私の思いと技術的覚え書き

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兵庫タンクローリー転落事故

2017-12-24 | 事故と事件
 今月13日昼ごろ神戸港で生じたという食用油を積んだタンクローリーの転落事故だが、ほぼ垂直にキャブ(運転台)を海水中に突っ込み運転手は水死したという。

 現在のところ事故原因は定かではないが、サイドブレーキを掛け忘れ、車内で休息中に車両が動き出したのでないかという報道もされている。但し、引き上げ途上のNet写真を見ると、若干右方向にステアされており、転落する直前に回避しようとステア操作した可能性もある。それと、この様な大型車のサイドブレーキは、通称センターブレーキと呼ばれるトランスミッション後端に設置されたドラムブレーキでプロペラシャフトをロックするもので、引き忘れや引きが弱いと動き出すという場合があった。しかし、今回の車両も含め、2000年以降を基準として保安基準で定められた中期ブレーキ規制の一環として、駐車ブレーキの能力向上が図られている。具体的には、通称ホイールパークブレーキと呼ばれる、駆動輪左右をエアブレーキチャンバーの空気を排出することで、内蔵された強力スプリング力で強くブレーキシューをドラムに押し付けることで行う方式となった。(大トラ車で停車もしくは駐車した際に、バシューという大きな発音を生じているのは、このホイールパークブレーキのエア排出音だ。)なお、幾ら強力なサイドブレーキが装備されていたからといって、操作忘れがあったとしたら、役には立たないのではあるが・・・。

 何れにしても事故原因は司直が判断を下すことだろう。今回は、この転落車の引き上げに関わるクレーン作業について触れてみたい。Net写真を見ると、当初はロードサービス用のクレーン付きレッカー車が出動したことが判る。たぶんクレーンの最大吊り過重は25トンといったところだろう。私はクレーンの専門家でもないが、クレーンにはジブ(ブームともい呼ぶ)の伸縮や傾斜(起伏と呼ぶ)により作業半径が変化することや、アウトリガーと呼ばれる接地張り出し固定具の状態によって、大幅に定格過重(その状態での最大許容能力)が変化する。先に記した最大吊り過重とは、ジブを最小に縮め、最大起伏角(80°程度)の状態で、車両4点のアウトリガーを目一杯張り出させた状態でのものなのだ。つまり、今回の転落車の重量が20トンだとしよう。しかも、転落車は縦方向になっているから吊り荷の縦寸法は10mはあるだろう。この条件の中で、吊り過重的には許容出来ても、吊り荷を地上の高さを超え、旋回させることが出来なかったということなのだろう。結局、代わりの援護クレーン車として4軸の50トンクラス(だろう)を使用し引き上げを行った様だ。

追記
 転落状態のタンクローリーの後軸を見ると、転落する瞬間にほぼ垂直になって落下し、右後輪が岸壁に引っ掛かり海水中に宙吊りになっている様子が伺える。もし、この後輪の引っ掛かりがなければ、完全に水没したのかもしれない。しかも、右後輪に受けた衝撃力は相当に大きく、あのど太くちょっとやそっとでは曲がりようのない右後軸を後方へ動かしている。実物を見ていないので断定はできないが、ロワコンロールアームのフレーム側ブラケットを固定するリベットが破断しているのだろう。何れにしても、転落時の速度が低速であったことが伺われる状況だ。






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