トヨタもステアバイヤ投入(レクサスRZ)
バイワイヤとは、アクセルやブレーキペダルの入力装置とスロットルバルブやホイールシリンダとの間に、制御用のコンピューターを介在させてその動きを非線形もしくはプログラマブルド(ソフトウェア的)に制御するという思想なのだろう。今やガソリンエンジンのスロットルバイワイヤーは軽自動車でも付いていて当たり前、ブレーキ系も装備車種が増えつつある。そして、ステアのバイワイヤも既にスカイラインV37(2013以降)の一部車種で投入済みだった。
トヨタのステアバイワイヤも、本ブログの1/16付け記事で、トヨタ系サプライヤである東海理化がステアバイワイヤを前提にした左右おそらく45度程度までの回転しかさせないでステアさせる、円形でないステアリングを技術発表していたので、将来的登場すると想像していた。ところが予想より早く、近日販売開始予定のレクサスRZ(全車BEV)の一部グレードに、このステアバイワイヤのコラムユニットと、おそらくステアリングギヤはジェイテクトのラック&ピニオンにモーター直付けのギヤユニットで、ステアバイワイヤを投入するという。
先行投入の日産スカイライン(V37)では、従来通り円形のステアリングホイールで、システム正常時のみ、クラッチ機構でステアリングホイールとギヤの接続を切り、ステアバイワイヤを動作させていたが、今回のトヨタの場合、円形でないステアリングなので、一周を超えて回転させるのは困難で、スカイラインの様なクラッチ機構によるフェイル装置は付かないのかもしれない。その場合、してアリング系に異状があれば、走行中なら止まるし、停止中は走行開始できない。
ところで、フォークリフトなどを除いて一般的なクルマでは、前輪が操舵輪として左右に切れることで、左右のコーナリングなどの旋回半径値を支配するのだが、この前輪切れ角は最大値で外側輪と内側輪ではアッカーマン理論という原理で、外側輪より内側輪の方が多く切れる仕組みになっている。その切れ角の最大値は、最小回転半径に影響するので、なるべく大きくしたいところだが、前輪ホイールハウス容積とかサイドフレームなどとの干渉の問題もあり、外側輪で35°、内側輪で45°程度までのクルマが一般的だろう。
ここでは、この中間値として仮に左右40°が前輪の最大切れ角という前提で話しを進めたい。この前輪の左右への切れ角に対し、ステアリングのロックツウロックという呼び方をするが、ステアリングを片側一杯から反対側まで一杯切り回す回転角を比べてみたい。車種により違いがあるが、小さめな車両(スポーツ車)で2.0回転(720°)、普通の乗用車では3.0回転(1080°)、大型バストラなどでは5.0回転(1800°)程度と結構な違いがある。この理由は、運転感覚をスポーティにとか、高速での切り過ぎを予防するとか、万一パワーアシスト機構が効かなくてもなんとか手動だけで切れる安全性とかに理由があるのだろう。
ここで、ステアリング機構の総減速比(オーバーオールレシオ)を前輪切れ角左右40°、つまり左右合計80°に対し、ステアリングホイールのロックツウロックは3.0回転(1080°)とすれば、1080/80=13.5となる。つまり、ステアリングホイールを90°切った場合、その13.5分の1が前輪の切れ角で約6.7°となることが判る。
ここで、今回販売開始されるレクサスRXの異形ステアリングホイール形状から、最大のステアリング切れ角が左右40°程度で、前輪操舵角も左右輪平均値で40°だとすれば、まともに直結されていれば、オーバーオールステアリングレシオは1.0であり、おそらくF1をレーシングカーを凌ぐ長クイックなステアリングで、僅かなステアリングホイールの切り方不適正が、走行安定性に与える影響は大きく、危険この上ないものとなってしまうだろう。こんなことは誰でも予想が付くことで、そうならない様に様なソフトウェアとしての制御ロジック(アルゴリズム)だとか、ステアリングに生じさせる疑似反力を作り出す反力生成メカニズムとしてのアクチュエーターにより、切り過ぎとか切り不足を補っているのだろう。
細かい仕様は外秘で正式公開なされることはないだろうが、まず初期舵角として直進位置からのステアリング舵角の変化率(微分値)を検出することで、どの程度の速度でステアリングを切り込もうとしているのかを予測する。そこで、反力を増加させつつその値を検出し、運転者が切り増しを止めたことで、反力が反転減少することで前輪操舵角をその値に維持する。当然、安全性として、速度と前輪切れ角で決まる旋回速度の限界値は、基本データとして持っており、それを越えることはない前提で制御している。
また、降雨とか雪上や氷結路などの低μ路における車両の旋回限界(車両のヨー(Z軸周りの)微分値)は、従来のスタビリティ制御(DSCなど)と同様に検出しているので、過度にヨー値が増加した場合は、そのヨー微分値を抑えるべく個別ブレーキの加圧制御、スロットルの閉動作、ステアリングの切り戻しなどを行う。
ただ、既にステアバイワイヤのダブルレーンチェンジテスト(並列2車線で前方の障害物を認識後、急制動しつつつステアリングで回避し切り戻して並列車線で安定する評価)などで、まあまあ妥当な評価を行う清水和夫氏は、スカイライン(V37)のステアバイワイヤは、限界に至るともうムチャクチャでクルマが何処に行くか判らないと評価している。また、ステアバイワイヤ以前でも、BMWのダイナミックステアとかトヨタのVGSなど、ステアリング角と前輪操舵角を非線形にギヤ比を変える機構があったが、市場評価としてあまりに自然観がないとして、あまり高評価を受けていなかったというところがある。
この機構は、いずれにせよ完全自動運転でなくとも、ステア操作を大幅に自動運転化させる方向での制御と連動させるという意味では、その流れに沿う機構だと想像できるものだ。
【従前の記事】
ステアバイワイヤ・その未来は車両メーカーのボデー製造サプライヤー化する
2022-01-16 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/cbc272401da9e9338591b62ac8958fa7
ソーズ記事:https://carview.yahoo.co.jp/news/detail/0b6758a2d2c6fafd3083be5ecfa4ebe22598726d/photo/?page=3
#ステアバイワイヤー #限定ステアリングホイール角での操舵輪角制御
バイワイヤとは、アクセルやブレーキペダルの入力装置とスロットルバルブやホイールシリンダとの間に、制御用のコンピューターを介在させてその動きを非線形もしくはプログラマブルド(ソフトウェア的)に制御するという思想なのだろう。今やガソリンエンジンのスロットルバイワイヤーは軽自動車でも付いていて当たり前、ブレーキ系も装備車種が増えつつある。そして、ステアのバイワイヤも既にスカイラインV37(2013以降)の一部車種で投入済みだった。
トヨタのステアバイワイヤも、本ブログの1/16付け記事で、トヨタ系サプライヤである東海理化がステアバイワイヤを前提にした左右おそらく45度程度までの回転しかさせないでステアさせる、円形でないステアリングを技術発表していたので、将来的登場すると想像していた。ところが予想より早く、近日販売開始予定のレクサスRZ(全車BEV)の一部グレードに、このステアバイワイヤのコラムユニットと、おそらくステアリングギヤはジェイテクトのラック&ピニオンにモーター直付けのギヤユニットで、ステアバイワイヤを投入するという。
先行投入の日産スカイライン(V37)では、従来通り円形のステアリングホイールで、システム正常時のみ、クラッチ機構でステアリングホイールとギヤの接続を切り、ステアバイワイヤを動作させていたが、今回のトヨタの場合、円形でないステアリングなので、一周を超えて回転させるのは困難で、スカイラインの様なクラッチ機構によるフェイル装置は付かないのかもしれない。その場合、してアリング系に異状があれば、走行中なら止まるし、停止中は走行開始できない。
ところで、フォークリフトなどを除いて一般的なクルマでは、前輪が操舵輪として左右に切れることで、左右のコーナリングなどの旋回半径値を支配するのだが、この前輪切れ角は最大値で外側輪と内側輪ではアッカーマン理論という原理で、外側輪より内側輪の方が多く切れる仕組みになっている。その切れ角の最大値は、最小回転半径に影響するので、なるべく大きくしたいところだが、前輪ホイールハウス容積とかサイドフレームなどとの干渉の問題もあり、外側輪で35°、内側輪で45°程度までのクルマが一般的だろう。
ここでは、この中間値として仮に左右40°が前輪の最大切れ角という前提で話しを進めたい。この前輪の左右への切れ角に対し、ステアリングのロックツウロックという呼び方をするが、ステアリングを片側一杯から反対側まで一杯切り回す回転角を比べてみたい。車種により違いがあるが、小さめな車両(スポーツ車)で2.0回転(720°)、普通の乗用車では3.0回転(1080°)、大型バストラなどでは5.0回転(1800°)程度と結構な違いがある。この理由は、運転感覚をスポーティにとか、高速での切り過ぎを予防するとか、万一パワーアシスト機構が効かなくてもなんとか手動だけで切れる安全性とかに理由があるのだろう。
ここで、ステアリング機構の総減速比(オーバーオールレシオ)を前輪切れ角左右40°、つまり左右合計80°に対し、ステアリングホイールのロックツウロックは3.0回転(1080°)とすれば、1080/80=13.5となる。つまり、ステアリングホイールを90°切った場合、その13.5分の1が前輪の切れ角で約6.7°となることが判る。
ここで、今回販売開始されるレクサスRXの異形ステアリングホイール形状から、最大のステアリング切れ角が左右40°程度で、前輪操舵角も左右輪平均値で40°だとすれば、まともに直結されていれば、オーバーオールステアリングレシオは1.0であり、おそらくF1をレーシングカーを凌ぐ長クイックなステアリングで、僅かなステアリングホイールの切り方不適正が、走行安定性に与える影響は大きく、危険この上ないものとなってしまうだろう。こんなことは誰でも予想が付くことで、そうならない様に様なソフトウェアとしての制御ロジック(アルゴリズム)だとか、ステアリングに生じさせる疑似反力を作り出す反力生成メカニズムとしてのアクチュエーターにより、切り過ぎとか切り不足を補っているのだろう。
細かい仕様は外秘で正式公開なされることはないだろうが、まず初期舵角として直進位置からのステアリング舵角の変化率(微分値)を検出することで、どの程度の速度でステアリングを切り込もうとしているのかを予測する。そこで、反力を増加させつつその値を検出し、運転者が切り増しを止めたことで、反力が反転減少することで前輪操舵角をその値に維持する。当然、安全性として、速度と前輪切れ角で決まる旋回速度の限界値は、基本データとして持っており、それを越えることはない前提で制御している。
また、降雨とか雪上や氷結路などの低μ路における車両の旋回限界(車両のヨー(Z軸周りの)微分値)は、従来のスタビリティ制御(DSCなど)と同様に検出しているので、過度にヨー値が増加した場合は、そのヨー微分値を抑えるべく個別ブレーキの加圧制御、スロットルの閉動作、ステアリングの切り戻しなどを行う。
ただ、既にステアバイワイヤのダブルレーンチェンジテスト(並列2車線で前方の障害物を認識後、急制動しつつつステアリングで回避し切り戻して並列車線で安定する評価)などで、まあまあ妥当な評価を行う清水和夫氏は、スカイライン(V37)のステアバイワイヤは、限界に至るともうムチャクチャでクルマが何処に行くか判らないと評価している。また、ステアバイワイヤ以前でも、BMWのダイナミックステアとかトヨタのVGSなど、ステアリング角と前輪操舵角を非線形にギヤ比を変える機構があったが、市場評価としてあまりに自然観がないとして、あまり高評価を受けていなかったというところがある。
この機構は、いずれにせよ完全自動運転でなくとも、ステア操作を大幅に自動運転化させる方向での制御と連動させるという意味では、その流れに沿う機構だと想像できるものだ。
【従前の記事】
ステアバイワイヤ・その未来は車両メーカーのボデー製造サプライヤー化する
2022-01-16 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/cbc272401da9e9338591b62ac8958fa7
ソーズ記事:https://carview.yahoo.co.jp/news/detail/0b6758a2d2c6fafd3083be5ecfa4ebe22598726d/photo/?page=3
#ステアバイワイヤー #限定ステアリングホイール角での操舵輪角制御