私の思いと技術的覚え書き

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『日の丸半導体かく敗れたり』を読んで思う

2008-08-20 | コラム

 過日読んだ文藝春秋9月号に掲載の手記ですが、「日の丸半導体かく敗れたり」に驚きと興味を持って接しましたので、そのことを記してみます。

 この手記者は小野敏彦氏という方で、本年4月まで富士通の副社長であった方です。本人の記述によれば、偽造手形騒動に巻き込まれ富士通を追放されたのだと記します。そして、具体的な調査を一切行わず「一身上の都合で辞職した」と発表した会社に釈然としない思いがあるのだと記します。ここまで読んで、会社も地位も私なんかの場合とは桁違いに高いけど、実に似たような仕打ちを受けているのだと驚きを持って読み進めた訳です。

 この富士通という会社ですが、コンピューターの世界で知らぬ者はない大企業です。現在の様にパソコンが普及する以前、この時代のコンピューターメーカーである、富士通、NEC、日立等は、その勢力は絶大なるものを誇っていました。しかし、時代は変わりコンピューターがパソコンやサーバー中心にダウンサイジングされて行くに従い、これらメーカーの凋落が目立ち初めました。そんな時代の変化の中で、富士通の企業カルチャー(文化)は、大きく変質していったのであろうと想像します。

 数年前だと思いますが、元富士通の社員であった方が、会社が大々的に取り入れた成果給の弊害を訴える暴露本を上梓し、話題になったことがありました。当時、私もこの本を読み驚きを感じつつ、この会社がそして日本の企業が病み始めているのだと感じたことがありました。小野敏彦氏の手記でも、成果給で云う目標管理制度の導入が、富士通のものづくりをダメにしたことは否定できないのだと記しています。そして、ものづくりが、如何に大切なことであるのかを力説しています。

 同手記で作者が記す、ものづくりのスピリットを示す記憶として、NHK番組プロジェクトXのことですが、私にとっても忘れられない放送がありました。それは、マツダのロータリーエンジン開発において、リーダーたる山本健一氏が述べたと云う「眉間の傷を恐れるな」という言葉のことです。これは「失敗を怖れるな」というチャレンジングスピリットを伝える言葉として、私には忘れられないのです。過去から、エジソンや本田宗一郎等々の偉大な成功者達は、多くの失敗から成功を導いてきたことが伝えられています。そして、その様な偉大な成功者達は、それぞれ言葉は違いますが、大いなるパッション、失敗を怖れないチャレンジングが如何に必要なことかを述べているのです。

 今、富士通に限らず日本の企業は病み始めているのだと感じます。この原因は種々あるのでしょうが、やはり高度成長時代から頂点を超え、下降曲線に差し掛かった故のことだろうと感じられます。しかし、この守りの姿勢として手記作者も記す、リスクを取らず自らの責任を回避する経営者およびリーダー達が生み出して行く日本の将来は、決して明るいものとは想像できません。




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