私の思いと技術的覚え書き

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オフセット衝突について

2015-07-28 | 技術系情報
 リアルワールドの事故では、まともな正面衝突(フルラップ)よりオフセット正面衝突の方が多いと云われています。その点で、各国の車両安全の試験団体(JNCAP、NHTSA、ADACなど)の衝突試験では、フルラップバリアに加えオフセットバリアテストが行われています。このオフセットバリアテストですが、運転席側の車幅の40%をバリアに対しオフセットさせ行われます。フルラップ試験と同一の55km/hで、片側の車体骨格だけで衝突エネルギーを吸収する訳ですから、車体変形量は増加します。その様な点で、フルラップ試験は、乗員の減速度(障害値)を試すテストあり、オフセット試験は乗員の生存空間の確保を確かめるテストであると云えます。

 さて、リアルな事故では衝突速度も異なるし、そもそもオフセット量が40%とは限りません。僅か5cm程度のオフセットで、車体外板をなめり擦り抜ける様に衝突する事例も多いですし。10~20cmという、いわゆる車体骨格(サイドフレーム)の強度部位を避ける様なオフセット衝突というのも随分多くあるものです。

 5cm程度の車体外板をなめる様な衝突では、外板パネルはそれなりに広範囲に損傷するものの、モノコック本体への損傷は低く、衝突での減速度も低く、まずエアバッグが作動することはありません。しかし、20cm程度のオフセットとなると、正面衝突では相互の前輪同士が衝突し、前輪を大きく後退させて、それがダッシュやフロントピラーを押し下げ後退させますから、サイドフレームで衝撃吸収しないだけにモノコック(キャビン)を大きく変形させる場合があります。ここまでのボデー変形を生じると、さすがに減速度も高く、一定のしきい値を超えればエアバッグが作動します。

 さて、リアルな事故においては、多様な衝突が生じるものですが、それを復元しようとなると、まずは幾ら要するのか、つまり見積が必用となってきます。前輪の後退はあるのか。あるとすれば、サスペンションは何処までの範囲(だいたいディーラーで構成パーツのすべてを計上)か、Aピラー、Bピラーの移動(変形)はどうか、ダッシュ、フロア、ロッカーパネルの波及はどうかといったところでしょう。

 ところで,Aピラーの損傷点検は、ドアの後退(リヤドアとのチリやストライカーとの当たり)で点検するのがセオリーですが、それがすべてではありません。外板をなめるような損傷を生じている場合、得てしてフロントドアの前端部を押し込んでいる場合が往々にしてあります。この様なケースでは、ドアインナーパネルが変形しドアが後退している場合が多いのです。つまりAピラーは移動していない(これも程度問題で極端にドアが後退するとヒンジ廻りを中心にこじられ沈み込む様な変形を生じる場合もある)のにAピラー変形大と誤認する様な、素人ディーラーアドバイザーやアジャスターは結構居ることを垣間見て来ました。

追記
 Aピラーの上記事例の如く点検するのを逆手に取って、こんな損傷具合で変形する訳がないのに、ドアが下がっている?なんて事例があります。その様な場合、ドア後端下部を両手で持って上下に揺すってみると、やはりアッパーヒンジのボルトが(故意に)弛めてあります。やはりなと思いつつ、見積には一切Aピラーの修正は入れず提示して来ました。結構騙されている間抜けなAdjいるんじゃないかね。w、

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