昨今のエンジンでは、指定エンジンオイルにフリクションロスの低下をから省燃費化を狙った低粘度のものが指定されるに傾向にあります。また、スポーツ用エンジンでも、フリクションロス低減による高出力化を狙い、0W-40等というグレードが指定されているものがあります。
この様なW-で区切られた表示を行うオイルを「マルチグレード」と呼び、高温時の粘度低下をなるべく少なくする粘度向上剤が添加されたものであり、低温時の流動性と高温時の粘度低下の両立を図ったオイルであると云えます。
Wの前の数値は低温時の絶対粘度を表したものであり、0Wではオイルポンプでの吐出限界となる温度は-40°Cにもなるそうです。一方、W-の後半の数値は、100°Cでの動粘度を表したものであるそうです。
昔(30年位以前)は、マルチグレードというエンジンオイルはなく、総てシングルグレードでしたから、夏と冬でエンジンオイルを取り替え、低温時の始動性を確保していたものでした。また、消防署の冬場においては消防車のエンジンオイルパンを練炭や赤外線ランプで加温し、始動性を確保していました。そんな、シングルグレードオイルの時代と比べると、極寒冷地では別でしょうが、今やマルチグレードオイルが当たり前ですから、今や昔の話です。
但し、エンジンオイルの性能は、5W-40の様なマルチグレードの指標だけで決められるものではありません。オイルには鉱物油、植物油、化学合成油がある様ですが、何れにしてもその成分の性能が大事なのでしょうが、一般人には伺い知ることはできません。
何れにしても、エンジンオイルは使用中にその諸性能が劣化するものであり、メーカーで指定される期間(走行距離)毎に交換する必用があるのだろうと思います。交換サイクルとしては、メーカー毎に決められますが、ガソリン一般エンジンで1~1.5万キロもしくは1年毎、ターボ付き車で5千キロもしくは半年毎位のケースが多い様です。
ちなみに、私の乗ってるBMW(M54エンジン)では、噴射パルスを積算して交換までの残距離を表示している様で、オイル交換しリセット処理直後の残距離は2.5万キロと比較的長く感じられるものです。
なお、ディーゼルエンジンを触ったことがある方なら判ると思いますが、エンジンオイルは直ぐ真っ黒になってしまいます。これは、ディーゼルの排ガス対策の一つでもある、PM(カーボン粒子物質)の多さ故のことで、ピストンを吹き抜けた多量のPMによりエンジンオイルが汚損されることによるものです。最近のコモンレールの多段式噴射システムを使用したエンジンでは、幾らか減っては来ているのでしょうが、ガソリンエンジン並ということにはならないでしょう。
ところで、車両保険絡みでエンジンが破損して等として相談を受けることがありますが、ご存じの通り、保険では「偶然、外来の事故」が前提であり、「自然損耗」による、いわゆる「故障損害」は除外されています。
写真は、そんな相談を受けて、立ち会った車 両です。エンジンは辛うじて動いていますが「カタ、カタ」と回転に同期した大きな異音を生じています。オイルパンを外すと、明らかにメタルが大きく摩耗しているのですが、その原因はオイルストレーナー(吸い込み口)の目詰まりであることは一目瞭然です。一体、何キロオイル交換しないまま走っていたのやらというものです。
追記
路面の突起にオイルパンをぶつけてオイル漏れを起こし、エンジンが壊れた様なケースは保険の対象になります。それとか、シフトを間違えて、ミッションやエンジンを損壊した場合も対象となるでしょう。その判定は、アジャスターが行うことになるんですが、何処まで正しく判断できる者がいるのか大きく不安を持つところです。
但し、そうだからといって保険加入者の方は、悪用してはいけませんよ。悪質な場合は詐欺罪として告訴を受ける可能性があります。