私の思いと技術的覚え書き

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ピエゾとは

2013-01-05 | 技術系情報
 最近、クルマ用のデバイス部品として聞かれる様になったものにピエゾ素子があります。これは圧電素子と呼ばれるもので、圧電体に加えられた応力(振動)を電圧に変換するセンサーとして、また圧電体に電圧を印加して圧電体の変位を利用するアクチュエーターとしての機能を利用したものの二種があります。

 このデバイスは、古くから、イヤホンやマイクに利用されていました。クルマ用として初めてピエゾセンサーが聞かれる様になったのは、エンジンのノッキングセンサーではなかったでしょうか。これは、加速時のノッキングを検出して点火タイミングをリタードさせ、ノックが収まるとアドバンスドさせるというフィードバック制御を行うことで利用されています。

 その後、過去の一部車種(初代セルシオBタイプ)にピエゾTEMSというのがアクチュエーターの利用として採用されたことがありました。1枚辺りのピエゾ素子の電圧変位は極小さいものですので、数十枚を積層して減衰力切り替えの油路を極めて短時間に切り替えるというものでした。しかし、その後ダンパーの可変アクチュエーターにピエゾ素子が使われたとは聞きませんから、余りよろしい効果はなかったのかもしれません。

 最近聞かれるのは、ディーゼルもしくはガソリンの直噴ノズル用としてのピエゾアクチュエーターです。従来、これら電子制御噴射のノズル弁の開閉は、ソレノイド(電磁石コイル)が利用されていました。しかし、コイルの場合は巻数が多いほどインダクタンス(自己誘導作用)が多くなり電流が飽和するまでの時間が遅延してしまいます。そこで、ある程度巻数を少なくして直列にレジスタ(抵抗器)を入れることで、なるべく動作タイムラグを回避して来ました。しかし、ピエゾ素子の場合は、反応が極めて瞬時(ナノ秒:10億分の1)ですので、1サイクル当たり5段の多段噴射などが実用化される様になった理由の一つでもあります。

 なお、ピエゾ素子に駆動電圧を印加した場合の変位量はミクロン単位(千分の1)と小さいため、インジェクター用のアクチュエーター内には、ピエゾ素子数十枚が積層され、なるべく大きなストロークを生み出す様に考慮されています。これでも駆動ストロークは30とか40ミクロン程度の様です。一方、噴射ノズルの開弁ストロークとしては、コンマ2(0.2mm)程度が必用な様です。従って、ピエゾアクチュエーターで、噴射ノズルをダイレクトに駆動することは不可能で、実際には油路の切り替えにより噴射圧力がリターンスプリングに打ち勝つことで噴射ノズルの開閉を行っているのです。



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