僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

映画 鍵泥棒のメソッド

2012-10-08 00:10:39 | 映画
 内田けんじ監督の「鍵泥棒のメソッド」を観た。売れない役者の桜井を堺雅人が演じ、殺し屋コンドウに香川照之、ちょっと世間ずれしている雑誌の編集者の香苗に広末涼子。
 銭湯での転倒をきっかけに、桜井とコンドウの人生が入れ替わってしまうお話。




[あらすじ]
 銭湯に入ってきた金持ちそうな男(香川照之)が転倒。その場に居合わせた貧乏役者の桜井が様子を見ていると、男は頭を強打した影響で記憶を失っていた。

 桜井はちょっとした出来心を起こし、男のロッカーの鍵と自分の鍵をすり替える。記憶をなくした男は自分を桜井だと思いこんでしまう。しかし男の正体は誰も顔を見たことのない伝説の殺し屋・コンドウだったのだ。


 コンドウに成り代わった桜井のもとに大金が絡む危険な仕事の依頼が舞い込み、桜井はやむなく引き受けてしまう。


 一方、自分は桜井だと思い込んでいるコンドウは一流の役者となることを目指して真面目に努力する。そんなひたむきな姿に胸を打たれた女性編集長の香苗(広末涼子)は彼に求婚。三者三様の事情が複雑に絡み合っていく。


【感想】
 予想以上に面白い作品だった。時々笑えて、ときどきドキドキして、どんでん返しも盛り込まれた喜劇だった。
 特に香川照之が二つの顔ををそれぞれ演じきったのは、出色の出来だった。

中原中也というもの

2012-10-07 15:57:28 | 文学
つみびとの歌
中原中也
『山羊の歌』より


わが生は、下手な植木師らに
あまりに夙く、手に入れられた悲しさよ!
由来わが血の大方は
頭にのぼり、煮え返り、滾り泡だつ。

おちつきがなく、あせり心地に、
つねに下界に索もとめんとする。
その行いは愚かで、
その考えは分かち難い。

かくてこのあわれなる木は、
粗硬な樹皮を、空と風とに、
心はたえず、追惜のおもいに沈み、

懶惰にして、とぎれとぎれの仕草をもち、
人にむかっては心弱く、諂いがちに、かくて
われにもない、愚事のかぎりを仕出来してしまう。


 中原中也は早熟だった。16歳の立命館中学時代、女優の長谷川泰子と同棲する。けれど東京に移って後に知り合った小林秀雄のもとへと彼女は去ってしまう。中也18歳の秋だった。
 小林氏が家出して行方不明になった時、中也はもう一度迎えるつもりで貸家を借りたりしていたが、彼女は中也の元には戻らなかった。中也は泰子のことを生涯理想の女性として崇め慕ったのであった。 中也は西荻窪の自宅から、朝一番の電車で泰子の暮らす東中野にやってきて、道端から呼んで起こして
 「あ、元気か?元気ならいいんだ。夢見が悪かったので気になってきてみたんだ」
といって、そのまますぐに帰っていったそうである。


蜻蛉に寄す 『在りし日の歌より』

あんまり晴れてる 秋の空
赤い蜻蛉が 飛んでゐる
淡い夕陽を 浴びながら
僕は野原に 立ってゐる

遠くに工場の 煙突が
夕陽にかすんで みえてゐる
大きな溜息 一つついて
僕は蹲(しゃが)んで 石を拾ふ

その石くれの 冷たさが
漸く手中で ぬくもると
僕は放して 今度は草を
夕陽を浴びてる 草を抜く

抜かれた草は 土の上で
ほのかほのかに 萎えてゆく
遠くに工場の 煙突は
夕陽に霞んで みえてゐる

優曇華

2012-10-01 21:41:04 | 驚いたこと
 優曇華の花とはインドの伝説で3000年に一度咲く花といわれる。その時、金輪王(如来)が現れ人々に吉兆をもたらす。

優曇華の花は俗に芭蕉の花とか


クワ科イチジク属のフィクス・ゲロメラタ(山玉蓮)とか

花開くと

白木蓮に似ているらしい。

それとマメ科の「トビカズラ」とか

などを指していうらしい。

けれど私が車のフロントガラスに見つけたのは、やはり優曇華の花



けれどこれは花ではなく「クサカゲロウ」の卵。
音符のような小さな卵が塊って付いている。いくら車を走らせても剥離することなく
ピッタリくっついている。
日本ではこれを見つけると吉兆とも凶事の予兆ともいわれる。
形だけ見てみると、数十年から100年に一度咲く「竹の花」や60年に一度咲く「熊笹の花」に似ている気がする。