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トヨタにピンチ到来か…「EV大逆風」の”最大の落とし穴”が発覚!EVに乗ってみてわかった、「EV時代は意外と早くやってくる」と確信した3つの現実

2024-07-23 | コラム
トヨタにピンチ到来か…「EV大逆風」の”最大の落とし穴”が発覚!EVに乗ってみてわかった、「EV時代は意外と早くやってくる」と確信した3つの現実
7/23(火) 7:34配信 現代ビジネス

戦略コンサルティング業界に古くから伝わる失敗事例があります。

世界で最初にコンピュータが作られたときの専門家による未来予測では、世界のコンピュータ需要は5台だと明らかに間違った推計がされました。

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当時は、コンピュータは軍が弾道計算をするための用途しかなく、その用途のために天文学的に高価な機械を買える国は5ヵ国しかなかったからです。

ゼロックスが登場した当時も、コピーマシンの需要予測は実際の未来よりも大幅に下回った数字が算出されました。コピーマシンがなかった時代、コピーは一枚か二枚しか作成できないのが常識でした。

カーボンコピーと言ってタイプライターで書類を作るときにプリント用紙の間にカーボン紙を挟むことで、一度に二枚(ないしは三枚)の書類をタイプしていたのです。

メールの宛先にCCと入れるのは、このカーボンコピーの名残です。

コンサルタントがコピーの需要予測をした際には、カーボン紙の売上高から計算して「未来のオフィスで使われるコピーの枚数はこの程度」と考えたのです。

実際はコピー機が便利だとわかったおかげで、オフィスにはコピーした書類が大量に溢れることになりました。

この失敗事例からわかることは、実際に使ったことがない人が想像する未来予測というものは大きく外れるということです。

それでEV、つまり電気自動車の話をしたいと思います。

今、EVにはちょっとした逆風が吹いている様子で、自動車業界ではやや関心が薄れ始めています。ところがその動きを敏感に感じて下落していたはずのテスラ株は、いつのまにか高騰を始めています。

EVユーザーから見た「EVの近未来」
テスラのイーロン・マスクCEO。テスラ株が上昇しているウラには、EV時代への期待がある Photo/gettyimages

投資家が捉えているのは「EVの逆風は政治的」で、一時的な現象だということです。

長期的には脱炭素で世界全体にEVシフトが進むシナリオには変更がなく、かつ、その未来ではEVだけでなく充電インフラやロボタクシーなど関連ビジネスでもテスラが市場を支配しそうだと投資家が判断しているのです。

そもそもEVへの逆風は、EVが普及してほしくない人、あるいはEVに乗ったことがない人がまき散らしている現象です。また、EVが進むと考えている人も、前提として「EVはこのままだとゆっくりとしか普及しないだろう」と考えているようです。

しかし、その主流の予測は、私には論点がずれているように思えます。理由は私が2台のEVを利用している、EVのヘビーユーザーだからです。

EVを持っていないひとたちが「ユーザーニーズはこんなものだろう」と考えて投資をしている現状が、ユーザーから見たニーズとかなりずれているのです。

EVの商品開発だけでなく、充電インフラについても大きく間違った想定で事業開発が行われているように思えて仕方ありません。この記事ではEVビジネスに関わる人による未来予測のどこが、ピントが外れているのかをまとめてみたいと思います。

EVを持っていないひとたちが考えるEVビジネスの要点は、以下の3点のようです。

1.EVは航続距離が短いので、充電インフラが整わないと普及しない

2.EVが売れるには航続距離をどう伸ばし、充電時間をどう短縮するかが勝負だ

3.EV時代が来てもモビリティ需要はそれほど変わらない

実は3つとも、EVのヘビーユーザーの視点でみるとピント外れです。具体的にEVライフというものがどのようなものか、体験者の立場で紹介しましょう。

【EVの現実1】充電ステーションはあまり使わない
私はテスラのSUVであるモデルYと、中国のBYDの小型車のドルフィンの2台のEVを日常的に使っています。その経験でいうと、充電のために外部の充電ステーションを使う機会は日常的にはほとんどありません。

ここが、私が自動車をEVに変えてから一番快適になった点でした。それまで頻繁にガソリンスタンドに立ち寄っていた無駄な時間が、EVになってからゼロになった感覚です。

というのも自宅のエアコン用コンセントを改修してガレージに設置してもらった200Vのコンセントに差しておくと、夜中の間にEVはほぼ満充電されるのです。

モデルYの実走行可能距離はカタログスペックよりもやや低く420kmぐらい、ドルフィンも同じく390kmぐらいですが、日常生活で一日に走る距離は普段は数十kmで、やや遠乗りした場合でも100km程度というのがほとんどです。100km走った状態で夜帰宅して電源に差すと、だいたい4~5時間で充電レベルは満タンに戻ります。

一年の間で充電ステーションを使うのは自動車旅行で遠出するときだけで、私の場合は年に3~4回です。遠出は荷物がたくさん積めるテスラで出かけるのですが、たとえば東京から大阪まで旅行する場合には途中の浜松で一度、給電します。

これが面倒かというと実はそれほどでもなく、30分の給電時間の間に鰻を食べているとまた満タンに戻ります。ガソリンの給油が2分で済むのに対してEVの給電は時間がかかるといいますが、負担に感じるのはその程度です。

そしてここが一番のポイントですが、そのような充電ステーションでの給電は普段は使わない。理由は価格が高いからです。

テスラの充電ステーションであるスーパーチャージャーの価格は比較的頻繁に改正されていますが、いまのところざっくり言えば家庭で給電する倍の価格がかかるというのが実感です。東京から浜松まで走って300km分くらいを給電して2800円ぐらいという感覚。利用者としては、価格の高いスーパーチャージャーはなるべく使いたくないというのが本音です。

つまりガソリンスタンドに代わる充電ステーションビジネスの市場は、想像するよりもずっと小さいと予測されるのです。

【EVの現実2】充電時間もボトルネックではない

このような使い方だとそもそも航続距離を気にする必要などほとんどありません。400kmを超えるときだけあらかじめ調べておいたスーパーチャージャーで給電するだけで、通常の充電はほとんどの場合、夜間、駐車中に充電を終えるのです。

旅先ではホテルの充電設備を使うこともよくあります。

政府の普及施策のおかげで、最近ではEVの充電器を設置したホテルが探せば結構あります。それで面白いところなのですが、大手のホテルではこの充電器を無料で開放しているところが結構あります。

これは計算してみるとその経済性がわかります。

先ほどのスーパーチャージャーと同じようにホテルの充電器で充電したとして、ホテルに請求させる電気代は半額の1400円程度です。私が泊まるホテルの場合、宿泊料が3万円で、しかも市内繁華街の立地なので宿泊するにもかかわらず、駐車料金も1500円ほど追加で支払います。その分、充電代は無料サービスしてもホテルの側はサービス程度の負担にしかならないというわけです。

そしてここが面白いところですが、その前提だとホテルも本格的な充電設備は必要なく、200Vのコンセントで十分です。将来を考えると充電ステーションが1つか2つあるよりも、200Vのコンセントが10個あったほうが需要をカバーできます。実際、私が軽井沢でよく泊まるホテルでは、そのように充電設備をすでに配置しています。

【EVの現実3】安いのでどんどん乗るようになる
さてEV2台で始めたEVライフで一番大きく変わったのが、とにかく車で外出することが増えたのです。

これは昨今の世情と真逆の行動かもしれません。世の中ではガソリン代の高騰で、節約のために車での外出を控える消費行動が増えています。ところがEVに変わると、この行動が逆になるのです。

私は、以前はSUVとしてはスバルのレヴォーグ、街乗り用にはトヨタのヤリスを使っていました。どちらもガソリン車で、燃費は実燃費でだいたいリッター10kmあたりでした。

ちなみに一般的には大きなレヴォーグのほうが燃費が悪いはずですが、私の使い方だと渋滞の多い都心で乗るヤリスと、長距離で高速道路を飛ばすレヴォーグが結果的にだいたい同じ燃費になったものです。

今人気のハイブリッド車はガソリン車よりも倍、経済的な燃費で走れます。実燃費でいうと、プリウスやSUVのハイブリッド車でリッター18kmぐらいはいくようです。

そしてちょっと複雑な計算が必要なのですが、私のEVについて実際半年ぐらいの期間で使った電気使用量を、政府の補助金が終った直近の電気料金で計算したうえで、燃費コストをガソリンの直近の市場価格で換算をしてみます。

するとガソリン1リットルを買うお金で、テスラのモデルYは36kmとハイブリッド車の約2倍の距離を走ることができていました。さらにBYDのドルフィンの場合は42kmと圧倒的に長い距離を走ることができます。ちなみにカタログスペックだと50kmぐらいになる計算ですが、実際走れる距離はそれよりも短いという事情です。

この燃費の差は、要するに税金がたくさん入っているガソリンと違い、素のコストで販売している電気のほうがずっと安いからです。面白いところはガソリン車と真逆で、街乗りをしていて頻繁に信号で止まるような使い方をしていても、EVの燃費はいいのです。逆に高速にのって新東名のように時速120キロで走っていると、電気をより多く消費して燃費は悪くなります。

いずれにしても以前のガソリン車よりもEVの燃費が4倍だというのは、利用者としての財布の紐の感覚がまったく違います。軽井沢までドルフィンで走ったときは行きの電気代は450円でした。しかも帰りの電気代はホテルで給電したのでタダです。イチ消費者感覚では、いくら外出してもお金がかかっている感覚はありません。

「EVの普及はまだ先」の落とし穴
さて、この記事は実はここからが本題です。

かつてコンピュータが登場したときやゼロックスが出現したときに未来予測の専門家が需要を見誤ったのと同じで、今、来るべきEV時代を予測するひとたちはそのモビリティについての前提を大きく見誤っている可能性があります。

それについては、後編記事『「EV大逆風」に隠された日本政府の不都合な真実…!「EVヘビーユーザー」にハッキリと見えた、EV反対論者がハマった「3つの落とし穴」』でじっくり解説しましょう。鈴木 貴博(経営戦略コンサルタント)

#トヨタにピンチ到来か…「EV大逆風」の”最大の落とし穴”が発覚!


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