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トヨタの先進HV技術と特許無償公開

2019-06-24 | 技術系情報
 思えば、初代プリウスが1997年10月に販売を開始した時、メカニズム概要をチラと見て、驚嘆したのが動力分割機構の搭載のことだった。この機構は、エンジン+モーターの両出力を場面に応じて、ある時はエンジン停止でモーターだけ、またエンジンだけでモーターをジェネレーターとして発電充電、停止時にも電力不足なるとモーター駆動でクルマは動かさずエンジン始動と、様々な状態に対応できるという機構だ。しかも、最大加速時も、エンジン+モーターで加速するが、エンジン回転は3千rpn程で最大トルク状態でサチュレートしたまま、モーター駆動だけでトランスミッションもなく加速していく。この動力分割のアイデアを考え付いたのは、正に今まで欧米の物真似に過ぎなかったクルマの基本メカニズムについて、大げさだが初の日本のトヨタがオリジナルのもので、凄いものを作り上げたと感心したものだった。

 最近、トヨタがHV関連の特許を同業他社に無償公開することを発表している。この動力分割機構や、ブレーキバイワイヤーの回生制動と実ブレーキ制動の緻密なミックス制御の件も含め、関連特許に含まれるのだろう。これにより、従来トヨタ以外のHVは、基本パラレル方式しかあり得なかったものが、パラレルでもシリーズでもない、しかも基本トランスミッション変速段も不要なHVは各社が出せ、大幅に熱効率は高まるのだろう。

 しかし、この時点でトヨタがHV技術の特許公開に踏み切った戦略思考は何処にあるのだろうか? これはまったくの私見であるが、他社のHVでは思った様に熱効率は高まらず、いうなればエンジン+モーターブーストの高出力思考みたいなクルマが多い。しかし、トヨタが抑えた特許の為に、ディーゼルの熱効率向上で逃げようとしたが、排ガスの関係でOUTに。であれば、EVだと逃げを打つ世界的動きが加速された訳だが、受電する電気は何で作るかと云えば石油、石油系ガス、石炭であり、単にエネルギー媒体を電気に変えたに過ぎない。それで本当に地球レベルで省エネや排気ガスの問題が解決する訳がないのである。かといって、トヨタからHVパテントを買って生産するのはプライドが、コストが許さないというのが特に欧米のクルマメーカーの思いではないのだろうか。そこで、トヨタでは、このままではEVに統一され、HVが疎外されかねない動きに歯止めを掛けたいというのが真の思いなのではないだろうか。しかし、現在のEV化へ怒涛の流れを押し止めるには、今回の決断はちょっと遅すぎた感は免れないが、果たしてどの様な影響を与えるだろうか。興味は尽きない。

余談
 この様な独自先進技術を公開し、業界の標準化を図り市場拡大を図る戦略で思い出されるのが、IBM・PC(DOS-Vマシン)での公開だった。これにより、同一CPUを使用したPCでもBIOS(ファームウェア)の著作権により、なかなか標準化できなかったPCのデファクトスタンダードがIBM・PCに統一され、世界中に蔓延することになった。しかし、統一規格により価格競争が激化した結果、IBMはハード部門を中国に売却するハメに至った。独自技術の公開は、諸刃の剣であることは確かであり、トヨタも迷いに迷った末の、遅すぎた今回の特許公開と見るが果たしで効果はどう出るか?

HVにタコメーターがないのは何故か? 2018/6/24 記述
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/08dff0547be7aa78206d079f3d13cca8

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