私の思いと技術的覚え書き

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リコールに種々思うこと

2017-09-23 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 つい先日、スズキアルトがワイパーモーター関連で23万台余のリコールが広報された。近年リコール数が多いなと感じさせられるが、20数年前の呆れかえる三菱自動車の大量イコール隠し以降、各メーカーは積極的にリコールを報知する様になったのが大きな要因の一つだろう。それと、一度のリコールでの対象台数が極めて多くなる傾向があるが、多車種での部品共用を最大限に追及しているがためであろう。

 しかし、米国のある統計資料(iseecars.com)によると、過去30年の累計で47300万台販売されたのに対し、リコール対象台数は52700万台になるという。米国内でのことだが、販売台数以上にリコール台数は多いのである。つまり、1台のクルマが複数回以上のリコールを生じているという訳だ。

 何故にリコールが増加するのかは先に記した要因もあるが、新型車の開発プロジェクト開始から販売開始までのリードタイムの圧縮という面も間違いなくあるであろう。昔であれば、走行耐久テストを蓄積し、問題要因を除去しつつ販売となっていただろう。しかし、今や台上加振機による試験や各種シミュレーションにより、実走としての評価は圧縮され過ぎてやしないのだろうか。

 それと、リコール内容を概観するに、これが英知を集めた大メーカーの設計かと驚く様な内容に驚かせられるものがある。ちょっと前の事例だが、パワーステアリングが電動化(以下EPS)されつつある中、プリウスの2代目だったと思うが、この様な安物レベルのEPSはコラム部にアシストモーターが付くことになる。高級志向のEPSや油圧PSではアシスト機構がラックギヤに付き操舵フィーリングを確保している訳だ。ところが、2代目プリウスでは、ステアリングメインシャフトとギヤを連結するインターミディトシャフト(両端に小型クロスジョイントを装着した短いシャフト)を従来の油圧PS用のものを流用してしまったのだ。当然据え切り等を負荷を繰り返せば、コラムEPSでアシスト力は、インターミディトシャフトのクロスジョイント部に過負荷として作用するから、亀裂が生じるという小学生でも判りそうなお粗末な内容には唖然としたものだ。当該部品を作ったのは何れかのサプライヤーだろうが、それを車両設計として量産指示したのはメーカーだから、メーカー自体がリコール費用を負担しただろう。しかし、今回のスズキのワイパーモーターとか部品の設計もしくは製造に関わる問題は、サプライヤー負担になる場合も多かろう。総額1兆円を超えるというタカタの欠陥エアバッグによりタカタは倒産を免れない様だ。サプライヤーはメーカーに原価低減、高品質、納期厳守と支配され、リコールを生じて賠償負担を負うことにでもなれば、泣くに泣けないという事態になるだろう。

 もう一つ、これは前にも記したことだが、輸入車のリコール対応への甘さというものを感じざるを得ない。輸入車の場合、本国と季節環境や走行環境が異なるから、例え本国では問題が少なくても、我が国の様な多湿な環境などにおいて、同一車種で類似の故障が発生する場合がある。多くの場合、単なるウィークポイントだと判じられユーザー負担で修理がなされているが、メーカーの設計もしくは製造に起因する場合も多いと感じる。これが事故や火災に結び付かないものや高額な修理費にならないマイナーなレベルならともかく、かなり危険と思われる故障多発でもリコールにならないという問題がある。この件は国土交通省の担当官ともちょっと話したが、ユーザー情報などから疑義を持つと国産車であればメーカーに問いただすとのことだ。しかし、輸入車では輸入代理店(もしくは日本法人)を通じてのメーカーへの照会ということになり、あいまいさが生じる余地を生むのだろうと感じる。但し、米国は厳しい対応で輸入車にも対応している様で、タカタやVWの端緒が米国であった様に、米国リコールを横目で見て、国内リコールとなっている事例は多い様だ。だが、米国と日本では環境が違い、すべてが米国の後追いで補完できるとは限らないだろうということだ。

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