スピード違反撲滅! 欧州で「速度リミッター」義務化も、これって“車内監視”社会の始まりじゃないのか?
2024.07.24 13:40 Merkmal
欧州連合(EU)と北アイルランドでは、2024年7月7日から、すべての新車にスピードリミッターの装備が義務付けられるようになった。
2022年から新発売の車種に対して導入されていたのが、すべての新車へと範囲が拡大した形だ。店頭に並ぶ新車のなかには、後付けが必要となるものもある。
このスピードリミッターは
「ISA(インテリジェント・スピード・アダプテーション)」
と呼ばれるシステムで、
・衛星利用測位システム(GPS)
・衛星ナビゲーション
・道路標識の情報
を組み合わせ、車両の速度を自動的に制限する。
速度が超過している場合、ビープ音やハンドル等の振動でドライバーに知らせ、ドライバーがブレーキを踏むなどの反応がなければ、速度制限まで減速させるようエンジン出力を低減させる。
前方の危険回避などでスピードが必要なとき、アクセルを強く踏めば一時的にISAを無効化できるが、エンジンを再びオンにすると有効になるので、永久に無効化することはできない。
欧州委の交通事故ゼロ計画
欧州運輸安全委員会は、ISA技術により、交通事故を30%、道路での死傷者を20%削減できるとしている。今回、ISAのほか、
・衝突被害軽減ブレーキ(AEB)
・ドライバーの眠気注意力警告システム(DDAW)
・緊急車線維持システム(ELKS)
などの他の安全対策も新車に搭載されるようになった。
EUは2050年までに交通事故による死亡者をゼロにする計画を持っており、欧州委員会は、これらの対策により、2038年までに14万人の深刻な交通事故による負傷を防ぐことができると考えている。
欧州委員会がISA導入をする目的は交通事故を減らすことだけにあるわけではない。
「目的は、欧州の人々を交通事故、大気汚染、気候変動から守り、変化するニーズに合った新たなモビリティの解決法を提供し、欧州産業の競争力を守ることだ」
と声明を出している。スピードを制限し、適度な速さでは車を走らせることは、ドライバーにとっては燃費がいいことになるし、広くは大気汚染と気候変動にも影響を与える。
欧州ではそういった状況にあるため、スピードと安全性についての考えを一歩進めたルノーグループは、すべての新しいルノーとシトロエンの車の最高速度を112mph(時速約180.25km)に制限するという独自の施策を進めるなど、動きが出ている(2024年7月4日付、『Auto Trader』)。
メーカーのISA対応方針
現在、スピードリミッターのISA搭載は、EUと北アイルランドにおいて義務化されたのみで、EUを離脱したそのほか英国地域は対象となっていない。英運輸省(DfT)も計画の策定に携わっていたので、対象となるかと一般には考えられていたがそうはならなかった。
・英自動車工業会(SSMT)
・大手自動車ブランド
・ユーロNCAP(ヨーロッパ新車アセスメントプログラム)
からは、欧州地域全体で統一性を保つよう圧力があるものの、DfTは、北アイルランドを除く英国で販売される新車は当面影響を受けないと発表している。
それにも関わらず、ほとんど自動車メーカーは、新車にスピードリミッターを組み込む予定である。フォード、ルノー、ボルボ、ホンダなどの主要メーカーは、すでに組み込んだことを明らかにしている。
日本の日本自動車連盟(JAF)にあたるRAC道路安全広報担当ロッド・デニス氏は、その理由をこう話す。
「メーカーが英国で販売する車から意図的にこの機能を除外するとしたら驚きだ。生産に不必要なコストがかかるからだ」(2024年7月4日付、RACホームページ)。
このような理由から、ISA搭載は英国内で非公式にも進められていくが、公式に採用となるには、公的な協議と法律が必要となる。
ドライバーの自由と制限
ところで、今回の施策は欧州の人にどう受け止められているのか。
調査によると、メーカーが新車にスピードリミッター技術を搭載するのはよい考えだと考えるドライバーは、わずか
「6%」
だった(2024年7月7日付、『BRITAIN’S NEWS CHANNEL』)。
まず、速度制限のアラートの煩わしさがある。ビープ音がいいのか、振動がいいのか。何か効果的なのか、2025年12月に有効性を評価される予定となっている。
ISA技術に使われる標識を認識するカメラの正確性も問題に挙げられている。
例えば、高速道路が一般道と並走しているとき、自身は高速道路を走っているのにも関わらず、一般道の標識を読み込んでしまうことある。
標識を見逃すこともあるし、街路樹などで隠れていると認識しづらい。天候が悪いときもある。標識自体が破損している場合もある。現状は、ISAを一時的に無効化することで対処するしかない。
さらに議論されているのは、今後これに続く施策は制限がさらに厳しくなる可能性があるということ、そして
「車内監視技術への第一歩」
になりえるということである。ある意味ドライバーの自由を制限する技術であるため、この反発は過渡期特有のものなのかどうなのだろうか。
#スピード違反撲滅! 度リミッター」義務化欧州
2024.07.24 13:40 Merkmal
欧州連合(EU)と北アイルランドでは、2024年7月7日から、すべての新車にスピードリミッターの装備が義務付けられるようになった。
2022年から新発売の車種に対して導入されていたのが、すべての新車へと範囲が拡大した形だ。店頭に並ぶ新車のなかには、後付けが必要となるものもある。
このスピードリミッターは
「ISA(インテリジェント・スピード・アダプテーション)」
と呼ばれるシステムで、
・衛星利用測位システム(GPS)
・衛星ナビゲーション
・道路標識の情報
を組み合わせ、車両の速度を自動的に制限する。
速度が超過している場合、ビープ音やハンドル等の振動でドライバーに知らせ、ドライバーがブレーキを踏むなどの反応がなければ、速度制限まで減速させるようエンジン出力を低減させる。
前方の危険回避などでスピードが必要なとき、アクセルを強く踏めば一時的にISAを無効化できるが、エンジンを再びオンにすると有効になるので、永久に無効化することはできない。
欧州委の交通事故ゼロ計画
欧州運輸安全委員会は、ISA技術により、交通事故を30%、道路での死傷者を20%削減できるとしている。今回、ISAのほか、
・衝突被害軽減ブレーキ(AEB)
・ドライバーの眠気注意力警告システム(DDAW)
・緊急車線維持システム(ELKS)
などの他の安全対策も新車に搭載されるようになった。
EUは2050年までに交通事故による死亡者をゼロにする計画を持っており、欧州委員会は、これらの対策により、2038年までに14万人の深刻な交通事故による負傷を防ぐことができると考えている。
欧州委員会がISA導入をする目的は交通事故を減らすことだけにあるわけではない。
「目的は、欧州の人々を交通事故、大気汚染、気候変動から守り、変化するニーズに合った新たなモビリティの解決法を提供し、欧州産業の競争力を守ることだ」
と声明を出している。スピードを制限し、適度な速さでは車を走らせることは、ドライバーにとっては燃費がいいことになるし、広くは大気汚染と気候変動にも影響を与える。
欧州ではそういった状況にあるため、スピードと安全性についての考えを一歩進めたルノーグループは、すべての新しいルノーとシトロエンの車の最高速度を112mph(時速約180.25km)に制限するという独自の施策を進めるなど、動きが出ている(2024年7月4日付、『Auto Trader』)。
メーカーのISA対応方針
現在、スピードリミッターのISA搭載は、EUと北アイルランドにおいて義務化されたのみで、EUを離脱したそのほか英国地域は対象となっていない。英運輸省(DfT)も計画の策定に携わっていたので、対象となるかと一般には考えられていたがそうはならなかった。
・英自動車工業会(SSMT)
・大手自動車ブランド
・ユーロNCAP(ヨーロッパ新車アセスメントプログラム)
からは、欧州地域全体で統一性を保つよう圧力があるものの、DfTは、北アイルランドを除く英国で販売される新車は当面影響を受けないと発表している。
それにも関わらず、ほとんど自動車メーカーは、新車にスピードリミッターを組み込む予定である。フォード、ルノー、ボルボ、ホンダなどの主要メーカーは、すでに組み込んだことを明らかにしている。
日本の日本自動車連盟(JAF)にあたるRAC道路安全広報担当ロッド・デニス氏は、その理由をこう話す。
「メーカーが英国で販売する車から意図的にこの機能を除外するとしたら驚きだ。生産に不必要なコストがかかるからだ」(2024年7月4日付、RACホームページ)。
このような理由から、ISA搭載は英国内で非公式にも進められていくが、公式に採用となるには、公的な協議と法律が必要となる。
ドライバーの自由と制限
ところで、今回の施策は欧州の人にどう受け止められているのか。
調査によると、メーカーが新車にスピードリミッター技術を搭載するのはよい考えだと考えるドライバーは、わずか
「6%」
だった(2024年7月7日付、『BRITAIN’S NEWS CHANNEL』)。
まず、速度制限のアラートの煩わしさがある。ビープ音がいいのか、振動がいいのか。何か効果的なのか、2025年12月に有効性を評価される予定となっている。
ISA技術に使われる標識を認識するカメラの正確性も問題に挙げられている。
例えば、高速道路が一般道と並走しているとき、自身は高速道路を走っているのにも関わらず、一般道の標識を読み込んでしまうことある。
標識を見逃すこともあるし、街路樹などで隠れていると認識しづらい。天候が悪いときもある。標識自体が破損している場合もある。現状は、ISAを一時的に無効化することで対処するしかない。
さらに議論されているのは、今後これに続く施策は制限がさらに厳しくなる可能性があるということ、そして
「車内監視技術への第一歩」
になりえるということである。ある意味ドライバーの自由を制限する技術であるため、この反発は過渡期特有のものなのかどうなのだろうか。
#スピード違反撲滅! 度リミッター」義務化欧州