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定期点検整備のこと その3(ISCVは今や昔のメカだが・・・)

2022-02-22 | 車両修理関連
定期点検整備のこと その3(ISCVは今や昔のメカだが・・・)
 今回は先回記した、ブローバイガス還元装置で説明をしきれなくて、ちょっと前のクルマまで装着されていて現在でも比較的トラブルが多いISCV(アイドルスピードコントロール)について記してみたい。

 このISCVだが、アイドル回転を自動制御するのだが、冷間時はエンジンオイルの粘土も高く回転抵抗が大きいなどからファーストアイドルを制御したり、ACオンでコンプレッサー負荷が加わることでアイドルアップしたりという、場面に応じたアイドル目標回転数を制御する機構だ。

 そもそも、筆者みたいに昔の修理屋は、現在の様なデジタル制御ECUの以前のアナログ制御時代のEFIとかEGIというのを触れてきた世代だが、この昔のEFIエンジンでは、冷間時はエアバルブという別デバイスが付いていて、バイメタルで副通路が開いてファーストアイドルを生み出す機構があり、アイドル回転はこのエアバブルのもれ流量でほぼ規定回転ろなるというものだった。これらを、デジタル制御になると共に、ISCVという機構を付けることで常に状況に応じた目標アイドル回転数に自動制御する機構が付加されたのだったが、それも現代車では今や昔のメカになりつつある。つまり、現代販売されている車両では、ISCVという付加機構はなくなっているのだが、それでも、ファーストアイドルも行えるし、ACオンでのエンジン回転制御も行っている。

 それでは、なぜ現代車ではISCVなくてもその様な制御ができるのか、「その差異は何処で生まれたか?」と問われて、答えられるだろうか。これは、スロットルバイワイヤー化されて、スロットルバルブをECUからの信号で直接駆動できるために、従来のISCVに代わってアイドル回転の微少スロットル開度を自動制御することで目標アイドル回転数を自動制御できる様になっているためで、もうISCVは必用なくなってしまったということなのだ。

 しかし、現代新車はほぼすべてのガソリンエンジン車がスロットルバイワイヤ化されてはいるものの、使用過程車の中にはスロットルワイヤー付きで、ISCV付きのクルマも未だ多くあり、整備知識としては持っておく必用があるだろう。

 このISCVだが、スロットルワイヤー付き車の場合、アクセルベダルを離した状態では、スロットルバルブはほぼ全閉のストッパーに当たる位置で、電気的なスロットルポジションセンサー接点がONになっている。このスロットルバルブ全閉でも、アイドル回転を保つ吸入空気の副通路が備えられ、ここにISCV機構が付くのだ。ISCVとしては、ステップモーター式とか電磁ソレノイドでロータリーバルブを動かす方式などがあるが、副通路の開度面積を可変させて、アイドル回転数を目標回転数にフィードバック制御する方式だ。そして、この副通路のバルブ部に先回説明のブローバイガスを原因とするオイルの炭化物とか粘性物が堆積して、バルブの動きを阻害して、エンストを起こす様なクルマというのが結構ある。また、現在のスロットルバイワイヤ式でスロットルバルブを直動させてのアイドルスピード制御も、スロットルボデー内にカーボン堆積が増えると同様のトラブルは出る可能性があるが、旧来のISCVは副通路が狭いところで起きていたので、それよりは同様のトラブルは出難くなっているとは思える。


 ここで、ステップモーター式だが、これは多極のフィールドコイルが独立しており、それぞれをECUで独立して順々に電位を移すことで、一定角度づつ回転を生み出し、そこにネジを切ったバルブが付いていて、副通路の開度を広げたり狭めたりできる方式だ。同様のステップモーターは、ヘッドライト内の光軸調整機能にも利用されていたり、スピードメーターとかタコメーターの指針を細かく広い範囲で精度良く動かす機構でも使用されている方式だ。

 もう一つのロータリーバルブ方式だが、ソレノイドの電磁力を制御することで、ISCVの場合は副通路の開度を変化させているのだ。
 ところで、現代車ではカム進角機構が付くのが常套化しているが、このバルブタイミングの進角機構は油圧を使用しているが、先に記したソレノイドの電磁力で可変させて通過油量を制御する機構としてスプールバルブが多用されている。その倫理としては、このソレノイドを利用して動くスプールバルブをカム進角機構を通った油圧の逃げ側に設置し、進角位置を電磁石の強弱で制御する方式として利用されている。
 そこで、どうやって電磁石の強弱を変えるかの原理だが、PWM(パルスワイズモジュレーション:パルス幅変化)制御(もしくはデューティー比制御)という、一定のパスル波形の電源を与えておいて、ONとOFFの比率を変えることにより、電磁石の強弱を変えてやることで、バルブがリターンスプリングに抗して引き寄せられる力を変化させることで、通路面積を変えることで行っている。
 何れにしても、ステップモーターにしてもソレノイド可変方式にしても、絶えず現在回転数なり、カム進角であれば、カムポジション値と比較して、絶えずフィードバック制御し続け、その極面の目標値に近づける制御を行っている。

 ここで、オイル交換を長期間しないままのメンテ不足だとか、使用環境が極端に短距離短時間の運転を繰り返す様な運転を繰り返す様な運転状態においては、エンジンオイルがゼリー状に固形化して来てヘドロの様にスラッジが堆積してくるという現象があり、この現象からのトラブルというのは結構知見するところだ。この様なスラッジ多の状態で使用すると、ブローバイガスもオイルセパレーターで空油が分離しきれず、ISCV関係の制御機構に電気的には問題なくても、スラッジから生成される汚れが堆積し、機械的な動作が阻害されることで、アイドル回転が低下し過ぎてエンストするとかのトラブルが出てくる。また、カム進角用のスプールバルブ入口の金網を塞ぐ様になると、カム進角が高速用進角が低回転で戻らずやはりアイドル効かずとか低速不調と云う事例も生じる事例がある。

#ISCVのトラブルとブローバイガスとの関係


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