昨年の忘れ去られた物語シリーズ9で紹介した山本角太夫板とされる「山椒太夫」を床として
http://blog.goo.ne.jp/wata8tayu/d/20120224
以前から演じてきた「鳴子挽き・親子対面の場」の発端部分の作曲が終わったのは、今年の
3月でした。昨年10月頃から約半年もかかったのは、この角太夫本の筋書き通りに再演する
ことに躊躇があったからでした。山椒太夫のテキストは比較的多く残っていますが、その中
で、この角太夫板は、特異な筋書きを持っています。唯一、佐渡に安寿を渡らせるこの本を、
どうしても使いたいのですが、その特異さ故に、古説経の雰囲気にそぐわない部分があるの
も事実です。
角太夫板では、岩木判官正氏の失脚を、かなりあくどいやり方で描きますが、浄瑠璃的な
筋立てを感じます。そこで、発端の筋書きを、オーソドックスな筋立てに依ることとして、寛
文後期に出版された「さんせう太夫物語」(新日本古典文学大系90古浄瑠璃説経集:岩波書
店)から発端部分である「信夫の里」を作りました。初段は、この発端部分と、角太夫板から
起こした「直井の浦」とを繋げたものとなり、ようやく落ち着いたのでした。
発端「信夫の里」
ある日、厨子王は、ツバメを眺めていて、ツバメには父も母も居るのに、どうして僕には居
ないのと、母親に尋ねます。母が、お父さんは、築紫の国に流罪となって生きていると教えま
すと、厨子王は、父の汚名を晴らして、本領を安堵するために、上洛すると言い出します。そ
うして、人々は、京都へと旅だったのでした。
「直井の浦」
会津街道から、越後へとやってきた一行は、直江津の扇の橋で、人買いの山角の太夫にだ
まされてしまいます。母と姥竹は佐渡島に売られ、安寿と厨子王は丹後由良に売られて行く
のです。
人買いの山角の太夫が、人々をだまして、船上で売り飛ばす場面。
しかし、山角は、お供の小八が強うそうなので、海へ突き落としてしまいます。怒った小八
は、猛然と反撃しますが、その間に、御台様や姉弟を乗せた舟は、行方不明となってしまうの
でした。小八は山角を引っ捕らえて、姉弟や御台様の捜索に向かいます。
新しい演目に、座員一同、本格的に取り組み始めました。乞うご期待。
初演は、10月20日(日)新潟県村上市塩谷 塩谷山円福寺を予定しています。