自分は初めて彼女に逢ふことが出来た
君は泌み入るやうな透明な
美しい悲哀に充ちた目をして
僕の前に立ちあいさつをした
僕は僕の考へていたとほりの
その容貌をもっていた彼女を見て
僕は自分の予感や自信を喜ばしく感じた
この人に逢ふために僕は永い間もだえた
僕の生涯をゆだねるに足る
その一切が潜在していて
僕の掘るがままに芽を生じていた
君と僕はてがみを交して
永い間お互いのこころを語り合った
君はいつの間にか
僕の中に存在していたのだ
君の中に僕はその根を下ろし初めたのだ
僕の心と君の心とにゆきゆきした
ふたりの自由は叫び合った
僕はこの人を友に得て
この世に出てゆかれる日があるならば
僕は鷲のやうなつばさを得るだらう
あやふやなものを吹き飛ばすだらう
砂塵をあげて歌ふだらう
(室生犀星)
君は泌み入るやうな透明な
美しい悲哀に充ちた目をして
僕の前に立ちあいさつをした
僕は僕の考へていたとほりの
その容貌をもっていた彼女を見て
僕は自分の予感や自信を喜ばしく感じた
この人に逢ふために僕は永い間もだえた
僕の生涯をゆだねるに足る
その一切が潜在していて
僕の掘るがままに芽を生じていた
君と僕はてがみを交して
永い間お互いのこころを語り合った
君はいつの間にか
僕の中に存在していたのだ
君の中に僕はその根を下ろし初めたのだ
僕の心と君の心とにゆきゆきした
ふたりの自由は叫び合った
僕はこの人を友に得て
この世に出てゆかれる日があるならば
僕は鷲のやうなつばさを得るだらう
あやふやなものを吹き飛ばすだらう
砂塵をあげて歌ふだらう
(室生犀星)