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愛媛宇和島・トラック小型クレーン転倒落下死亡

2022-04-18 | 事故と事件
愛媛宇和島・トラック小型クレーン転倒落下死亡
 愛媛宇和島・トラック小型クレーンで小型船を吊り上げ移動中に、バランスを崩しトラックが転倒落下、巻き込まれたクレーン操作者が死亡したとのことだ。

 この様なトラックに架装した小型クレーンを、その登場が早かったせいか俗称「ユニック付き」とも呼ばれることもあるが「ユニック」は個別メーカー名であり、幾つかのメーカーがあるので、小型クレーンと呼ぶべきものだ。

 この小型クレーンだが、最大定格荷重は1トンから4トン程度まであるのだろうが、これはクレーンは大型でも同じだが、最大定格荷重は作業もしくは旋回半径を最小にした場合、すなわちブーム伸縮を最も縮め、起伏角を最大に上げたときの値だ。天井クレーンだと、その真下の吊り荷を垂直に引き上げるので、作業半径という概念はないが、ブームを持つクレーンでは、その起伏角が最大(80度程)から水平に行くに従い作業半径は大きくなる。

 それと、クレーンの事故とか損壊を考える場合、その過過重(オーバーロード)について、2つの要素があることを考慮しなければならない。
➀機械の強度的に許容できる過重
②機械の安定性により許容できる過重

 ➀の強度的とは、主にブーム起伏角を高角度での作業する場合(作業半径が小さい場合)に生じ易い。
 ②の安定性とは、主にブームの起伏角を低角度での作業をする場合(作業半径が多きい場合)に生じ易い。

 ここで、ブームを持つクレーン装置には、固定式と移動式という2つに区分ができる。
 固定式とはクレーン装置が地盤なり建物本体に強固に結合されているものだ。一方、移動式とは、トラック小型クレーンもその内となるが、クレーン装置がタイヤなりレールなどの上を移動できる様になされたものを指す。

 つまり、移動式クレーンでは、吊り荷を引き上げる際、ブームを引き下げようとする力(転倒モーメント)と、それに抗する反力(安定モーメント)があることを意識しなければならない。

 ここで、安定度=安定モーメーンと/転倒モーメントで表されるが、この値が1未満になると転倒するということになる。移動式クレーンの安定性を増すために、アウトリガーというベース長を増す装置が付いている。また、小型クレーンでは付かないが、それより大きなクレーンでは、旋回台上のクレーン装置の後部には安定性を増すためのカウンターウェイトが付く。

 ここで、今回の事故について、あくまで想像となるが記してみたい。
 まず、今回吊り荷となったのは小型船で、もしかすると転落したトラックの荷台に載せていたのかもしれない。もしくは、防波堤の内の大地にあったのかもしれないが、何れにしても最初の吊り作業は、作業半径が小さな状態で防波堤の最上端を越せる高さまで吊り上げたのだろう。
 次に、その状態で旋回させ、吊り荷となる船を防波堤の外に移動し、もしかするとここでブームを伸ばした可能性がある。そして、ブームの起伏角を下げて、作業半径を大きくしながら船を目的の場所へ移動していたのだろう。その最中に、転倒モーメントが安定モーメントを上回り、トラックは転倒しつつ落下する船の過重と共に、防波堤を跳び越え外に落下したのだろう。
 なお、死亡した方は、トラックと防波堤の間で、操作をしていたので、挟まれる形となり死亡したのだろうと思う。

 また、現場の細部は不明だが、アウトリガーは出していたのだが、防波堤側のアウトリガーの出方が少なかったとか、アウトリガーを押さえる路盤の強度が低くて沈み込んだという場合もあり得るだろう。

 何れにしても、操作者は慣れも合ったのかもしれないが、吊り荷の位置や方向ばかり気にし、トラック側の気配に無頓着だった様に思える。この転倒モーメントが安定モーメントを上回る臨界というべき局面で、微操作しつつ危険を感じて止めていれば、この様な悲劇は起きなかった様に思えてしまう。

 しかし、この様な小型クレーンでは、免許と云っても軽度な講習を受講すれば取得できるが、もっと大型のクレーンでは、かなり厳格な国家資格だが、それでも大きな事故は起きている。
 例えば、旋回の仕方でも、速く旋回などさせれば、吊りには遠心力で外に膨らむので、実質の作業半径は大きくなり転倒しているという様な場合さえある。
 しかし、クルマとか吊り荷は事故で損壊しても止むを得ないが、人の命は大切だ。せめて、操作をクルマと防波堤の間でなく、クルマの反対側で行っていればと思う。ただし、この場合は操作者から吊り荷が見えなくなるので、指揮者が必要になるのだが、その連携がこれまた人的要因として事故原因になる場合もあるのだが、生命の危険を考えれば、安全優先をしなければならないだろう。






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クレーン付きトラックが転落 巻き込まれ1人死亡 愛媛
あいテレビ 4/17(日) 18:19配信
 17日午前 愛媛県宇和島市内の漁港で、トラックのクレーンを使い船を海に下ろす作業をしていた54歳の男性が、
バランスを崩したトラックと共に海に転落し死亡しました。
 事故があったのは、宇和島市吉田町白浦の漁港で、17日午前8時半ごろ、小型の船をクレーンでつり上げ海に下ろす作業をしていた宇和島市吉田町の会社員清家伯英さん54歳が、バランスを崩したトラックとともに海に転落しました。
 清家さんは、宇和島市内の病院に搬送されましたが、およそ2時間後に死亡が確認されました。
 警察によりますと清家さんは、会社の同僚とともに船を下ろす作業をしていたということです。
 また、作業をする際、クレーンが付いたトラックの車体を転倒しないように支える「アウトリガー」と呼ばれる
脚は出た状態になっていたということです。
 警察では、事故の詳しい原因などを調べています。


#宇和島 #小型クレーン付きトラック #船を吊り移動中 #クルマごと転落・死亡


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