私の思いと技術的覚え書き

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久々にクルマのウンチク

2010-05-20 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 久々にクルマのウンチクとして、ブレーキローターのことを記してみます。
 ご存じの通り、年々クルマが高性能化されるに従って、高性能車のブレーキローターは大径化が進行しており、これに対応するためホイールもインチアップした大径になされ、併せてタイヤの低扁平率化が進められている現状にあります。
 ところで、このブレーキローターですが、国産および輸入車共にスーパースポーツとなる超高性能車では、2ピースタイプが主流になっています。2ピースでない1ピースとなる従来からのブレーキローターでは、ローター部(パッドと接する部分)とベル部(ハブに勘合する部分)が一体鋳造された後、切削加工がなされたものが使用されます。しかし、この様な1ピースのブレーキローターは、過酷なブレーキングによりブレーキローターが赤熱する様な環境下において、ローターの熱変形による倒れ込みによりパッドとの接触面の密着が不正となったり、ペダルストーロークが増加し制動力不足に至るという現象が生じるのだそうです。
 以上の様な1ピースブレーキローターの欠点を補う目的で、2ピースブレーキローターが開発されています。この2ピースでは、ローター部(鋳鉄製もしくはセラミックカーボン製)とベル部(多くはアルミ合金製)の2つのパーツで構成されており、この結合はボルトとナットによりなされていますが、剛結されておらずウェーブワッシャー(スプリングワッシャー)により逃げを持った結合となされています。この構造により、ブレーキローターの熱歪みを吸収し、ローターの倒れ込みを防ぐということが目的となります。
 ところで、写真はちょっと古いAMG・E55(ベンツW210系:1995-2002)のブレーキローターですが、ローター部とベル部との間はボルト結合ではなく、一見すると1ピース構造です。そして、良く観察するとローター部は鋳鉄製でベル部はアルミ製の様ですし、これを結合するピン部(鋼製)はある程度細く作られた構造であることが知れます。想像ですが、たぶんこのブレーキローターは、まずローター部を鋳造し、ピンを打ち込み、その後にベル部をアルミ鋳造しつつピン端部を鋳ぐるむという結構な手間を要しているのではないかと思われます。ですから、このロ-ターは、1ピースですが2ピース相当の代物であることが知れます。
 なお、このE55のブレーキローターは、ベンチレーテッド(通風式)の通風スリットが通常品は円周方向に直角とされ左右共通部品にされているのを、斜めのスリットとし前進回転で積極的に風を吸い込む様に留意されているのが判ります。その代わり、回転方向の指定が生じますから左右で互換性がありません。


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