僕の感性

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徳川家茂の機転と愛情

2009-06-17 22:59:55 | Weblog
 

 書の達人として知られていた幕臣戸川播磨守安清は70歳を過ぎた老人ながら、推されて家茂の習字の先生を務めていました。

 ある時家茂に教えていた最中に、突然家茂が安清の頭の上から墨を摺るための水をかけ手を打って笑い、「あとは明日にしよう」と言ってその場を出て行ってしまったのです。

 同席していた側近たちがいつもの家茂にも似ぬことをすると嘆いていると、当の安清が泣いていました。家茂の振る舞いを情けなく思ってのことかと尋ねると、実は老齢のため、ふとしたはずみで失禁してしまったと安清は打ち明けました。

 当時の習慣として将軍に教えている真っ最中に尿を漏らしたとなると厳罰は免れないので、それを察した家茂は水をかけるいたずらをすることでその失敗を隠し、「明日も出仕するように」と発言することで不問に処することを表明したのでした。その細やかな配慮に感激して泣いているのだと答えたといいます。

 徳川家茂は、勝海舟をはじめ幕臣からの信望厚く、忠誠を集めた名君と謳われました。