「旧ビッグモーター」関係者が明かす「調査委員会は“素人”ばかり……」 保険金不正請求「全件調査打ち切り」驚きの理由
8/3(土) 11:11配信 デイリー新潮
存続会社に「最大100億」拠出(兼重宏行氏)
ドライバーやサンドペーパーを使って車体に傷を付ける、あるいはゴルフボールを入れた靴下を振り回して車体を叩く……。旧ビッグモーター(BM)による保険金「不正請求」手口のほんの一例だ。問題発覚後、同社は不正の全容解明へ向けた調査に乗り出したが、1年と経たずに「打ち切り」を発表。旧BM関係者が明かす、そのウラにある呆れた事情とは。
【写真を見る】ロイヤルファミリーの“なれの果て” BALMへの巨額拠出の担保に取られたと囁かれる「目黒・500坪大豪邸」「軽井沢・豪華別荘」の全貌
***
旧ビッグモーターが外部調査委員会を設置し、不正請求事案の「全件調査」に乗り出したのは2023年8月。今年5月に伊藤忠商事が旧BMを買収した後は、損害賠償や訴訟対応などに当たる存続会社「BALM(バーム)」が調査を引き継いだ。
「この間、並行して大手損保4社も独自に調査を進め、対象となった計23万6000件のうち、すでに19万件近くの調査が終了。そのなかで“不正があった”と判断されたのは約6万5000件にのぼりますが、これまで旧BM側と不正の事実認定などで合意に達したのは約1700件(2.6%)に過ぎません。つまり調査はまだ緒についたばかりのタイミングであるにもかかわらず、バームは7月中旬、損保各社に“調査終了”を一方的に通知したのです」(全国紙社会部記者)
代わりの提案として、バームは「(今後は)裁判所を通じて、損害保険会社と保険金の返金範囲や割合について協議・解決する」としたが、損保側は猛反発。その背景には、もともと旧BM側の調査が遅々として進まないことに各社が苛立ちを募らせていた事情があるという。
「損保側が最長8年前にまで遡って調査しているのに対し、旧BM側の調査の対象期間は2年8か月(21年1月~23年8月)。調査対象数も損保側の3分の1以下となる約7万5000件にとどまります。そのため損保各社は旧BMに対し、“どこまで本気で調査する気があるのか?”といった不信の念を抱いていた」(同)
調査継続に“白旗”
さらに損保の担当者を愕然とさせたのが、バームが説明した調査打ち切りの理由という。
「バームは“見積書などの書類の突き合わせや事故車両の画像を見て不正の有無を判定するのは困難”との外部調査委員会の指摘を踏まえ、〈(これ以上)調査を継続したとしても、顧客の早期救済に繋がらないと判断〉したと説明。不正請求の当事者が突然“白旗”を上げる格好になったため、損保各社は対応に苦慮しています」(同)
損保側が焦りと危機感を抱くのは、保険契約者(自動車保有者)の動揺がいまだ鎮まらないためだ。旧BMの不正請求に利用された契約者は等級が上がって月々の保険料も増えた可能性があり、一連の騒動以降、損保会社に対する契約者の視線も厳しくなっているという。
一方で、当の旧BM関係者は「調査が頓挫するのは最初から目に見えていた」とまったく違った感想を漏らす。
「事故調査プロ」の不在
「そもそも旧BMが設置した外部調査委員会のメンバーが弁護士らで構成されていた点に社内では早くから疑問の声が上がっていた。保険事故調査の専門家である〈損保アジャスター〉でもない彼らが、見積書や請求書、事故車両の画像を見て“事故か、不正か?”なんて分かるわけがない――と秘かに囁かれていたのです。損保各社はアジャスターを含めたプロフェッショナルが調査しているのに対し、BMの主体は言ってみれば、“事故調査の実務経験などない素人だ”と揶揄する声もあった。調査の進捗に大きな差が出るのは当然です」(旧BM関係者)
さらに「打ち切り」の背景として“証言者不在”の影響を挙げる。
「私自身も当時、たとえば事故車両に仕立てた車の修理部品に関し、保険会社には“新品”を請求した裏で、業者には中古品を発注し、差額を“利益”としていたケースを目にしました。こういったケースは画像だけで不正の有無を判断するのは困難を極め、部品伝票まで一つひとつ確認しないと見抜けない構図になっている。それでも不正を目にしたり、実際に手を染めた人間は存在しており、彼らへのヒアリングを実施していれば結果は違ったかもしれません」(同)
ただ仮にヒアリング調査を行うにしても、新たな問題が立ちはだかるという。
「死人に口なし」
「一連の不祥事を受け、旧BMの整備工場の多くが国交省から『指定取り消し』などの行政処分を課され、離職者が相次いだことで、板金部門は実質“解体”されてしまった。実態を知り得る立場にあった従業員の多くがすでに社を去るなどしており、社内では『死人に口なし』なんて軽口も叩かれている。被害の特定ができなければ不正の全容解明も叶わず、結局、真相は“闇に葬られる”ことになるのではないでしょうか」(同)
バームに外部調査委員会が行った調査の具体的な内容や、これから被害者救済をどう図るつもりなのかなどについて訊ねたが、
「保険会社と協議中につき、ご質問への回答を控えさせていただいております」
との答えにとどまった。現在、全国に約250ある旧ビッグモーター店舗の看板は順次、中古車事業を継承した新会社「WECARS」へと掛け替えられているが、犯した不正までは覆い隠せない。デイリー新潮編集部
#「旧ビッグモーター」関係者が明かす「調査委員会は“素人”ばかり……」
8/3(土) 11:11配信 デイリー新潮
存続会社に「最大100億」拠出(兼重宏行氏)
ドライバーやサンドペーパーを使って車体に傷を付ける、あるいはゴルフボールを入れた靴下を振り回して車体を叩く……。旧ビッグモーター(BM)による保険金「不正請求」手口のほんの一例だ。問題発覚後、同社は不正の全容解明へ向けた調査に乗り出したが、1年と経たずに「打ち切り」を発表。旧BM関係者が明かす、そのウラにある呆れた事情とは。
【写真を見る】ロイヤルファミリーの“なれの果て” BALMへの巨額拠出の担保に取られたと囁かれる「目黒・500坪大豪邸」「軽井沢・豪華別荘」の全貌
***
旧ビッグモーターが外部調査委員会を設置し、不正請求事案の「全件調査」に乗り出したのは2023年8月。今年5月に伊藤忠商事が旧BMを買収した後は、損害賠償や訴訟対応などに当たる存続会社「BALM(バーム)」が調査を引き継いだ。
「この間、並行して大手損保4社も独自に調査を進め、対象となった計23万6000件のうち、すでに19万件近くの調査が終了。そのなかで“不正があった”と判断されたのは約6万5000件にのぼりますが、これまで旧BM側と不正の事実認定などで合意に達したのは約1700件(2.6%)に過ぎません。つまり調査はまだ緒についたばかりのタイミングであるにもかかわらず、バームは7月中旬、損保各社に“調査終了”を一方的に通知したのです」(全国紙社会部記者)
代わりの提案として、バームは「(今後は)裁判所を通じて、損害保険会社と保険金の返金範囲や割合について協議・解決する」としたが、損保側は猛反発。その背景には、もともと旧BM側の調査が遅々として進まないことに各社が苛立ちを募らせていた事情があるという。
「損保側が最長8年前にまで遡って調査しているのに対し、旧BM側の調査の対象期間は2年8か月(21年1月~23年8月)。調査対象数も損保側の3分の1以下となる約7万5000件にとどまります。そのため損保各社は旧BMに対し、“どこまで本気で調査する気があるのか?”といった不信の念を抱いていた」(同)
調査継続に“白旗”
さらに損保の担当者を愕然とさせたのが、バームが説明した調査打ち切りの理由という。
「バームは“見積書などの書類の突き合わせや事故車両の画像を見て不正の有無を判定するのは困難”との外部調査委員会の指摘を踏まえ、〈(これ以上)調査を継続したとしても、顧客の早期救済に繋がらないと判断〉したと説明。不正請求の当事者が突然“白旗”を上げる格好になったため、損保各社は対応に苦慮しています」(同)
損保側が焦りと危機感を抱くのは、保険契約者(自動車保有者)の動揺がいまだ鎮まらないためだ。旧BMの不正請求に利用された契約者は等級が上がって月々の保険料も増えた可能性があり、一連の騒動以降、損保会社に対する契約者の視線も厳しくなっているという。
一方で、当の旧BM関係者は「調査が頓挫するのは最初から目に見えていた」とまったく違った感想を漏らす。
「事故調査プロ」の不在
「そもそも旧BMが設置した外部調査委員会のメンバーが弁護士らで構成されていた点に社内では早くから疑問の声が上がっていた。保険事故調査の専門家である〈損保アジャスター〉でもない彼らが、見積書や請求書、事故車両の画像を見て“事故か、不正か?”なんて分かるわけがない――と秘かに囁かれていたのです。損保各社はアジャスターを含めたプロフェッショナルが調査しているのに対し、BMの主体は言ってみれば、“事故調査の実務経験などない素人だ”と揶揄する声もあった。調査の進捗に大きな差が出るのは当然です」(旧BM関係者)
さらに「打ち切り」の背景として“証言者不在”の影響を挙げる。
「私自身も当時、たとえば事故車両に仕立てた車の修理部品に関し、保険会社には“新品”を請求した裏で、業者には中古品を発注し、差額を“利益”としていたケースを目にしました。こういったケースは画像だけで不正の有無を判断するのは困難を極め、部品伝票まで一つひとつ確認しないと見抜けない構図になっている。それでも不正を目にしたり、実際に手を染めた人間は存在しており、彼らへのヒアリングを実施していれば結果は違ったかもしれません」(同)
ただ仮にヒアリング調査を行うにしても、新たな問題が立ちはだかるという。
「死人に口なし」
「一連の不祥事を受け、旧BMの整備工場の多くが国交省から『指定取り消し』などの行政処分を課され、離職者が相次いだことで、板金部門は実質“解体”されてしまった。実態を知り得る立場にあった従業員の多くがすでに社を去るなどしており、社内では『死人に口なし』なんて軽口も叩かれている。被害の特定ができなければ不正の全容解明も叶わず、結局、真相は“闇に葬られる”ことになるのではないでしょうか」(同)
バームに外部調査委員会が行った調査の具体的な内容や、これから被害者救済をどう図るつもりなのかなどについて訊ねたが、
「保険会社と協議中につき、ご質問への回答を控えさせていただいております」
との答えにとどまった。現在、全国に約250ある旧ビッグモーター店舗の看板は順次、中古車事業を継承した新会社「WECARS」へと掛け替えられているが、犯した不正までは覆い隠せない。デイリー新潮編集部
#「旧ビッグモーター」関係者が明かす「調査委員会は“素人”ばかり……」