時は30数年前のこと、当時では希少であったBMWのE24(6シリーズクーペ)とかE30(3シリーズセダン)などのボンネットを開け眺めると、いわゆるストラットタワーが前輪中心より当時の国産車よりかなり後方に位置していることに驚いた記憶がある。つまりキャスター角が大きくセットアップされていることが読み取れたものだ。
このキャスター角だが整備解説書などの上っ面の説明では、直進性を良くするものだが、大きすぎるとキャスターシミーというハンドル周方向の振動を起こすなどと記されている。間違ってはいないが、今一説明不足として補足したい。
ここで、左操舵を行った場合の旋回外側輪となる右前輪のキャンバー変化を考えてみたい。なお、直進状態のキャンバーはゼロと仮定する。前輪転蛇はキングピンアングルとキャスターアングルの2つの軸線に支配され、キャンバー角は変化していく。ステアリングの機構上、現実には不可能だが極端な例として、前輪が90°切れたと仮定して考えて見ると判り易い。すなわち、キングピンアングルの要素からキャンバーは+キングピン角に至る。一方、キャスター角の要素からはキャンバーは-キャスター角に至る。実際のステアリング切れ角としては、この1/3すなわち30°程度なのだが、キャンバーの増減は1/3程度で同じになる。
以上のことを理解した上で、キングピン角より大きなキャスター角を与えることで、旋回時にその能力の大半を支配する旋回外側輪のキャンバーをネガティブに制御する、すなわちボデーロールが生じるから対地キャンバーとして適度なマイナスキャンバーを与えるという思想がなせた訳だ。
このBMWを見てかどうか知らぬが、30数年前にトヨタからBMW並のハイキャスターである初代ソアラ(MZ10)が搭乗した。操舵感とか非常に良いが、タイヤのユニフォミティ(重量、寸法、剛性の均一性)に非常にデリケートで、高速振動とステアリングシミーが止まらないという現象を体験したことが思い出される。
そして、時は流れ1990年、欧州高級車にも匹敵する高速性能と無類の静粛性を持った高級セダン(しかもドライバーズカーとしての要素を残して)セルシオ(初代レクサス・UCF10)が搭乗した。このとき、その新型車解説書で、フォアラウフという言葉を初めて知った。つまりハイキャスターだが、ホイール軸心よりキャスター軸を後退させることで、実質のキャスターアクションによる直進性を与えるトレール量を少なくするという手法だ。このフォアラウフという言葉はドイツ語であり、彼の国はE24だとかE30の時代から、そのことを判って取り入れていたのかもしれない。
関連
サスペンション・ジオメトリーのこと
サスペンション・ジオメトリーを考える(その2)
このキャスター角だが整備解説書などの上っ面の説明では、直進性を良くするものだが、大きすぎるとキャスターシミーというハンドル周方向の振動を起こすなどと記されている。間違ってはいないが、今一説明不足として補足したい。
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以上のことを理解した上で、キングピン角より大きなキャスター角を与えることで、旋回時にその能力の大半を支配する旋回外側輪のキャンバーをネガティブに制御する、すなわちボデーロールが生じるから対地キャンバーとして適度なマイナスキャンバーを与えるという思想がなせた訳だ。
このBMWを見てかどうか知らぬが、30数年前にトヨタからBMW並のハイキャスターである初代ソアラ(MZ10)が搭乗した。操舵感とか非常に良いが、タイヤのユニフォミティ(重量、寸法、剛性の均一性)に非常にデリケートで、高速振動とステアリングシミーが止まらないという現象を体験したことが思い出される。
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