燃料噴射ハードウェアの考察 その2
前回の予告通り、今回はプレッシャーレギュレターの機能について書き記してみたい。
プレッシャーレギュレターとは基本語に直訳すると圧力制御機もしくは弁ということになる。こういう機能は、工場のエア配管だとかにもよくお目に掛かるし、酸素アセチレンや炭酸ガスボンベには必ずレギュレターが付属し、タンク内圧の残量に応じた圧力変化に対応できる様になっている。それとか、自動車整備関係では、高圧エア(800KPa程度)をエア工具関連で使用する事例が多いが、BP工場での塗装のガン圧は一段低い圧力で使用するが、これも別途のレギュレターで作り出しているし、塗装作業者がさらに手元で圧を変えたい場合に備えてガンにみ手元エア圧調整が付属しているガンもよく見る。
一般的にこれらレギュレターは絶体圧(大気圧)に対するエア圧を一定にレギュレーションするものだが、これに別の要素を加えてレギュレーションする方式もある。これは、私は使用したことないがアクアラングにもボンベレギュレターが付くが、水圧の要素とも比例してレギュレーションしている様だ。つまり、深く潜るほど高いエア圧になる。今次記している吸気管噴射(ポート噴射)も、吸気管の圧は、アイドリングとか軽負荷の低い気圧から、スロットルベタ踏みの高負荷だと大気圧に近づく。そして、もう一つ、山に登るに従い、大気圧そのものが低くなって行くことがある。
それと、ターボ付きやスーパーチャージャー付きエンジンでは、加給圧という全負荷で限りなく大気圧に近いものから、加給圧正圧として上がって行く。この加給正圧として。0.5加給だとすれば、理論値としては吸入空気が150%となるので出力も150%相当になる訳だ。これが、1.0加給だと理論値としては、出力200%となるのだが、現実にはさまざまなロスもありそこまでは出力アップしないし、ノッキングとかエンジンの機械的強度や放熱限界という要素もあり加給の限界はある。
話しが飛ぶが、今中島知久平(中島飛行機創業者)の本を幾つか読みながら、先の戦争には、その持てる国力の差から負けたことは必然だったのだが、もう少し個別戦闘を見ていくと、航空戦力で負けたという要素が多い様に思える。このことは大戦末期、原爆投下以前に日本の大都市は恒常的なB29の大編成による猛烈な空襲を繰り返されたのだが、日本軍戦闘機はB29の飛ぶ高度1万mに何とかたどり着ける機があまりに少なかったことが判る。実のところ日本軍機も加給機は付いていたのだが、機械式加給であり、排気タービン(ターボ)を付けたB29より高度限界が著しく劣り、満足な迎撃ができず、B29の自由な爆撃行為を防戦することができなかったということがある様だ。実のところ、排気タービンがあることを戦前戦中に知りはしていて何とか作ろうという努力は続けられていた様なのだが、敗戦まで日本は実用化した満足な排気タービンを装備したエンジンを生み出すことはできなかったのだ。
話しをEFIに戻すが、プレッシャーレギュレターとして、私がエンジンに触れ始めた頃(1978年前後)には、既に少数ながらEFI装備エンジンはあって、プレッシャーレギュレターは装備されていたのだが、絶対圧のレギュレーション機能しか付いていなかったのだった。その絶対圧のみレギュレーションの最末期頃(排ガス規制50年、51年度規制頃)の一部車両には、高度保障センサーなる、一定高度で燃料減量補正するものがあったのは覚えている。
しかし、以後はこういう補正は不要になったのだが、それは燃圧を絶体圧の一要素のレギュレーションでなく、あくまでも吸気管圧との差圧でレギュレーションする様に、プレッシャーレギュレターにダイヤフラム付きの吸気管圧制御様の機構が付けられる様になったからだ。この機構は当初、吸気管圧が大気圧0と高負圧とのレギュレーションを行うものだったのだが、ターボ過給者エンジンの登場と共に、吸気管圧が正圧での場合にも動作する様にダイヤフラム移動量を増したものに変化して来た。つまり、下記グラフ図に示す通り、吸気管圧と燃圧は連動してレギュレーション値が変化する様に設計され、吸気管圧の変化に際して別途の噴射時間の補正をする必用は不要となったのだった。
なお、EFI用フューエルポンプは、DCモーターで回転するタービンインペラでガソリンを圧送するのだが、限界圧としては600KPa程度ある様だ。これはモーター内にあるリミット弁で制御している様だ。それと、フューエルポンプに限らずポンプ能力を判断する場合、その圧力だけでなく送油容量という視点で眺める必用があるだろう。つまり、小型のフューエルポンプで幾らプレッシャーレギュレターで無噴射状態で燃圧が出せたからといえども、最高出力時点で燃料噴射量が最大になった時でも十分に燃圧を保ち続けられるということになると、圧送燃料容量の問題が出て来るだろう。なお、この辺りはエンジンの型式区分ほどにはフューエルポンプの大きさに違いはないように見受けられる。つまり、市販エンジンであれば、十分対応可能な燃料供給量を持っているのがEFI用フューエルポンプなのだ。ついでに性格ではないが、記憶によれば、エンジン停止状態では制御回路的にはフューエルポンプは停止するのだが、これをポンプを廻し続けたとすると、1時間で送油量は5、60Lと満タン相当の燃料が送油されているという。つまり、燃料はリターンパイプでフューエルタンクに戻されるのだが、1時間で満タンク全量が一巡しているということなのだ。
最後になるが、プレッシャーレギュレターの故障ということで記して見たい。プレッシャレギュレターの故障というのは、総数的にはあまり聞かないのだが皆無という訳でもない。その故障としては、レギュレーション圧の狂いというのは見たことないが、これは単純な仕組みであり、内部のスプリングでも折損すればあり得ないことであろうけど、筆者としてはお目に掛かったことはない。それよりも一番目に付くものとしては、弁の密着不良と云うべき現象だ。これは、フューエルデリバリパイプに直結する燃圧計を装着し、エンジン停止した場合、即座に燃圧がゼロに下降する場合を指す。この場合の不具合としては、温感時に再始動が困難とかクランキング時間が長いというものとなる。つまり、夏場などで走行直後にエンジンを停止すると、ポンプも停止し、エンジン稼働中に送油で冷却されていたフューエルデリバリパイプ付近の雰囲気は、エンジン機器の余熱により温度上昇する。ここでプレシャーレギュレター弁がしっかり密着し燃圧が保たれていれば加温によってベーパー(蒸気)が発生することもないのだが、燃圧がない状態で加温が作用した場合、デリバリパイプ内が燃料が容易にベーパー化し、次の再始動で燃圧上昇を阻むことになるという理由なのだ。
前回の予告通り、今回はプレッシャーレギュレターの機能について書き記してみたい。
プレッシャーレギュレターとは基本語に直訳すると圧力制御機もしくは弁ということになる。こういう機能は、工場のエア配管だとかにもよくお目に掛かるし、酸素アセチレンや炭酸ガスボンベには必ずレギュレターが付属し、タンク内圧の残量に応じた圧力変化に対応できる様になっている。それとか、自動車整備関係では、高圧エア(800KPa程度)をエア工具関連で使用する事例が多いが、BP工場での塗装のガン圧は一段低い圧力で使用するが、これも別途のレギュレターで作り出しているし、塗装作業者がさらに手元で圧を変えたい場合に備えてガンにみ手元エア圧調整が付属しているガンもよく見る。
一般的にこれらレギュレターは絶体圧(大気圧)に対するエア圧を一定にレギュレーションするものだが、これに別の要素を加えてレギュレーションする方式もある。これは、私は使用したことないがアクアラングにもボンベレギュレターが付くが、水圧の要素とも比例してレギュレーションしている様だ。つまり、深く潜るほど高いエア圧になる。今次記している吸気管噴射(ポート噴射)も、吸気管の圧は、アイドリングとか軽負荷の低い気圧から、スロットルベタ踏みの高負荷だと大気圧に近づく。そして、もう一つ、山に登るに従い、大気圧そのものが低くなって行くことがある。
それと、ターボ付きやスーパーチャージャー付きエンジンでは、加給圧という全負荷で限りなく大気圧に近いものから、加給圧正圧として上がって行く。この加給正圧として。0.5加給だとすれば、理論値としては吸入空気が150%となるので出力も150%相当になる訳だ。これが、1.0加給だと理論値としては、出力200%となるのだが、現実にはさまざまなロスもありそこまでは出力アップしないし、ノッキングとかエンジンの機械的強度や放熱限界という要素もあり加給の限界はある。
話しが飛ぶが、今中島知久平(中島飛行機創業者)の本を幾つか読みながら、先の戦争には、その持てる国力の差から負けたことは必然だったのだが、もう少し個別戦闘を見ていくと、航空戦力で負けたという要素が多い様に思える。このことは大戦末期、原爆投下以前に日本の大都市は恒常的なB29の大編成による猛烈な空襲を繰り返されたのだが、日本軍戦闘機はB29の飛ぶ高度1万mに何とかたどり着ける機があまりに少なかったことが判る。実のところ日本軍機も加給機は付いていたのだが、機械式加給であり、排気タービン(ターボ)を付けたB29より高度限界が著しく劣り、満足な迎撃ができず、B29の自由な爆撃行為を防戦することができなかったということがある様だ。実のところ、排気タービンがあることを戦前戦中に知りはしていて何とか作ろうという努力は続けられていた様なのだが、敗戦まで日本は実用化した満足な排気タービンを装備したエンジンを生み出すことはできなかったのだ。
話しをEFIに戻すが、プレッシャーレギュレターとして、私がエンジンに触れ始めた頃(1978年前後)には、既に少数ながらEFI装備エンジンはあって、プレッシャーレギュレターは装備されていたのだが、絶対圧のレギュレーション機能しか付いていなかったのだった。その絶対圧のみレギュレーションの最末期頃(排ガス規制50年、51年度規制頃)の一部車両には、高度保障センサーなる、一定高度で燃料減量補正するものがあったのは覚えている。
しかし、以後はこういう補正は不要になったのだが、それは燃圧を絶体圧の一要素のレギュレーションでなく、あくまでも吸気管圧との差圧でレギュレーションする様に、プレッシャーレギュレターにダイヤフラム付きの吸気管圧制御様の機構が付けられる様になったからだ。この機構は当初、吸気管圧が大気圧0と高負圧とのレギュレーションを行うものだったのだが、ターボ過給者エンジンの登場と共に、吸気管圧が正圧での場合にも動作する様にダイヤフラム移動量を増したものに変化して来た。つまり、下記グラフ図に示す通り、吸気管圧と燃圧は連動してレギュレーション値が変化する様に設計され、吸気管圧の変化に際して別途の噴射時間の補正をする必用は不要となったのだった。
なお、EFI用フューエルポンプは、DCモーターで回転するタービンインペラでガソリンを圧送するのだが、限界圧としては600KPa程度ある様だ。これはモーター内にあるリミット弁で制御している様だ。それと、フューエルポンプに限らずポンプ能力を判断する場合、その圧力だけでなく送油容量という視点で眺める必用があるだろう。つまり、小型のフューエルポンプで幾らプレッシャーレギュレターで無噴射状態で燃圧が出せたからといえども、最高出力時点で燃料噴射量が最大になった時でも十分に燃圧を保ち続けられるということになると、圧送燃料容量の問題が出て来るだろう。なお、この辺りはエンジンの型式区分ほどにはフューエルポンプの大きさに違いはないように見受けられる。つまり、市販エンジンであれば、十分対応可能な燃料供給量を持っているのがEFI用フューエルポンプなのだ。ついでに性格ではないが、記憶によれば、エンジン停止状態では制御回路的にはフューエルポンプは停止するのだが、これをポンプを廻し続けたとすると、1時間で送油量は5、60Lと満タン相当の燃料が送油されているという。つまり、燃料はリターンパイプでフューエルタンクに戻されるのだが、1時間で満タンク全量が一巡しているということなのだ。
最後になるが、プレッシャーレギュレターの故障ということで記して見たい。プレッシャレギュレターの故障というのは、総数的にはあまり聞かないのだが皆無という訳でもない。その故障としては、レギュレーション圧の狂いというのは見たことないが、これは単純な仕組みであり、内部のスプリングでも折損すればあり得ないことであろうけど、筆者としてはお目に掛かったことはない。それよりも一番目に付くものとしては、弁の密着不良と云うべき現象だ。これは、フューエルデリバリパイプに直結する燃圧計を装着し、エンジン停止した場合、即座に燃圧がゼロに下降する場合を指す。この場合の不具合としては、温感時に再始動が困難とかクランキング時間が長いというものとなる。つまり、夏場などで走行直後にエンジンを停止すると、ポンプも停止し、エンジン稼働中に送油で冷却されていたフューエルデリバリパイプ付近の雰囲気は、エンジン機器の余熱により温度上昇する。ここでプレシャーレギュレター弁がしっかり密着し燃圧が保たれていれば加温によってベーパー(蒸気)が発生することもないのだが、燃圧がない状態で加温が作用した場合、デリバリパイプ内が燃料が容易にベーパー化し、次の再始動で燃圧上昇を阻むことになるという理由なのだ。