。「誰かに感染させたら申し訳ない」。常に不安を抱えながら生き てきた。
看護師をしていた時、C型肝炎から肝硬変などに進行し、亡くなる患者を何人も見てきた。そのたびに、「私も死ぬかも知れない」と いう恐怖が襲ってきた。だが、「夫や周囲の人が支えてくれて精神的に立ち直れた」と女性は振り返る。年に3回の検査を欠かさず、肝硬変や肝臓ガンは発症し ていない。
今年6月、常に支えてくれた夫をガンで亡くした。それ以来、女性は毎日日記を書き続けている。「お父さんと会話しているような気持ちで書いているんです」。涙を浮かべながらページをめくる日記には、日々の出来事や薬害訴訟の原告団に対する思いがつづられていた。
女性はテレビに映る原告団の暗い表情が悲しいという。
「元気を出してほしい。肝炎でもすぐに死ぬわけじゃない。私は90歳まで生きると医者に言われてますよ」
話す表情は笑顔だった。〔伊賀版〕
【過去記事】保守記事.257 まだ、おわってない!
保守記事.257-2 人の命の重さ
保守記事.257-3 調べる気、あるの?
保守記事.257-4 調べる気、ないじゃん
保守記事.257-5 話題にならなきゃ、誰も動かん。。。。。
保守記事.257-6 誰か解決させる気があるの?
保守記事.257-7 誰か解決させる気があるの?
保守記事.257-8 いのちに線引き
保守記事.257-9 結局、解決できないんだって!
保守記事.257-10 結局、解決できないんだって!
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