■増えぬ交通量、1000円に値下げで目標クリア?
東京湾を結ぶ「東京湾アクアライン」が18日、誕生から丸10年を迎える。開通当初、首都圏活性化の起爆剤と期待されたが、高額な料金がネックとなり “夢の懸け橋”は看板倒れ。相次いで実施した値下げなどが功を奏して交通量は盛り返してきたものの、課題は多く残されている。(名古屋和希)
平日の午前7時半過ぎ、千葉県木更津市のJR木更津駅前。川崎や横浜、羽田空港などを行き先とするバス停の前には会社員や学生が列を作る。客を乗せると、次々と高速バスがアクアラインに向け出発していく。
東京都内の会社に勤める三井徹さん(46)は毎朝、品川行きの高速バスを利用する。
「電車だと30分も多く時間がかかるし、ラッシュもある。バスは混雑しなくて大変便利」。品川行きのバスが運行し始めて以来、ずっと通勤の足だ。
関東運輸局によると、現在、アクアラインを経由する高速バスはJR川崎駅-JR木更津駅間を含む17系統。運行する日東交通(木更津市)は「通勤客など手堅い利用があり、利用客も年々増加している」という。
◆“ゴルファーロード”
アクアラインは、首都圏のレジャーにも変化を与えた。ちばぎん総合研究所(千葉市)の関寛之主任研究員の調査によると、バブル崩壊後、全国のゴルフ場利用者数が減少する一方で、千葉県のゴルフ場利用者数はアクアライン開通後、増加。
関主任研究員は「アクアラインによって千葉県は東京や神奈川からゴルフ客を集めている」と分析する。
このように利用が浸透する一方、全体の交通量は伸び悩む。
東日本高速道路によると、1日当たりの交通量は目標台数の2万5000台に対し、平成11年度は1万台を割り込んだ。1万3000~1万4000台前後の推移が長く、今年度上半期には2万台近くまで増えたが、まだ目標には遠い。
その理由として真っ先に指摘されるのが、高額の通行料だ。
開通当初4000円(普通車)だった料金は平成12年にようやく値下げされ、3000円になった。14年にはETC車の割引を始め、現在、ETC車は2320円だ。
◆湾岸線に流れる足
アクアラインをもっと利用してもらおうと、国土交通省関東地方整備局は今夏から、川崎の浮島ICと成田空港の新空港IC間などのアクアライン経由の8区間で一部割引を実施。浮島-新空港間で湾岸線経由よりも約2500円高かった料金を500円差まで縮めた。
その結果、交通量は平日が18%、休日は22%増加し、値下げが利用者増につながることが分かった。
同局は「さらに効果的な方法を検討していく」と、来年3月末まで割引の延長を決めた。
しかし、大きな課題はまだある。当初期待された物流での利用が少ないことだ。現在、アクアラインを走る車の約85%が普通車で、トラックなど大型車はわずか3%弱。
「中小の運輸会社などでは東京湾を迂回(うかい)し、多少時間がかかっても割安な湾岸道路を使う」と「道路の経済学」の著書がある松下文洋・法政大講師は指摘する。
松下氏の分析では、料金を1000円に値下げした場合、アクアラインの交通量は目標台数の2万5000台に達したうえ、燃費や時間短縮などにより首都圏で1日約1億円の経済効果が見込まれ、渋滞緩和によって二酸化炭素も削減できるという。
「経済面や環境面で首都圏に与える影響は甚大。アクアラインをもっと有効に活用していく工夫が必要」としている。
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