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BM社の驚くべき拡張実態

2023-07-15 | コラム
BM社の驚くべき拡張実態
 ビッグモーター(BM社)の保険金修理費水増し不正問題は、昨年中頃発覚し既に1年を経る。添付図はBM社のHPより切り出した新規出店状況だが、今日(7/15)オープンの青森八戸店を含め合計25店舗を増設新規オープンさせているのだ。つまり、対外的には一見非難されている様だが、いささかもその成長に陰りはない様に見える。

 いったい、この新規出店による拡大は、何処から資金が生み出されているのだろうか。普通なら不正発覚によるダメージで企業を縮小均衡(リストラクチャンリング)することはあっても、いささかも成長力に陰りを見せていないことは、驚嘆すべきこととして眺めなければならないだろう。

 最近になって、一般大手マスメディアもBM社の不正のことや、損保社が不正返金を求めているだとか、同問題で不利益を被った保険契約者への対応を始めたなどと報道を始めだした。しかし、この報道を私は冷ややかに聞いている。大手マスメディアは本問題をとっくに知っていたくせに、BM社のCM料とか損保社のCM料に忖度して、何ら非難の声を上げることはなかった。この今でさえ、BM社のCMは続いているのだ。

 それと、肝心要の損保は、善意の多数の契約者から、できるだけ低額の保険料を集め、偶然外来かつ急激な不慮の事故をリスクカバーするのが損害保険の基本理念であり、その点では損害保険会社とは民需企業であり利益追求せざるを得ないという宿命はあるものの、公益性を持つ企業として自覚しているはずだ。そのことが、保険会社の社是、社則では高らかに上げられているのだ。

 しかるに、今回問題を伝えるメディアも異常だと思っている。だって、不正を働いた社員が返金して、そのまま勤務し続けることはあり得ない。損保も不正をした代理店をそのまま代理店として継続させるとは、到底公平・公正という社会的使命を持つ企業としてあり得ないだろう。しかし、そのことには、気付いていても一切押し黙るもしくは批判しない損保もだけど、メディアも異常と思えるのだ。

 ここで、なんで公平・公正な支払いが求められるはずの損保が、今次のBM社の不正を知っても、縁切りできないのかを考えてみたい。

 別添表は、損保協会の各損保社の今次問題として気になる数値を抜き出し、私が独自にまとめた諸数値表だ。ここで、損保とは保険料に対する保険金支払い額の比を損害率(ロスレシオ)と呼ぶが、これは一般企業における売り上げに対する売値の比であり、これにより得られた値が粗利と云うことになる。実際の利益は、粗利から、固定費として機械設備費とか人件費広告宣伝費など経費を引いた残りが利益となり、これに対する法人税などが引かれて税引き後純利益となる。これの固定費とか人件費のことを損保では事業費と呼び、先の損害率と事業費率を加算したものをコンバインドレシオと称し、全体収保(100%)からコンバインドレシオ分を引いた残りが利益としての収支残率すなわち利益となる。

 この表でまず注目してもらいたいのは自動車保険の収保だ。主要損保の合計として3兆8千億程度がある。通販系の損保も総て加算すれば、自動車保険だけで4兆前後があると想定できる。そこで、今回のBM社が損保代理店として、計上していた収保は200億程度があることが報じられている。これは、先に述べた自動車保険の収保4兆に対し、たったの0.5%に過ぎない。その前提で、BM社が200億の収保に対して、損保の自動車保険の損害率は本表では48.3%と集計されたが、ここでは判り易い様に50%とすると、100億が粗利となることが判る。

 果たして、BM社が保険金水増し請求により幾らの不正保険金を受領していたのか、俄には判断できないが、それは幾ら何でもあり得ないことだが、仮に200億の収保の10%となる20億を不正取得していたと考えて見よう。それでも、BM社の損保の粗利は、200億の50%分である100億であるから、20億を引いても80億の粗利が出ることになってしまう。つまり、自動車保険の全契約で10%の不正請求が行われていれば、損害率としても10%が上がり、損保の経営を圧迫するが、いかな200億とはいえ、それは全収保に占めるたったの0.5%であり、BM社に不正に保険金を20億過払いしたところで、全体の損害率に与える影響は微々たるものになることが判るだろう。

 しかし、このことは、先に記した善良な契約者に対する公平・公正という理念と大きくかけ離れた所業となる。また、契約者の不信もそうだが、多くの修理業者は、請求した修理費を高いと値引き要求され続け、中にはこのままで払えないと支払いなきまま留置され続ければ、およそ資本力において劣る修理業者に勝ち目はない。

 このことを判っていて、口をつぐむ損保とかメディアに対し、国民は怒らなければならないだろう。ましては、マジメな修理工場は、正直者がバカを見るこの異常な実態を、強い者には巻かれるしかないと黙していてはいけないと思える。


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